原発ADR、「被曝不安」に慰謝料案初提示
2013/06/03 法務相談一般, 民法・商法, その他
事案の概要
東京電力福島第一原発事故で被災した福島県飯舘村長泥地区の住民たちと東電との和解を仲介する原子力損害賠償紛争解決センター(以下、原発ADR)は、放射線被曝の不安を訴える住民に1人当たり50万円以上を支払うよう東電に求める方針を初めて示した。住民の弁護団が2日、明らかにした。弁護団によると、原発ADRは「住民らが被曝への現在、将来にわたる恐怖や不安を感じるのは無理からぬこと」などと認定し、1人当たり50万円(妊婦や18歳以下は100万円)の賠償を東電に求める方針を示したという。同様の不安を訴えている同村蕨平(わらびだいら)地区や同県浪江町の住民の集団申立てにも影響を与える可能性がある。
コメント
東電に対し、損害賠償請求する方法としては、①東電に直接請求する②原発ADRを利用する③訴訟の3つがある。このうち。①によれば東電の認める金額以上の請求は極めて困難であり、③になると時間と費用がかかることは、どうしても避けられない。そこで、原発ADRへの申立てが基本となっているようである。各地弁護団も、住民に対し原発ADR申立てによる損害賠償を推奨している。
このように、昨今活発に利用されている原発ADRによって認められたのは、被曝への恐怖や不安に対する賠償である。現段階で実際に被曝していなくとも、将来にわたって付き纏う被曝への恐怖に対しても賠償金が支払われることは、今後長い人生を生きていく子供や健康な子供を望む妊婦にとって、特に大きな意義がある。
ただ、「被曝不安」という曖昧な理由によって、今後和解申立ての濫発が起きることが、懸念される。「被曝不安」の定義をより具体化し、ガイドラインを作成する等、限られた財源の中、真に補償を必要としている人々に確実に補償が行き渡るような対策が今後待たれる。
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