質屋を装った闇金業者が逮捕
2013/05/23 法務相談一般, 出資法・貸金業法, その他

事案の概要
質屋を装い、無登録で貸金業を営んだとして、群馬県警生活環境課などは22日、前橋市古市町、質店経営岡崎光正容疑者(60)と富岡市富岡、質店従業員金井栄志容疑者(42)を貸金業法違反(無登録営業)容疑で逮捕した。
発表によると、岡崎容疑者らは2012年1月から13年3月までの間、高崎市八島町の「だるま質店」で、県内の60~70歳代の男女3人に21回にわたり、計約198万円を貸し付け、無登録で貸金業を営んだ疑い。岡崎容疑者は、11年10月に質屋営業の許可を取得したが、顧客が担保として持ち込んだ品物を査定せず、壊れた時計など価値のない物を担保に金を貸していた。また、顧客の年金支給額や収入に応じて貸付額を決めており、県警は、これらの事実から岡崎容疑者らが貸金業を営んでいたと判断した。
岡崎容疑者らは年金受給者の高齢者3人に、金融機関の通帳を持参させて支給額を担保に貸し付け、口座に振り込まれた年金から自動引き落としで返済させていた。同店舗の顧客数は今回の被害者3人を含む約300人で、貸付金額は約1億8千万円に上る。
出資法が定める年20%の上限を超える金利を取っていた可能性もあることから、同課は出資法違反容疑(高金利、超高金利)での立件も視野に調べる。
解説
まず本件の直接の逮捕容疑は貸金業法上の無登録営業の容疑である。質屋の看板を掲げてはいるものの、担保となる質物の査定をせず顧客の年金額等に応じて貸付額を決めていたことなどから実質的に貸金業を行っていると判断されたと考えられる。
またわざわざ質屋の看板を掲げているのは出資法を潜脱するねらいがあると推測される。それゆえ出資法違反容疑での立件の可能性もあるという。これは貸金業者は出資法5条2項により上限金利が年20%とされている一方で、質屋は質屋営業法36条で上限金利が年109・5%まで取ることが許されていることに着目し、担保価値のないような質物を形式的に担保にとることで、出資法の制限を超える高利での貸し付けを理論上合法としようとするものである。
コメント
このような偽装質屋の業者の中には「どこからも借りられない人をむしろ助けているんだ」と主張する者もいるという。実際被害者も被害者意識は希薄である。
しかし、弱者の足元をみるような産業が成り立つ社会は健全とはいえない。やむをえない事情がある人には不十分な担保しかなくても適切な金利で借りられるような公的制度の充実が必要であろう。
参照条文
【貸金業法】
第3条 1項 貸金業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては内閣総理大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。
【質屋に対する出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)】
第5条 2項 前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
【質屋営業法】
第36条 1項 質屋に対する出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律 (昭和二十九年法律第百九十五号)第五条第二項 の規定の適用については、同項 中「二十パーセント」とあるのは、「百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)」
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