JR福知山線脱線事故 歴代3社長に禁錮3年を求刑
2013/04/05 訴訟対応, 刑事法, その他

事案の概要
平成17年4月兵庫県尼崎市で乗客106人が死亡したJR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴されたJR西日本元会長の井手正敬被告(77)ら歴代3社長(※)の論告求刑公判が平成25年3月27日、神戸地裁(宮崎英一裁判長)で開かれた。検察官役の指定弁護士側はそれぞれ禁錮3年を求刑した。
起訴状によると、3社長は8年12月の現場カーブの付け替え、ダイヤの改正などから事故が起きる危険性を予見できたのに、ATS整備の指示を怠ったとしている。
※ 他の2人は南谷昌二郎(71)、垣内剛(68)
検察官役の指定弁護士側は「現場カーブの危険性を容易に認識できたのに、自動列車停止装置の整備を怠った。利益追求に突き進んだ代償はあまりに大きい」などとして、JR西日本の企業体質にも言及し、「井手被告が確立した利益優先の経営体質などが安全意識を鈍磨させた」と指摘した。
閉廷後、会見で3社長側の弁護団は「余裕のないダイヤ編成が原因で事故が起きたという論法は何の証拠もなく、指定弁護士の想像でしかない」と反論した。「過失を99%証明するのが刑事裁判。井手元会長がJR西日本の会長だから現場カーブの曲線の危険を予見できたというのは論理の飛躍で、証拠をねじ曲げている」と批判した。
3社長は「カーブが危険とは聞いた事もなく、把握する義務もない」(井手被告)などといずれも無罪を主張している。
条文
(業務上過失致死傷等)
刑法211条1項
「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。 」
コメント
業務上の過失の認定方法は、被告人の業務内容の種類等によって様々であり、一律にその方法が決まっているものではない。
さらに、過失認定の判断要素としては①事実の認識の有無、②結果の予見可能性、そして③結果回避の容易性などがあるが、これら判断要素も被告人と同じ業種・職種などとも比較しながら実質的に判断する必要がある。
そのため、その認定作業は容易なことではなく、当事者の主張が真っ向から対立することも珍しくない。
今回の裁判でも当事者主張の対立は必至といえる。
しかし、一方で、今回の裁判は今後の鉄道業務の管理・運営の新たな指標となることも期待される。
鉄道会社のような公共交通に関わる業務は、潜在的に多くの危険(不特定多数の生命、財産への危険)を孕んでいることから、その管理・運営には厳格さが特に要求されるべきであろう。
今後の判断が注目される。
なお、今回の事件の判断は、潜在的に多くの危険(不特定多数の生命、財産への危険)を孕む業務という点で、航空機事故にも当てはまりうるので、航空会社の業務管理の一つの指標にもなるかもしれない。
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