証券会社・保険会社にも公的資金を直接注入できるようになるか?
2012/08/28 事業再生・倒産, 民法・商法, 金融・証券・保険

概要
金融庁の金融審議会は、証券会社・保険会社の破綻処理に関して、公的資金を直接注入できる仕組みが必要かどうかの検討を始めた。金融システム全体の安定のためには、証券会社・保険会社等のあらゆるシステム上重要な金融機関に対しても公的資金の注入等の実効的な破綻処理制度を適用すべきだという、金融安定理事会(FSB)及び国際通貨基金(IMF)からの提言・指摘を受けて、現行制度を拡充することになる。
現在、銀行、証券、保険会社ともに破綻の際には利用者を保護する制度は存在するが、公的資金の注入や国有化の仕組みは銀行にはあるものの証券会社・保険会社にはない。また、銀行や保険会社の場合は、当局が任命した管財人・管理人が代表権、業務執行権、財産管理処分権を持つ等、破綻処理を行う者が広範な権限を有しているが、証券会社にはこのような制度はない。さらに、破綻処理に要する一時的な資金提供コストについては、利用者保護を目的に事前徴収する制度が銀行、証券、保険会社ともに存在するが、金融システム全体の安定を目的に事後徴収する制度は銀行にしかない。こうした銀行の破綻の際に適用される仕組みを証券会社・保険会社にも拡大すべきかどうかが主に検討されることとなる。
コメント
1990年代の金融システム改革(日本版ビックバン)以降、企業資産の証券化や、業務分野規制の撤廃による銀行・信託・証券・保険における完全な相互参入が進み、証券会社・保険会社が金融システム全体に及ぼす影響は増している。金融システムを安定させるためには、銀行だけでなく、証券会社・保険会社にも実効的な破綻処理制度を適用すべきなのは当然という段階に来ており、公的資金の直接注入もやむを得ないだろう。ただし、資金源としては、金融機関からの徴収や保険制度の取入れ等、国民の税金に頼らない方法を考えなければならないと思うので、同時に破綻処理に要する一時的な資金提供コストについて事後徴収する制度の拡充も検討されるのは妥当だと思う。
【関連リンク】
金融庁による事務局説明資料(pdf) (12ページ以降が該当部分)
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