【法務NAVIまとめ】日本版クラスアクション(消費者裁判手続特例法)まとめ
2016/01/28   消費者取引関連法務, 消費者契約法, その他

概要

「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」(以下、「消費者裁判手続特例法」と記載する)が2016年10月1日から施行される。
この制度は、法施行後の不法行為や法施行後に締結した契約のトラブルにより、同じ原因で多数の被害が出た場合に、被害者の代わりに消費者団体が事業者に対して、金銭的な被害回復訴訟を提起できるものである。日本版のクラスアクションとも呼ばれることがある。

《参考》
「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」
(出典:消費者庁)
日本版class actionこと消費者訴訟特例法、ついに可決成立
(出典:Matimulog)

本制度は①共通義務確認訴訟と②簡易確定手続の二段階型の訴訟制度となっており、消費者庁のQ&Aでは以下のように整理されている。
「①一段階目の手続(共通義務確認訴訟)では、内閣総理大臣の認定を受けた特定適格消費者団体が原告となり、相当多数の消費者と事業者との間の共通義務(第2条第4号に規定する義務)の存否について裁判所が判断し、②一段階目の手続で消費者側が勝訴した場合、個々の消費者が、二段階目の手続(対象債権の確定手続)に加入して、簡易な手続によってそれぞれの債権の有無や金額を迅速に決定することで、消費者被害回復の実効性の確保を図ることとしています。」

《参考》
消費者裁判手続特例法 Q&A
(出典:消費者庁)

もっとも、本制度が適用される対象事案や回復される損害は限定されている。
(1)対象事案
対象事案は、次のような請求に限られる。
①債務の履行の請求 
②不当利得にかかる請求
③契約上の債務の不履行に基づく損害賠償の請求
④瑕疵担保責任に基づく損害賠償の請求
⑤不法行為に基づく民法の規定による損害賠償の責任
(2)対象損害
対象損害は、財産被害(典型的には欠陥製品などの購入代金)に限られ、「拡大損害」や「逸失利益」「生命身体への損害」や「精神的苦痛(慰謝料)」は除外される。

《参考》
【法律コラム】第36回 消費者裁判手続特例法とは
(出典:色川法律事務所)

企業にどんな影響があるか?

「日本版クラス・アクション制度が導入されると、今まで「被害が少額である」「手続きが煩雑・わからない」などから、訴訟を諦めていた多数の被害者が、この制度を利用する可能性があります。また、原告となる消費者団体は被害者に訴訟参加を求めるべく広く通知・公告することになりますので、その過程で企業名が大きく報道されるなど、企業イメージへの悪影響も懸念されます。

《参考》
日本版クラス・アクションへの対策
(出典:東京海上日動 WINクラブ)

基本的に、消費者と契約関係にある企業には、制度を利用した請求がなされる可能性がある。
「本制度の適用対象である請求が広範なものであることからすると、どのような企業も、特定適格消費者団体により関係法令違反の嫌疑をかけられた場合には、本法に基づいて提訴されうる、あるいは、本法によって認められた権限を背景に、裁判外で申し出を受ける可能性があると考えておいた方がよい。」
(出典:日本経済新聞2014年8月19日付朝刊25面)

《参考》
[企業法務]「消費者裁判手続き特例法」の施行を見据えた論稿2本
(出典:企業法務戦士の雑感)

訴訟の被告となる可能性の高い企業は、訴訟のイメージを掴んでおいたほうが良いだろう。
「この訴訟の被告となる可能性が高いのは、小売業者や不動産業者、サービス業者等、直接消費者と取引をしている事業者であり、商品の品質不良を理由とする商品代金の返還請求や、契約上の条項(例えば、事業者の責任を減免する条項)が不当であることを前提になされる請求が典型例になるものと予想されます。」

《参考》
集団訴訟のリスクも! 消費者裁判手続特例法の制定
(出典:弁護士法人三宅法律事務所)

もっとも、新制度ができたことで何もかもが大きく変わる、といったほどのインパクトがあるとはいえないだろう。
「大手企業を相手に、これまで争われてきた本人訴訟や、それに準じるような“チャレンジ訴訟”で、企業側がほぼ例外なく勝ってきている、という現実からも分かるように、それなりに社会に名の通った会社が、きちんとプロセスを踏んだ上で市場に送り出している製品やサービスであれば、新法ができたからといって直ちに裁判所で否定されまくるような事態に陥ることは、ちょっと考えにくい」

《参考》
[企業法務]「消費者裁判手続き特例法」は誰に影響を与えるのか?
(出典:企業法務戦士の雑感)

企業のとるべき対策

まずは社内制度を見直すことで事前に訴訟が生じないよう、対策をとることが考えられる。
「具体的には、次のような対策が考えられます。
① 消費者との間の契約書の見直し
消費者の権利を制限する不当な契約内容となっていないか?逆に履行が困難な債務を負担していないか?分かりにくい契約書・誤解を招く契約書になっていないか?
② 消費者からの問合せ・クレーム対応のしくみの見直し
特定の原因で複数の問い合わせやクレームをいただいていないか?問い合わせやクレームは増えていないか?問い合わせやクレームには誠実に対応し、経営もその内容を把握する体制が整っているか?
③ リコール対応のしくみの見直し
迅速かつ的確なリコールが行える体制が整っているか?
④ 各種表示物(取扱説明書、カタログ・パンフレット)等の記載内容の見直し
虚偽の説明はないか?消費者に過度の期待を与える内容になっていないか?」

《参考》
日本版クラス・アクションへの対策
(出典:東京海上日動 WINクラブ)

また実際訴訟になったときのために証拠を残しておく努力も必要だろう。
「実際には、特定適格消費者団体との訴訟で、上記のような事情を理由にした権利が消費者に存在するか否か(権利の存否)を争う部分に全力を注ぐことがすべてだと思います。」
契約締結過程で何が起きたのか、どんな勧誘の営業トークをし、どんな資料で説明・情報提供したか、消費者はどの程度理解していたか、理解したということが記録されているか、その後の物のやり取りに問題はなかったか、など、すべてを記録に残すのです。」

《参考》
日本でクラスアクション(消費者集団訴訟)は起きるのか?企業の対策は?
(出典:アサミ経営法律事務所)

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