【法務NAVIまとめ】労働者の有給休暇取得について
2016/08/05   労務法務, 労働法全般, その他

1  はじめに

 厚生労働省は、年次有給休暇の義務化を企業に義務付ける方向で最終調整に入っています。

そこで、今回は、労働者の休暇の取得についてまとめてみようと思います。

2  休日、休暇とは

 休日と休暇は似たような概念ですが、労働基準法上は違いがあります。

 休日とは、そもそも労働の義務がない日をいいます。つまり、あらかじめ申請をしなくても休める日です。多くの企業では土曜日、日曜日が休みとなっていることが多いと思いますが、これが休日に当たります。

 これに対して、休暇とは、労働義務がある日をいい、労働者が求めることによってその義務が免除される日のことをいいます。

労働基準法と休日の関係

3  労働基準法の定め

 使用者は、労働者に対して、1週間のうちに少くとも1回の休日を与えるか、または、4週間のうちに4日以上の休日を与えなければならないとされています(労働基準法(以下、「法」といいます。)35条1項、2項)。

 また、使用者は、労働者との協定を締結して書面にした場合には、法35条の規定にかかわらず、休日に労働させることができます(法36条1項)。

 休日に労働をさせた場合には、通常労働賃金の2割5分~5割の割増賃金を支払う必要があります(法37条1項)。

 年次有給休暇、いわゆる「有給」については、使用者は、6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、10日の有給休暇を与えなければならないとされています。この10日の有給休暇は、継続して与える他、分割して与えることもできます(法39条1項)。

 そして、使用者は原則として、労働者の請求する時季に有給休暇を与えなければいけません。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に変更させることができます(法39条5項)。

厚生労働省 休日について

労働基準法 法令

 休日規定や休暇取得規定に違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(法119条1項)。

4  年次有給休暇の仕組み

 年次有給休暇を取得する権利は、法律の要件を満たせば当然に認められる権利であり、使用者の承認等がなくても労働者の請求のみによって労働義務は消滅します。

林野庁白石営林署事件 最判昭和48年3月2日

 使用者側としては、有給休暇の取得の時季を変更してもらうことができます。その変更が認められるためには、「事業の正常な運営を妨げる場合」(法39条5項)に該当する場合である必要があります。

5  事例

 ■「事業の正常な運営を妨げる場合」とは

 「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するためには、当時の客観的状況に照らして合理的に予想される事実に基づけばいいとされています。現実に事業の正常な運営が害されたという事実がなくて構いません。

 新潟鉄道郵便局事件 最高裁昭和60年3月11日

東京高裁 昭和56年3月30日

 ■年休取得による皆勤手当ての控除

 労働者が、不支給分の皆勤手当の支払いを求めて提訴した事案について、会社側の対応が容認されました。

 その理由は、皆勤手当ての控除が、年休の取得を一般的に抑制する趣旨のものでなく、控除された皆勤手当ての額も大きいものではなかったことから、労働者の年休取得を抑制するものではないと判断されたことにあります。

沼津交通事件 最判平成5年6月25日

 ■長期の連続した有給休暇の取得の場合

 有給取得の期間が長期になると業務との関係や他の従業員との調整が必要になるため、有給の取得について使用者に一定の裁量が認められる場合があります。具体的には、以下のような場合があります。

 ・重要な案件が入っている時期に担当従業員が長期の休暇を取得しようとする場合

 ・休暇を取得する従業員の代わりになる他の人員がいないような場合

 判例では、有給休暇の期間を2つの期間に分けて、後半の休暇の取得を後にずらしてほしいという、使用者側の変更が認められました。

時事通信社事件  平成4年6月23日 

6  まとめ

 有給休暇を取得させるべき場合に、それを認めなければ刑罰の対象となるため、有給休暇の仕組みを理解し、労働者からの請求があった場合には、適切に処理することが重要となってくると思われます。

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