著作権侵害された!刑事告訴に迷ったら…
2017/06/16   知財・ライセンス, 著作権法, その他

はじめに

 今回は著作権侵害をされた際の対応策として刑事告訴について紹介いたします。刑事告訴の他には、対応策として警告状の送付、民事調停や裁判等の方法がありますが、金銭の賠償を求めないような場合には今後同様のことをされないように刑事告訴をしてみるというのもメリットのある方法です。以下刑事告訴の概要を示しますのでご参考にしていただければと思います。

刑事告訴とは

 犯罪の被害者等が、捜査機関に対して、犯罪事実を申告し、その訴追(検察官が刑事事件について起訴し、それを遂行すること)を求める意思表示です。
 著作権法違反は親告罪(刑事訴訟法123条)のため、詳しく事情を聞かれる可能性が高く、その点手間がかかると思われます。

刑事告訴のメリット

 被害届でも被害を訴えることは可能ですが、刑事告訴の場合、捜査後速やかに事件に関する書類及び証拠物を検察官に書類送検しなければならない(刑訴法242条)等の強制力が生じますので、捜査を進めてもらえる可能性が高まります。
 また民事訴訟であれば、訴訟に必要な資料の多くを自ら集めなければなりませんが、告訴が受理されれば証拠収集の量は少なくて済みますし、私的手続きと違い、強制力がある点で今後同様の侵害をされない可能性が高いです。

告訴ができる人

 主に、①著作者(刑事訴訟法230条)、②著作権者(同230条)、③出版権権者(同条)、④著作隣接権者(複製権等。同230条)、⑤独占的使用権者(同230条)、⑥著作者、実演家の遺族(配偶者、子孫、父母、祖父母、兄弟姉妹)「著作者人格権または実演家人格権を侵害する行為が行われた場合のみ」(同230条2項)です。

告訴先

 被害者の住所地、または被害の生じた場所を管轄する警察署が最適です(捜査のために人員を多く抱えていて、近くであることから相談機関との連携も取りやすいため)。対応してもらえない場合には、被害者の住所地、または被害の生じた場所を管轄する検察庁でも可能です。

告訴前の相談先 

 インターネット上の著作権侵害事件については、まず都道府県警察(警視庁や県警本部等)のサイバー犯罪対策窓口に相談すべきです。

(警視庁)03-3431-8109(専) 受付時間:午前8時30分から午後5時15分まで(平日のみ)
警視庁

(その他県警)
都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口等一覧

告訴期間

 犯人を知った日(犯罪行為終了後の日)から6カ月以内です。 
 犯罪行為終了後とは、例えば、著作権を侵害するホームページやブログ等がサーバから削除されずに閲覧可能な状態にある間は侵害行為は継続しているため、告訴期間の経過はありません。

告訴にあたって問題になる点

 刑事事件として処罰の対象となるのは故意がある場合に限られます。知らないうちに行ってしまった侵害については処罰されないということです。
 しかし、著作権侵害については、誰かの著作権を侵害しているという程度の認識があればよいですし、著作権者が誰か、ということまで認識をしている必要はありません。また、著作権侵害については明確に認識している必要はなく、もしかしたら侵害をしているかもしれない、という程度の認識でも構いません。さらに、警告状等で侵害について指摘したにも関わらず継続して侵害を続けているような場合にも、故意があると認定されやすくなるので、その旨の資料があるとよいかと思います。
(BUSINESS LAWYERS「著作権を侵害した場合、どのような罰則があるか」参照 )

告訴状作成の大枠

(行政書士いとう事務所~著作権侵害対処法マニュアル刑事告訴より)
 
 以下、文書で大まかな流れを示します。最後に告訴状の具体例を示しますので、ご参考にされてください。

1.当事者
 権利侵害者はどのような人物かを特定しうる程度に認識できること。権利侵害者を特定できない場合は、被告訴人(被疑者)不詳と書きます。

2.告訴の趣旨
  権利侵害者を厳しく処罰するよう求める意思表示を書きます。

3.告訴事実
  侵害行為の態様を著作権法の条文の文言に当てはめて具体的に明記する必要があります。

4.罪名及び罪状
  例)「著作権法〇条〇項違反」

5.証拠(疎明)資料
例)ホームページの記事画面のコピー、違法複製物のサンプルや写真等

以上の大枠に加えて記載例の一つとして以下のようなものがあります。
(行政書士事務所飯田橋総合法務オフィス~告訴状・告発状の書き方)

 

告訴するために準備すべきこと

 著作権侵害は親告罪(刑事訴訟法123条)のため、詳しく事情を聞かれる可能性が高く、そこで、以下の準備を事前に進めておくとよりスムーズに捜査を進めてもらえるかと思います。

 ①権利侵害者に対し内容証明郵便にて警告書の送付
 ②侵害行為の事実を証明できる証拠の収集
  例)ホームページの記事画面のコピー、違法複製物のサンプルや写真等
 ③権利者であることを立証できる証拠の収集
  例)著作権登録通知書、 存在事実証明書、使用許諾契約書等

以上、刑事告訴の際の流れになりますので、刑事告訴に迷った際、ご参考にしていただければ幸いです。

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