関西電力、コンプライアンス委員会の調査結果を踏まえ今後の方針を公表
2022/05/25   コンプライアンス

はじめに


関西電力のコンプライアンス委員会は、2022年4月20日、同社の監査委員会委員等から指摘を受けていた土砂処分・土地賃借・倉庫賃借に係るコンプライアンス違反事案に関する調査報告書を提出しました。今回は、この報告書の中から主要な部分に焦点を当てます。

 

コンプライアンス委員会の位置づけ


関西電力のコンプライアンス委員会は、指名委員会や報酬委員会、監査委員会と並び、社長等の“執行側”から独立した取締役会直下の委員会として組織されています。“執行側”にてコンプライアンスに係る推進機能を果たす「コンプライアンス推進室」からコンプライアンスに係る報告を受けたり、“執行側”でコンプライアンス関連の具体的な取り組みを行うようコンプライアンス推進室に指導・助言・監督を行う等の役割を果たしています。なお、委員長を含め過半数が社外委員で構成されている組織になります。
 

調査の方法


(1)調査報告書・議事録・社内規程・稟議書その他関係資料の精査
(2)関係者が保有するメールデータ等のデジタル・フォレンジック調査(パソコン上およびメールサーバー上の電子メールデータの保全・抽出・精査)
(3)関西電力の役職員・元役員計33名(計38回)へのヒアリング調査
(4)関係会社に対する質問状の送付
 

コンプライアンス委員会の報告書


コンプライアンス委員会の調査結果によると、指摘は3つの事案に大別されます。

1.土砂処分に関する契約のコンプライアンス違反
1つ目の事案は、原子力発電所の安全対策工事に伴い大量の土砂処分が必要になった際、元請(ゼネコン)が関西電力との間で契約した土砂処分単価と同額で吉田開発株式会社に発注し、同社が地元の業者に低い単価で発注していたというものです。元請は、監理業務の発注という名目で吉田開発株式会社と契約していましたが、発注の必要性・プロセス、金額の合理性の面でコンプライアンス違反があったのではと指摘されていました。

調査の結果、吉田開発が一部監理業務を行っていたとの一部ゼネコンの回答はあったものの、元請から吉田開発への発注単価と地元業者への発注単価との差額を正当化するだけの業務実態は認められなかったとしています。
その上で、関西電力の元請に対する発注単価自体は不相当に高額なものとは断定できないとしつつ、元請から吉田開発への発注単価と地元業者への発注単価との差額が正当な対価でないと認識しながら、吉田開発等からの求めに応じて監理業務の発注を行っていたコンプライアンス違反が認められると結論づけています。

 

土地貸借に関するコンプライアンス違反


2つ目は、福井県高浜町の隣接する3つの区画を資材置き場、駐車場として貸借した際、そのうち2つの土地を吉田開発と経営者を同じくする関連会社から、残り1つの区域を柳田産業株式会社からそれぞれ賃借していた事案です。当該賃借の必要性・決定プロセス・賃料の妥当性につき、コンプライアンス違反があったのではと指摘されていました。

この件に関して、コンプライアンス委員会は、「関西電力による賃借の必要性がまったくなかったとは認められない」としながらも、「個人の利益供与を契機としてそれに応じたために生じたことであり、仮に事後的に土地が十分に活用されていたとしてもコンプライアンス上の問題はある」「土地貸借の金額自体に問題がある」と結論づけています。

 

倉庫の賃借に関するコンプライアンス違反


3つ目は、関電プラント株式会社を通じて高浜町の地元議員が代表を務めるA社から、貯蔵品の保管場所という名目で倉庫を賃借していた事案です。こちらも、賃借の必要性、決定プロセス、賃料の合理性などの面でコンプライアンス違反があったのではと指摘されていました。

調査を行ったコンプライアンス委員会は、「倉庫を賃借したこと自体は問題ない」としながらも、「他の倉庫との比較のうえではなく、高浜町の地方議員や幹部からの強い要求にしたがい、A社の倉庫を賃借することに決定したプロセスには合理性が認められず、賃料は相場より不当に高いため、コンプライアンスに違反する」としています。

 

関西電力の今後の対応


以上のコンプライアンス委員会からの指摘を受け、関西電力では再発防止のための取り組みを公表しています。資料によると、再発防止策は7つに分けられています。特に「問題解決の仕組みを構築すること」では問題発生時の報告体制の強化することが掲げられています。また、「関連会社や取引業者を利用した手法を排除すること」では、今回の指摘を踏まえ、工事の発注・契約に係る業務の適切性、透明性を確保するための業務運営体制を確立することが明記されています。さらに、「人事評価制度の見直し」では、人事評価においてコンプライアンスを評価項目として新たに設定し、加点評価もできる人事評価制度の確立が掲げられています。その他にも、役職員の意識改革や経営の効率化に向けた取り組みをより一層進めることが記載されています。

 

コメント


今回は関西電力がコンプライアンス委員会の指摘を踏まえてどのように再発防止策を検討しているのか確認してきました。関西電力では2020年にも第三者委員会調査報告書により金品受取り問題について指摘がなされており、今回の結果も踏まえてより一層のコンプライアンス意識の醸成が求められるところです。一方で、業務改善計画については着実に実行されているとの評価を受けており、関西電力は「コンプライアンスを最優先にする企業風土の醸成を目指し、社会の皆さまからの信頼回復を成し遂げられるよう、全力を尽くしてまいります」とコメントしています。
 

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