熟練者の在留期限を事実上撤廃、就労外国人「永住」拡大への動き
2021/11/19 労務法務, 入管法

はじめに
政府は18日、人手不足が深刻な業種で、外国人労働者の在留期限を事実上撤廃する方針を固めたことがわかりました。来年度中にも閣議決定を行う見通しとのことです。今回は在留資格である特定技能について見ていきます。
事案の概要
時事通信の報道によりますと、政府は外国人労働者の在留資格「特定技能」のうち人手不足が深刻な分野で、熟練者については事実上在留期限を撤廃する方針を定めたとされます。従来は建設と造船・舶用工業の2分野についてのみ長期就労が可能となっておりましたが、介護や農業、製造業、サービス業など幅広い分野で事実上、永住権が取得できる外国人労働者の範囲が拡大される見通しとのことです。全14業種の特定技能が対象となるとされ、来年度中に制度見直しの閣議決定を行う方向で調整されております。
在留資格とは
外国人が日本に在留するためには、在留目的などを入国在留管理官署に申請して在留資格を認定される必要があります。在留資格には外交、公用、教授、芸術、宗教、報道や高度専門職、経営・管理、法律・会計、医療、研究、教育など様々なものが存在します。これに対し査証(ビザ)は日本に入国しようとする外国人が所持する旅券(パスポート)が真正であり有効であることを確認するもので、日本への上陸審査を通過すればそこで役割は終了する点で在留資格とは異なります。以下在留資格の一種である「特定技能」について見ていきます。
特定技能とは
入管難民法の平成30年改正により新たに創設されたのが「特定技能」です。深刻な人手不足に対応すべく、一定の技能を有する外国人を即戦力として日本に受け入れることを趣旨としております。特定技能は1号と2号に分かれており、1号では在留期間は1年、6ヶ月又は4ヶ月とごの更新、通算で上限5年で、一定の技能水準、日本語能力水準が求められます。家族の帯同は基本的には認められず、受入機関または登録支援機関による支援の対象となっております。2号では、滞在期間は3年、1年または6ヶ月ごとの更新、技能水準は求められますが、日本語能力水準については試験不要となっており、要件を満たせば家族の帯同が認められます。支援機関による支援は対象外です。
特定技能の産業分野
特定技能の対象となる産業分野は、(1)介護、(2)ビルクリーニング、(3)素形材産業、(4)産業機械製造業、(5)電気・電子情報関連産業、(6)建設、(7)造船・舶用工業、(8)自動車整備、(9)航空、(10)宿泊、(11)農業、(12)漁業、(13)飲食料品製造業、(14)外食業の14分野となっております。このうち特定技能2号の対象となるのは建設と造船・舶用工業のみです。介護とビルクリーニングは厚労省、建設や造船・舶用工業などは国交省とそれぞれ所管省庁が異なっており、試験実施機関なども異なるため注意が必要です。
コメント
以上のように現行の特定技能では14の業種で原則として最長5年間の在留が認められており、2号の対象である建設と造船・舶用工業だけが更新制ではあるものの上限無く長期在留が可能となっております。今回の政府の方針では14業種全てにおいて、一定の要件を満たす熟練者については在留期限を撤廃する方針としております。これにより熟練した技能者は幅広い分野で事実上の永住権を取得できることとなるのではないかと期待されております。すでに別の制度で長期就労が運用されている介護分野でも、より安定して在留し、国内で活躍することが期待されます。これらの分野で外国人を雇用している場合には、今後どのように制度が見直されていくかを注視していくことが重要と言えるでしょう。
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