武田薬品 米の糖尿病薬訴訟で賠償金大幅減額
2014/10/29 訴訟対応, 民事訴訟法, その他

事案の概要
武田薬品工業の糖尿病治療薬「アクトス」の投与が原因で膀胱がんになったとして米国男性らが損害賠償を求めた製造物責任訴訟で、米ルイジアナ州の連邦地裁は、武田薬品工業に課されていた60億ドル(約6500億円)の懲罰的損害賠償金を2765万ドル(約30億円)に大幅減額するとの決定を下した。なお、武田薬品工業はこの決定を不服として、連邦控訴裁判所に上訴する方針である。
今回、武田薬品工業は、米国で懲罰的損害賠償金の支払を命じられているが、懲罰的損害賠償については、日本では馴染みのない概念である。そこで、今回は懲罰的損害賠償制度について簡単にまとめた上で、コメントをすることにする。
懲罰的損害賠償制度とは?
日本では、他人に損害を与えてしまった場合、加害者は、通常、民法709条に基づいて不法行為責任を負うことになる。不法行為責任とは、故意・過失により他人の権利を侵害した場合に課される損害賠償責任のことである。ここでいう「損害賠償」とは、被害者に生じさせてしまった損害の分だけを金銭で支払うという填補賠償を意味する。例えば、先ほどの武田薬品の訴訟でいえば、治療費や慰謝料、逸失利益(病気にならなければ稼ぐことのできた給与など)である。
これに対して、懲罰的損害賠償制度は、英米法に特有の制度であり、加害者に対する懲罰および一般的抑止効果を目的として課されるものである。一般的抑止効果とは、「社会への見せしめ」により、今後同様の不法行為の発生を防ごうというものである。
懲罰的損害賠償を巡っては、企業は営利を求めすぎて反社会的行動に出ることがあることから、企業の社会的責任を追及できるとして評価する意見もある。他方、賠償額が多額になることから、一攫千金を目論んだ弁護士による訴訟の乱立を懸念する声もある。
コメント
懲罰的損害賠償を巡っては賛否両論あるが、この制度が企業のリーガルコストを高騰させていることは事実である。実際、今回の武田薬品の訴訟においても、株式市場では、武田薬品が多額の賠償責任を課されることにより、業績に大きな打撃を与えるのではないかとの懸念が生じていた。このような問題もあることから、賠償額について制限を設ける州も出てきている。今回は、賠償金額が大幅に減額されたわけであるが、今後、懲罰的損害賠償制度の運用のあり方が変わるのか、米国で製品を販売する日本企業は今後の動向に注目する必要がある。
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