立体商標ハードル高し、資料や模造品排除が必要
2018/08/22   商標関連, 商標法

1.はじめに

 明治のチョコレート菓子「きのこの山」が、2018年の3月に立体商標として登録されました。同社は同「たけのこの里」の登録も出願しています。これまで極めて限られていた食品の形状について商標登録を認める事例が現れたことで、日本企業の商品ブランド戦略で立体商標の重みが増す可能性が出てきました。ここでは、立体商標の要件、メリット及び注意点について触れていきたいと思います。
 

2.立体商標とは

 「商標」とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状もしくは色彩またはこれらの結合、音その他政令で定めるものであって、①業として商品を生産し、証明し、または譲渡するものがその商品について使用をするもの、あるいは、②業として役務を提供し、または証明するものがその役務について使用をするものをいいます(商標法2条1項)。代表的な商標は、社名のロゴや商品名などの平面商標です。
 商標は、営業主体が誰なのか、または、当該商品・役務が誰の商品・役務なのかを示す機能(自他商品識別機能)、同一の商標の付された商品・役務には同一の質があると期待させる機能(品質保証機能)および商標自体が一定のイメージを有し、需要者に買いたいと思わせる機能(広告機能)を有しています。立体的形状(三次元の物の形状)であっても、需要者が商品・サービスを選択する際の目印となり得ることは文字商標などと違いないので、立体商標も商標登録の対象として認められています。
 立体商標は、立体的な形状(商品、商品の形状、営業を提供する建物等)についても商標として認めるものであり、平成8年商標法改正(平成8年法律第68号、平成9年4月1日施行)で導入されたものです。実際に立体商標として登録されているものとしては、仏エルメスの「バーキン」、ヤクルト社の「ヤクルトの容器」、及び不二家の「ペコちゃん人形」などがあります。

3.立体商標の要件と効果について

【要件】
 立体商標は、登録されると、他人がその形態を使用できなくなるため、平面商標よりも登録のハードルは高くなっています。具体的には、①商品形態自体に自他商品識別力があり、かつ、②商品が当然に備える立体形状からなる商標ではない場合にのみ、登録が認められます(商標法3条1項3号・2項、4条1項18号)。

(1) ①商品形態自体に自他商品識別力があること
  まず、①商品形態自体に自他商品識別力があるというためには、商品そのものを見て、誰の商品か思い浮かぶようなものである必要があります。商品に社名や商品ブランド名を記載していて、その社名や商品ブランド名を見て、誰の商品かわかる(その記載がないとわからない)という場合には、自他商品識別力を有するのはその社名や商品ブランド名の部分であり、商品形態自体には自他商品識別力がないことになります。

(2) ②商品が当然に備える立体形状からなる商標ではないこと
  次に、②商品が当然に備える立体的形状のみからなる商標ではないという点に関し、特許庁の審査においては、この「当然に備える立体的形状」とは、商品の性質から通常備える立体的形状または商品の機能を確保するために不可欠な立体的形状をいうものとして、代替可能な立体的形状があるかどうかが判断されます。代替可能な立体的形状がない場合は、立体商標登録は認められないことになります。

【効果】
 立体商標登録がなされると、商標権者は、指定商品または指定役務について登録商標の使用をする権利を専有できることになります(商標法25条)。保護期間は10年ですが(商標法19条)、何度でも更新ができます(商標法20条)。そのため、保護期間が原則20年の特許権や意匠権、オリジナル商品の発売から3年間のみ保護される商品形態模倣(不正競争防止法2条1項3号)に比べ、長期間にわたり商品形態を保護できることになります。他者が指定商品または指定役務について、登録された立体商標を使用した場合、差止めと損害賠償を請求することができます。

4.コメント

 このように立体商標の登録はハードルが高いですが、裁判例を見る限り、(1)長期間の同一形式での継続使用、(2)多大な宣伝広告費、及び(3)アンケート調査を立証することによって、上記①・②の要件が認められる傾向にあるものと思われます。また、立体商標の登録は年々増加しているだけに、オリジナリティ性の高い商品に関しては積極的に立体商標を出願しておくことが大切です。特に海外への進出を計画する企業においては、立体商標に関する効力の認識が各国間で微妙に異なる現実もあり、入念に事前調査しておく必要があります。そしてそれと同時に、立体商標が類似商標として抵触することも多いだけに、知らずに権利侵害を起こす恐れがあることを十分に認識しておくことも忘れてはならないでしょう。

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