JPHDが株主からの役員選任提案を受領、社外取締役について
2018/05/11   総会対応, 会社法

はじめに

保育サービス大手のJPホールディングスは9日、来月開催予定の定時株主総会に向けて株主から取締役選任に関する株主提案を受領していた旨発表しました。提案されている取締役のうち4人は社外取締役とのことです。今回は定時株主総会の季節に備え、社外取締役について見直していきたいと思います。

社外取締役とは

日本の企業の役員は従来から長年勤めあげた功績のある者から選ばれており、それゆえに馴れ合いが生じ本来の業務執行の監査・監督が機能していないと言われてまいりました。この点は欧米からも指摘されてきており、バブル崩壊後に取締役のガバナンス強化を目的として導入されたのが社外取締役の制度です。社外からの目を入れることによって法令や定款違反などの不祥事を事前に防止することが期待できます。

社外取締役が必要な場合

会社法上、社外取締役が要求されるのは①特別取締役による議決の定めを置いている場合、②監査等委員会設置会社である場合、③指名委員会等設置会社である場合となります。そして社外取締役である旨の登記が必要な場合もこの3つに限定されます(911条3項21号、22号、25号)。特別取締役とは本来取締役会で决定すべき重要な財産の処分、譲受けと多額の借財に関して、その决定の委任を受けることができる取締役を言います(373条)。また公開会社であり大会社であって監査役を置いており、金商法上有価証券報告書の提出義務を負っている会社は、社外取締役を置かない場合はその理由を定時株主総会で説明しなくてはなりません(327条の2)。そして会社法とは別にコーポレートガバナンス・コードでも上場会社は社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきとしています。

社外取締役の要件

①社外取締役の要件としてまず、今現在その会社と子会社の業務執行取締役、執行役、支配人、使用人でないことが必要です。会計参与は含まれません。これらは業務執行取締役等と呼ばれます(2条15号イ)。そして過去10年間、その会社と子会社の業務執行取締役等でなかったことも必要です。

②そして次に、過去10年間、上記業務執行取締役等ではない取締役、会計参与、監査役であったことがある者である場合には、その者が就任する前の10年間で業務執行取締役等に就任していなかったことが必要です。

③上記の者に該当しなくても、親会社の取締役、執行役、支配人、使用人である場合は社外取締役にはなれません。またその会社の株式を50%を超えて取得している、いわゆる親会社の要件を満たす場合も不可とされます。

④そしてその会社の親会社を同じくする会社、いわゆる兄弟会社で業務執行取締役等に就任している場合にも社外取締役にはなれません。逆に業務執行取締役等でなければ兼任することが可能です。つまり兄弟会社両方の社外取締役に就任することはできます。

⑤最後にその会社の取締役、執行役、支配人、その他重要な使用人、または株式を50%を超えて取得している者の配偶者、2親等内の親族でないことが必要です。この親族には姻族も含まれますので、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹も不可となります。

コメント

近年コンプライアンスとガバナンスの強化のため、社外取締役の採用が推奨されております。コーポレートガバナンス・コードでも2名以上選任すべきとしており、また東京証券取引所の上場規定でも1名以上確保するよう務めなければならないとしています。それを受け、現在上場している大会社の99%は社外取締役を置いていると言われております。上記のように社外取締役の要件は26年改正以後かなり厳格なものとなっており、社外取締役を確保することは容易ではありません。しかし社外取締役を置くことによって外部の人間の目を入れ、風通しのよう経営陣であると評価され、投資家からも好意的に判断されるものと言えます。しかし一方で社外取締役はあくまでコンプライアンス、ガバナンス体制の一環に過ぎず、それを置いているからと安心はできません。社外取締役も含めた有機的なガバナンス体制の構築を心がけていくことが重要と言えるでしょう。

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