イオンにビール等を原価割れ納入、卸3社に対し警告
2012/07/23 独禁法対応, 独占禁止法, 流通

事案の概要
20日、公正取引委員会は、三菱食品、伊藤忠食品、日本酒類販売の卸3社に対し、独占禁止法違反(不当廉売)の疑いがあるとして、警告する方針を固め、事前通知を行った。なお、「警告」というのは、違反と認定するまでの証拠はないものの、違反の疑いがある行為をやめさせるための行政指導である。
上記卸3社は、遅くとも09年以降、大手スーパー・イオンに対し、ビールや発泡酒などを仕入れ値を下回る価格で卸した疑いがある。例えば、1ケース(350ml缶24本入り)で生産者価格が約3800円の場合、仕入れ値を100円以上割り込んだ商品もあったという。 卸3社は、該当するビールや発泡酒以外の他商品によって利益を得ていた。
コメント
イオンのような強い買い手の場合、弱い売り手(この場合は卸3社)としては、取引関係を継続するためにこのような条件を呑むことがある。
独占禁止法違反は、一般の感覚では何が悪いのか分かりにくいところがある。買い手は安く買える、売り手は多少経済的な痛みを伴っても取引関係を継続できるとすれば、売買の当事者にとっては納得した取引条件である、と一応はいえる。しかし、イオンは、一般の酒店ではおよそ実現不可能な販売価格を設定することができることになり、周辺の一般消費者はイオンでしかビールを買わないということになる。そうすると、まず、酒類しか扱わないような一般の酒店の経営は立ち行かなくなるという弊害がある。また、その地域ではイオンが一人勝ちし、自由に価格設定する立場を得てしまうと、その価格は市場原理の働かない恣意的なものとなり、ひいては消費者の不利益にも繋がる、というわけなのである。
事業者にとって、関連法令の専門知識が必須な世の中になっている。
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