大阪簡裁が受信料不払い世帯に支払い命じる、割増金制度とは
2024/06/13 契約法務

はじめに
NHK大阪放送局が、テレビがあるのに受信契約を締結していない大阪府内の5世帯に受信料と割増金の支払を求めていた訴訟で先月28日、大阪簡裁が1世帯に支払を命じていたことがわかりました。残りの4世帯については和解が成立しているとのことです。今回は放送法の割増金制度について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、NHK大阪放送局は、テレビがあるのに受信契約を締結していない世帯に対して、契約を締結するよう促してきましたが、それに応じない大阪府内の5世帯に対し受信料と割増金の支払を求め大阪簡裁に提訴していたとされます。このうち4世帯はいずれも支払と受信契約に応じ和解が成立していたとのことです。NHKは、今後も受信契約について理解を得るため最大限努力するとともに、割増金制度の適切な運用に努め、受信料を公平に負担していただくための取り組みを進めるとしております。
受信契約締結義務
受信契約については以前にも取り上げましたが、ここでも簡単に触れていきます。放送法64条1項によりますと、NHKの放送を受信できる受信設備を設置した者はNHKと受信契約を締結しなければならないとされます。ただし放送の受信を目的としない設備のみ設置した者は除外されております。この例外についてはこれまでワンセグ機能付携帯、ワンセグ機能付カーナビ、NHKだけ受信できないテレビについて該当するのかが争われてきましたが、裁判所はいずれについても否定しております(最判平成13年3月、東京地裁令和元年5月等)。またあらかじめテレビが設置されていた賃貸住宅での契約義務者は賃貸会社か賃借人かが争われた事例では、最高裁は賃借人としつつ、各部屋にテレビが設置されたホテルでは宿泊客ではなくホテル側としました(最決平成30年8月29日、最決令和元年7月26日)。なお放送法64条1項に該当する受信機を設置した際には、設置月の翌々月の末日までにNHKと受信契約を締結する必要があります。
割増金制度とは
2022年10月に施行された改正放送法では割増金制度が導入されました(導入は2023年4月1日から)。放送法64条3項4号では、「不正な手段により受信料の支払を免れた場合」(イ)、「正当な理由がなくて第二号に規定する期限までに受信契約の申込みをしなかった場合」(ロ)の割増金の徴収に関してその額を協会が定め、総務大臣の認可を受ける旨が定められております。そして日本放送協会放送受信規約12条では、「放送受信料の支払について不正があったとき」「放送受信料の免除の事由が消滅したにもかかわらず、その届け出をしなかったとき」は所定の受信料とその2倍の割増金をしはらわなくてはならないとされます。正当な理由がなく期限までに受信契約の申し込みをしなかった場合も同様とのことです。
正当な理由とは
NHKによりますと、放送法64条3項4号ロの「正当な理由がなく期限までに受信契約の申込みをしなかった場合」とは、受信規約3条に規定する「受信契約の申込み期限までに、正当な理由なく受診契約書の提出がない場合」としております。そして「正当な理由」の具体的事例としては、非常災害や急な疾病・事故等で受信契約書を期限までに提出することが著しく困難だったことが客観的に認められる場合などがあたるとのことです。なお地上契約を既に締結しているが、衛生受信機を設置した場合も同様に、受信機の設置の月の翌々月の末日までに衛生契約の申込みをする必要があります。徴収した割増金については、恣意的な運用をしていると受け取られないよう十分留意していくとしております。
コメント
本件で大阪簡裁はNHKとの受信契約が未締結であった1世帯に対し、受信料として7万4400円と割増金制度が導入された2023年4月以降の期間についての割増金4万2240円の支払を命じました。割増金制度導入後の提訴は東京に続き2例目であったとのことです。以上のように受信設備を設置した場合は翌々月の末日までにNHKに申し込む必要があります。例外が認められる正当な理由も、事故などの極めて限られた場合のみ認められており、それ以外で認められることは困難と考えられます。なお放送法に関しては、先月改正法が成立し、NHKによるインターネットサービスが任意業務から必須業務に格上げされました。現段階ではスマホやPCを持っているというだけで契約締結義務は発生しないとのことです。これらの放送法の動きを注視しつつ、自社での受信契約の状況等を確認しなおしておくことが重要と言えるでしょう。
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