消費者庁が「糖質カット炊飯器」でニトリらに措置命令/優良誤認と合理的根拠について
2024/02/19 コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法, メーカー, 小売

はじめに
消費者庁は8日、「糖質カット」をウリにした炊飯器を販売するニトリなど4社に対し、合理的根拠がないとして再発防止を求める措置命令を出していたことがわかりました。糖質カットは見た目上のものとのことです。今回は優良誤認と合理的根拠について見直していきます。

事案の概要
報道などによりますと、ニトリやアレティ、リソウジャパン、アイネクスの4社は炊飯時に糖質を大幅にカットできるという「糖質カット」をうたった商品を販売していたとされます。これらの炊飯器は炊きあがり時に糖質を33%~59%カットできるとしていましたが、消費者庁が調査したところ、糖質カット機能で炊いた米は通常時よりも水分量が多くなり、見かけ上の糖質カットにすぎないと判断されたとのことです。消費者庁は4社の表示に合理的根拠はなく、優良誤認表示にあたるとして再発防止を求める措置命令を出しました。
景表法の不当表示規制
景表法5条1号では、事業者は一般消費者に対し、実際のものよりも著しく有料であると示して不当に顧客を誘引し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示をしてはならないとしております(優良誤認表示)。また同条2号では、商品または役務の価格その他の取引条件について、実際のものまたは他社の同種のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって不当に顧客を誘引し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示をしてはならないとしております(有利誤認表示)。これらの不当表示行為に対しては、再発防止などを命じる措置命令や課徴金納付命令が出されることがあります(7条、8条)。なお課徴金に関しては、内閣総理大臣に対する不当表示行為に該当する事実の報告、または返金措置の実施による減額等がなされる場合があります(9条、10条)。
優良誤認と不実証広告規制
消費者庁は、商品・サービスの効果や性能に優良誤認表示の疑いがある場合、当該事業者に表示の裏付けとなる合理的根拠を示す資料の提出を求めることができます。ここで合理的な根拠を示す資料が提出されない場合または提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には当該表示は措置命令との関係では不当表示とみなされることとなります(7条2項)。この資料の提出期限は消費者庁長官が資料の提出を求める文書を交付した日から15日を経過するまでの期間とされておりますが、新たな、または追加的な試験・調査の実施を要するなど正当な事由がある場合は除外されるとのことです。なお合理的根拠の提出がない場合の効果について、課徴金納付命令との関係では不当表示と「推定」されることになります(8条3項)。
合理的な根拠の判断基準
上記合理的な根拠を示す資料と認められるためにはまず、提出された資料が客観的に実証された内容のものであることが必要とされます。客観的に実証されたものとは(1)試験・調査によって得られた結果であること、または(2)専門家、専門家団体もしくは専門機関の見解または学術文献で認められていることのいずれかに該当する必要があります。関連する学術界において一般的に認められた方法または関連分野の専門家多数が認める方法により実施された試験や調査である必要があります。このような方法が存在しない場合は社会通念上および経験則上妥当と認められる方法による必要があるとされております。そして表示された効果、性能と提出された資料によって実証された内容が適切に対応していることも必要です。
コメント
本件でニトリなど4社は「低糖質白米モードなら糖質を最大59%OFF」「糖質59%OFFの場合、カロリーは58%OFF」などと表示して炊飯器を販売していたとされます。消費者庁が期間を定めて裏付けとなる合理的根拠を示す資料の提出を求めたものの、4社から提出された資料はいずれも合理的根拠を示すものではなかったとのことです。以上のように優良誤認表示に関しては合理的な根拠を示すことができない場合、不当表示とみなされることとなります。またここに言う合理的根拠とは上記のように学術的・科学的に実証されたものなど、かなり厳格なものが要求されております。一般的にWEB広告などで表示されているサプリメントや健康食品等の効果についてはほとんどの場合にこの合理的根拠を示すことができていないのが原状と言えます。これらを踏まえて自社の製品表示を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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