クラフトビレッジ西小山建設に係る確認済み証偽造で約1億円の支払い命令
2023/07/26   コンプライアンス, 危機管理, 刑事法, 建設

はじめに


地域雇用活性化事業などを展開する株式会社ピーエイ(東証スタンダード)が建設していた商業施設「クラフトビレッジ西小山」に関し、施設の意匠設計と確認申請書の作成を受託していた株式会社archimetal.jpらが確認済み証を偽造し、それによりピーエイが是正措置の工事費用等の損害を被った問題で、東京地方裁判所は6月28日、archimetal.jpらに対し9,427万円の支払いを命ずる判決を下しました。

 

事案の概要


「オープンが大幅に遅延してしまい期待して頂いていた地域の方々や関係者に多大なご迷惑をお掛けしております。」
当時、2019年7月にオープンを予定していた「Craft Village NISHIKOYAMA(クラフトビレッジ西小山)」の商業施設。ピーエイの発表や報道などによりますと、もともと駐輪場などに使われていた土地に関して、都市再生機構(UR)が建築主を公募。2018年に地域創生事業などを手掛けるピーエイのアイディアが採用されました。

建物はコンテナ状の鉄骨造り二階建て。飲食店、ギャラリー、雑貨店など20店ほどが出店するなど、おしゃれな建築物(事務所棟と商業棟により構成)が並ぶ計画で、「まちが活気付いてくれたら」と地元の人からの期待を背負って着工がスタートしました。建設にあたって、施設の設計などを株式会社archimetal.jpや、長谷川ビジネスソリューションズ構造設計一級建築士事務所に委託。工事を2019年1月上旬~2019年5月末の期間に行い、7月にグランドオープンする予定でした。

しかし、商業棟の着工後の2019年6月に区の職員が確認済み証の交付記録を確認したところ、事務所棟の確認申請書は提出されていた一方、商業棟の確認申請書の提出がされていなかったことが発覚。目黒区は2019年7月3日、安全性未確認を理由に建設前の状態に戻すように指導を行い、建設途中だった建物を一度取り壊すことになりました。

建築確認申請は、建築主が建築物を新築するときなどに行うものです。建築主が、都や区または民間機関に確認申請書を提出し、確認済証の交付を受けたうえで、工事後に完了検査を受検し、検査済証の交付を受ける必要があります。

ピーエイは、確認申請なども委託していた設計業者から確認済証コピーを受け取っていましたが、実は偽造されたものだったということです。

目黒区の指導にしたがい是正措置を行うため、ピーエイは、完成間近の商業棟を撤去し、設計・施工を一からやり直すことに。工事費用として特別損失3200万円を計上することとなったといいます。一連の流れを受けての今回の訴訟。東京地方裁判所は、archimetal.jpらに対し、9,427万円の損害賠償支払いを命じましたが、被告側は控訴しているということです。

なお、報道などによりますと、確認済み証の偽造については刑事告訴も行われており、2022年11月に、公電磁的記録不正作出・同供用と偽計業務妨害の罪で、設計者に対して懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決が下されています。

 

偽造を防ぐためには


「時間的余裕がなかった」「早期に手続きするよう催促された」「面倒だった」などの理由から偽装が行われることのある建築の確認済証。偽造された事例としては、以下のようなケースが挙げられます。

・過去の確認済証をベースに建築場所等を切り貼りして複写し使用
・過去の確認済証をスキャンしてパソコンに取り込み建築場所等を記入後、改ざん行為がわかりにくいよう解像度を粗くして印刷し使用
・確認済証の交付を受けていないにもかかわらず、工事現場において虚偽の確認番号を表示

建築基準法に基づく確認済証等の偽造防止について(東京都都市整備局)

では、発注元企業ができる偽造防止の対策としては、どのようなものがあるのでしょうか。

(1)建築士から確認済証と確認申請書(副本)の提示を求め、必ず原本であることを確認すること
(2)工事着手後は工事監理者に中間検査や完了検査を受検したか確認すること
(3)竣工後は確認済証や検査済証の原本を受け取ること
※一連の書類は建築主が保管する必要があるためです

また、工事の依頼を受けた側の企業としては、仮に確認済証の交付がないにも関わらず工事を急ぐように言われた場合、「交付を受けた後でなければ工事に着手できない」旨を建築主に説明する必要があります。
また、工事現場の⾒やすい場所に「建築基準法による確認済」の看板を設置したり、所定の工事が完了した場合には検査を受ける必要があるため、工事監理者に検査⽇や当⽇の対応など確認することも大切です。

 

コメント


報道などによりますと、archimetal.jpの代表は、事務所棟の確認済み証をスキャンしたうえで、確認番号や日付などを「イラストレーター」で改ざん。そうして偽造した商業棟用の確認済み証をピーエイに提出していたといいます。
技術進化等により、書類の偽造が行われやすくなっている昨今。偽造による建築基準法違反等が生じた場合、第一に損害を被るのは発注元企業となります。ご紹介した偽造対策を徹底したうえで、無理のない工事スケジュールを確保することも重要になります。
 

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