レオパレス21、家電リサイクル法違反で改善勧告
2023/03/28   コンプライアンス, 住宅・不動産

はじめに


経済産業省と環境省は、3月23日、アパートの建築請負や賃貸で知られる不動産大手の株式会社レオパレス21に対し、家電リサイクル法に基づく改善勧告を実施しました。賃貸物件のオーナーが不要としたテレビやエアコンなどの廃家電について適切に引き取る義務を果たしていなかったとのことです。
 

事案の概要


特定家庭用機器再商品化法、通称、家電リサイクル法の第9条では、小売業者が過去に販売した又は買換えの際に引取りを求められた家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)について、排出者から引き取りを求められた場合、適正に回収しリサイクルを実施する製造業者などに引き渡すことが義務付けられています。

株式会社レオパレス21は、エアコンや洗濯機などを家電商社から購入したうえで、自社が管理する賃貸物件に設置。代金を賃貸物件オーナーより受領していました。そのため、家電4品目の小売販売を行う、家電リサイクル法上の「小売業者」に該当しています。

廃棄家電の引取り、家電廃棄時の家電リサイクル券の交付・管理・保管等が義務付けられている、小売業者。レオパレス21側は、自社が「小売業者」である認識がなかったといいます。

その結果、レオパレス21は賃貸物件オーナーから排出された家電に対し、自ら家電リサイクル券を交付せずに外部事業者へ廃棄家電の処理を委託していたといます(引き取り義務違反)。

環境省は、レオパレス21を立入検査した結果、2020年4月から2022年8月にかけて、99,440 件の引き取り義務違反が確認されたと発表されています。

レオパレス21の発表によると、今後は、従前行っていた処理手続きを、レオパレス21が直接家電リサイクル券を発行する手続きに切り替えるとしており、これらの変更に伴う、業績・賃貸物件オーナーや入居者への影響はないとしています。

■違反発覚の経緯
レオパレス21は、2022年4 月、廃棄家電の処理手続きに関して調査及び対応の検討を開始。6月に環境省及び経産省へ確認をしたところ、家電リサイクル法違反だということが分かったと説明しています。
すでに処理手続きの新しい運用は始まっていて、廃棄家電のうち、エアコンについては、2022年11月1日から。また、冷蔵庫・洗濯機・テレビについては、来月から運用開始予定としています。

■是正勧告の内容
経済産業省と環境省は同社に対して是正勧告を行い、23年3月から1年間、廃家電4品目の引き取り・引き渡し状況と、再発防止策の四半期ごとの実施状況を報告するよう求めています。また、賃貸管理を行う業界団体に対し、再発防止に向けて周知徹底を図るとしています。

 

家電リサイクル法とは


「リサイクル」は一般的な言葉ではあるものの、意外と知らない家電リサイクル法。一体、どんな法律なのでしょうか。

この法律は1998年5月に国会で成立、2001年4月1日に施行されました。成立前、一般家庭から排出される使用済みの廃家電製品の半分が埋め立てられている実態がありました。

廃家電製品には、鉄、アルミ、ガラスなどの有用な資源が多く含まれる一方で回収される資源は鉄などの一部の金属のみ。また、日本国内の廃棄物最終処分場がひっ迫していることなどから制定されました。

対象となる家庭用エアコンなど家電4品目について、小売業者による引取り及び製造業者などによるリサイクルが義務付けられ、捨てる側の消費者排出者には、廃棄する際、収集運搬料金とリサイクル料金を支払うことなどが定められています。

家電リサイクル法の概要(環境省)

家電リサイクル法は、家電メーカー、家電を販売する小売業者に、罰則が設けられています。立ち入り検査も行われていて、令和2年度は、小売業者に対する立入検査を230件実施したと経産省は発表しています。そのうち、151件の立入検査では、387件にのぼる指導などが行われていたということです。

【令和2年度分】家電リサイクル法に基づく立入検査の実施状況をまとめました(経産省)

 

コメント


レオパレス21の社長は、今回の件を、どの当事者が家電リサイクル法上の”小売業者”に該当するのかという観点を持って運用の設計を行わなかった為、誤った処理手続きをとっていたと分析。その原因として、自社の法令知識の欠如を挙げました。

今回のような事例を見るにつけ、コンプライアンス体制の構築には、単に現場から上がってくる相談に受動的に対応するだけでは足りず、自社のビジネスに関わるあらゆる業務フローについて法務部門が能動的に把握したうえで、それらの適法性を精査する必要性を痛感します。

レオパレス21は、今後、運用方法を検討する際に多角的視点からの適法性の検証を徹底すると共に、継続的な法令研修の実施等を行い、再発防止を図るとしています。過去には違法建築問題で世間を騒がすなど、コンプライアンス面に不安を抱えるレオパレス21。今後、同社がどのような変貌を遂げるのか、要注目です。

 

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