米国における模倣品販売者に対する商標権侵害訴訟でキヤノンが勝訴
2022/10/26 知財・ライセンス, 商標法

はじめに
キヤノン株式会社は、2022年10月6日、米国における同社製品の模倣品販売者に対する商標権侵害訴訟にて勝訴したことを公表しました。本記事では、米国における訴訟の内容、キヤノン側の模倣品についての取り組みなどについて具体的に解説します。
事案の概要
キヤノンは、米国のECサイト上でカメラ用バッテリー、インクジェットプリンター用プリントヘッドなどのキヤノン製品に類似した模倣品を発見したことを受け、2022年4月、同社の商標権侵害を理由として、模倣品販売者(52セラー)を相手どり、米国イリノイ州北部地区連邦地方裁判所に商標権侵害訴訟を提起しました。
訴訟の過程で、被告のおよそ半数が同社の商標権の有効性を認め、模倣品の販売を直ちに停止することに同意しています。また、残りの被告は法廷での反論がなかったため、9月に裁判所から侵害行為の停止等を命じる判決が下され、キヤノン側が勝訴しています。
訴訟提起の背景
2022年8月に経済産業省が行った発表によりますと、全世界のBtoCのEC市場規模の予測推計値(旅行・チケット販売を除く)は799兆円となっており、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前となる2019年の484兆円から、約66%の成長を見せています。それに伴い、国境を越えるボーダレスな取引も増えており、その中に模倣品が入り込むケースも頻繁に発生し、社会問題化しています。
模倣品の中には、無断でブランド名を使用したもの、商品名を少し変えた紛らわしいもの、デザインを模倣するものなどがあり、正規メーカーのブランドを毀損するに留まらず、製品の購入者に対しても、製品の故障や品質不良による経済的損失の発生や事故による身体への危険などのリスクをもたらします。
こうした背景を受け、今回、キヤノンは、米国における模倣品対策の一環として、米国のECサイト上で模倣品を販売する米国外の販売者に対して一斉に提起したとしています。
キャノンの模倣品に対する取り組み
キヤノンでは模倣品に関し、以下の対策をグローバルに行っています。
(1)商標「Canon」を全世界およそ190の国と地域で登録。世界中で、商標権を行使できる体制を整備。
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また、キヤノンUSAは、同じく本年2月には、中国に拠点を有する販売業者が米国内向けにカメラ用バッテリーの模倣品を販売していたケースも解決しています。当該ケースでは、調査により、販売業者が、中国から直接模倣品を発送するのではなく、別の業者(受注から発注までの全ての業務を請け負う。以下、「フルフィルメント業者」。)が米国内に持つ物流倉庫に模倣品を保管させたうえで、同倉庫経由で消費者に発送する手段を利用していることを突き止めました。
そこで、キヤノンUSAは、中国系大手フルフィルメント業者と交渉を行い、中国に拠点を有する販売業者がキヤノンの模倣品バッテリーの保管に同社が米国に保有する倉庫の利用をできなくする措置を講ずることについて、合意にいたりました。
コメント
OECDとEU知的財産庁の報告書によりますと、2016年の税関での押収物のデータに照らしたときに、世界全体の偽造品輸入額は、5090億ドル(米)にのぼるといいます。これは、世界の貿易額の実に3.3%を占めるもので、現在ではさらに数字を伸ばしていると予想されます。
こうした模倣品に対する規制は、日本国内でも厳格化しています。令和3年5月の改正商標法及び改正意匠法では、海外の事業者が模倣品を郵送等で日本国内に持ち込む行為が「権利侵害行為」となることが明確化されました。それに伴い、令和4年3月の改正関税法(令和4年10月1日施行)では、海外の事業者が郵送等で日本国内に持ち込んだ模倣品が、税関の取締り対象に含まれることとなりました。この法改正により、従前から規制されていた事業者による模倣品輸入に加え、個人使用の場合でも、海外のECサイト等を通じて海外の事業者から模倣品を輸入することができなくなりました。
越境ECでの模倣品対策には、模倣品を見つけ出すところから始まり、海外の販売者への警告や交渉、海外ECプラットフォームとの調整など、メーカー側に多大な負担が生じます。その一方で、権利者がしっかりと声をあげることが、その後の模倣品流通の予防にも繋がります。
今後も、国、メーカー、各地のECプラットフォームなどが密な連携を行い、模倣品対策を行うことが求められます。
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