リコーの子会社出向命令は無効
2013/11/13 労務法務, 労働法全般, メーカー

事案の概要
リコーの40代と50代の社員2人が退職勧奨を拒否したために子会社に出向させられたことに対し、出向命令の無効と損害賠償を求めていた訴訟の判決が11月12日、東京地裁(篠原絵里裁判官)であった。
裁判所は、これまで従事していた業務と出向先の業務内容が全く異なりキャリアや年齢に配慮されているとは言い難いこと、何度も退職を迫った上での出向であり人選も不合理であることなどから、社員の自主退職を期待して行われた出向命令は、人事権の濫用であり無効であると判断した。損害賠償は認めなかった。
社員2人は、技術系社員として採用され、長年製品開発に従事していたが、業績悪化から2011年5月に発表されたグループ全体の約1割にあたる1万人の人員削減計画の一環として会社側から退職勧奨を受け、これを断ったところ、物流事業を扱う子会社への出向を命じられ、商品のラベル貼り、箱詰め作業に従事させられていた。リコーは即日控訴している。
◆出向命令の有効性について
判例(新日本製鐵事件判例 最二小判平成15年4月18日)は、企業のグループ内企業への出向命令の有効性が争われた事案において、労働協約と就業規則に出向命令権を根拠付ける規定があり、出向期間や出向中の地位、出向先での労働条件などにつき出向者の利益に配慮した規定が設けられている場合に、従業員の同意なしに出向を命ずることができるとしている。このような実質的に配転と同視できるような場合にあたらなければ、あらためて個別の同意が必要となる。
そして、従業員の同意なしに出向を命ずることができる場合でも、出向の必要性や人選基準の合理性、業務内容や業務場所、社員の地位、賃金、査定その他処遇等に関する事情で従業員が著しい不利益を受けるものと判断できるときは、出向命令権が無効と判断される場合がある。
労働契約法においても、「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。」と、このことが確認されている(同法14条)。
コメント
企業にとって、業績悪化により人員削減のためにやむなく整理解雇をする必要がある場合はどうしても出てくる。その場合に、事前に紛争を回避するための手段として希望退職者の募集や退職勧奨を行うこと、また、本件のように人事配置の見直しを用い人件費を削減する方法も有効な方法である。
しかし、そこで行われた退職勧奨や出向命令が無効であれば、紛争回避のための手段により紛争に至ってしまうこととなり望ましい結果であるとは言えず、どのような方法が適切であるのかは、常に悩ましいものである。本判決は、退職勧奨や出向命令の有効性に関し、参考となるケースである。
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