育休で昇給させないのは違法ではない!京都地裁が判断
2013/09/26 労務法務, 労働法全般, その他

事案の概要
京都市の元看護師の男性(43)が、3ヶ月の育児休業を取得したことを理由に、1年間昇給させず、昇格試験の機会も与えなかったのは、不利益な取扱いを禁止している育児・介護休業法に違反するとして、病院を運営する医療法人に慰謝料約58万円の支払いを求めていた訴訟の判決が9月24日、京都地裁(大島眞一裁判長)であった。
裁判所は「昇給させなかったのは違法ではない」と判断。一方で、昇格試験を受験させなかった点は、内規に違反するとして、15万円の慰謝料の支払いを命じた。
男性は京都市左京区の、いわくら病院に看護士として勤務していたが、2010年に3ヶ月間育休を取得した。病院の就業規則では、「育休中は本人給のみ昇給する」との規定があり、同病院側は2011年度は、男性の職能給を昇給せず、昇格試験の受験も認めなかった。
男性は病院を運営する医療法人「稲門会」に対して、未払いの昇給分や慰謝料の支払いを求めて提訴していた。
判決で大島裁判長は「3カ月間の育休で形式的に能力の向上がないとし、一律に昇給を否定する内規の合理性に疑問が残る」としながらも「育休法の趣旨を実質的に失わせるものとまでは認められない」とし、昇給させなかった点についての違法性は認めなかった。一方、昇格試験を受けさせなかった点については、昇格試験を受験するための人事評価期間に育休を取得した年度を算入していなかったことを「法的根拠がない」とし、この点については違法性を認め、慰謝料の支払いを命じた。
コメント
政府は成長戦略の一環として「育休3年」を掲げているが、「期間中の収入」や「育休後のキャリア」の点から批判的な意見が多いのも事実である。
上記事案は地裁レベルの判断であるが、育休取得に対してマイナスの判断要因となる。男性は控訴も検討しているとのことなので、控訴されれば上級審でどのような判断が下されるのか注目される。
また、この事案を巡っては、2012年9月に京都労働局が昇給させなかった点に関して、不利益な取扱いになると認定し、病院側に是正勧告を出している。上記司法判断とは別に、行政庁による行政指導が入る可能性もあるため、企業側としては注意を要する。
参考条文
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
第十条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
新着情報
- セミナー
殿村 桂司 氏(長島・大野・常松法律事務所 パートナー)
板谷 隆平(MNTSQ株式会社 代表取締役/ 長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
- 【アーカイブ配信】24年日経弁護士ランキング「AI・テック・データ」部門1位の殿村氏が解説 AIに関する法規制の最新情報
- 終了
- 2025/05/23
- 23:59~23:59
- 弁護士

- 横田 真穂弁護士
- 弁護士法人咲くやこの花法律事務所
- 〒550-0011
大阪府大阪市西区阿波座1丁目6−1 JMFビル西本町01 9階
- まとめ
- 独占禁止法で禁止される「不当な取引制限」 まとめ2024.5.8
- 企業同士が連絡を取り合い、本来それぞれの企業が決めるべき商品の価格や生産量を共同で取り決める行...
- ニュース
- 2026年1月から施行、改正下請法について2025.10.22
- 下請法の改正法が今年5月23日に公布され、来年2026年1月1日に施行される予定となっています...
- 弁護士

- 大谷 拓己弁護士
- 弁護士法人咲くやこの花法律事務所
- 〒550-0011
大阪府大阪市西区阿波座1丁目6−1 JMFビル西本町01 9階
- 業務効率化
- LAWGUE公式資料ダウンロード
- 解説動画
斎藤 誠(三井住友信託銀行株式会社 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌))
斉藤 航(株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー)
- 【オンライン】電子提供制度下の株主総会振返りとバーチャル株主総会の挑戦 ~インタラクティブなバーチャル株主総会とは~
- 終了
- 視聴時間1時間8分
- 業務効率化
- ContractS CLM公式資料ダウンロード
- 解説動画
岡 伸夫弁護士
- 【無料】監査等委員会設置会社への移行手続きの検討 (最近の法令・他社動向等を踏まえて)
- 終了
- 視聴時間57分












