音楽ファイル 違法配信と違法ダウンロード
2012/04/23 知財・ライセンス, 著作権法, エンターテイメント

事案の概要
インターネットの掲示板に音楽ファイル6曲を違法配信したとして、21日、長野県警塩尻署は著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで熊本市中央区新大江、三池精一容疑者(39)を逮捕した。容疑者は、日本音楽著作権協会(JASRAC)に無許可で2月3日から3月6日の間、インターネットの無料掲示板に音楽ファイル6曲を投稿し、不特定多数の者がダウンロードできる状態にした疑い。長野県警の発表によると容疑者は、「数年前から、約400曲をアップロードした」と容疑を認めているという。
著作権侵害の罪は親告罪で、権利者の告訴が必要。JASRACは、20日にも音楽ファイルを無断で公開していた男性2人について、福岡県中央警察署と愛知県千種警察署に告訴状を提出している。
現在の著作権法では、違法ダウンロードについては罰則規定がなく、違法ダウンロードを抑制させる実効的な手段が取られていない。そこで、音楽業界等の働きを受け、違法ダウンロードの罰則規定が今国会中に制定される見通し。しかし、違法配信であることを知らずに有償でダウンロードした場合の扱いなどが明確でなく、議論が尽くされたとはいえない。ネットユーザーを中心に反対が根強い。
さらに、著作権侵害の非親告罪化についても議論されているが、、日弁連は「著作権保護による利益は対象の権利者のみのものであり、また侵害かどうかを判断できるのは被害の当事者である」と反対意見を出しており、権利侵害の有無の難しさや捜査権濫用の危険から今のところ、大きな非親告罪化の動きはない。
コメント
インターネットの特性上、1つの違法配信があればそれだけで不特定多数の者が違法ダウンロード可能となり、著作権者の権利が侵害されるため、著作権者保護の観点から見れば違法ダウンロード罰則化は重要であるといえる。しかし、現代において、インターネットは不可欠な存在であるため、正当なインターネット利用者が萎縮するような法律は望ましくない。著作権者保護と正当なインターネット利用者保護の調整を図るために罰則化は慎重に議論を重ねる必要があるが、今のところその議論は十分とはいえないようだ。
また、罰則規定が設けられたとしても、違法ダウンロードをしている全員がファイルを購入するようになるとは考えられない。音楽業界が大きな利益を上げ続けるためには、違法ダウンロードの原因と言われる複雑な著作権管理の緩和や高額な音楽ファイル価格の適正化についても対応する必要があるだろう。
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