インドネシア法務レポート
2011/11/02   海外法務, 海外進出, 外国法, その他

はじめに

 
1.はじめに
インドネシアは、人口約2億3845万、GDPは、(国内総生産)6950億ドルである。農業が主要な産業で、カカオ、キャベツ、ココナッツなどが生産されている。鉱業資源は、金、錫、天然ガスなどが豊富である。日本はインドネシアから多量のLNGを輸入している。
また、インドネシアは、年4.5%近くの成長率が見込めるため、数多くの外資系企業が進出している。日本企業も例外ではない。インドネシアは豊富な労働力、資源、広大な農地、地理的な優位性(海上ルート)など、企業に取って魅力的な環境を備えている。
ただ、行政の汚職や裁判所の不安定性、知的財産保護制度の不備など、ビジネス環境が整っているとは、言い難い状況がある。

投資額について

 
2.投資額について
2010年の外国直接投資額は前年比52.0%増の162億9,800万ドルと過去最高を更新した。また、国内投資も前年比60%増の66億6,200万ドルとなっている。

投資規制について

 
3.投資規制について
国防産業(武器、弾薬、爆発物、戦争用機材の生産など)への外国投資は禁止されている。また、ネガティブリストとして、以下の分野について投資規制がある。
(1)ミクロ/中小事業・協同組合のために留保される分野
(2)パートナーシップが条件付けられる分野
(3)外資の出資比率が制限される分野
(4)投資ロケーションが限定される分野
(5)管轄省庁などから特別な許可を要する分野
(6)アセアン諸国よりの投資で、外資の出資比率および投資ロケーションが制限される分野

土地の所有権について

 
4.土地の所有権について
土地の所有権はインドネシア国民にのみ認められる。

資本金規制について

 
5. 資本金規制について
最低授権資本金額は5,000万ルピア(約50万円)、[2]最低引受資本金額は1,250万ルピア(授権資本金額の25%)、[3]最低払込資本金額は1,250万ルピアと定められた。現物による出資も可能。

インドネシア会社法について

 
6.インドネシア会社法について(ポイント)
外国資本による企業の設立は、株式会社(Perseroan Terbatas)として設立することが必要とされている。外国投資法では、外国資本により設立された会社をPMA企業(Penanaman Modal Asing)と呼び、他の国内企業(Penanaman Modal Dalam Negeri = PMDN)と区別している。
(1) 設立者が二人以上必要
(2) 公正証書
(3) 出資額5000万ルピア以上
(4) 法務人権大臣の認可を受け、会社登記をし、インドネシア共和国官報に公告

インドネシア労働法

 
7.インドネシア労働法
インドネシアにおける有期労働契約は、書面形式で作成することが条件となっている。また、期間の定めのない労働契約を口頭で行う場合は、事業者はその労働者に対して採用通知書を作成する義務がある。
(1) 一般労働者
継続して4時間勤務した場合は、30分間の休憩。
継続して12か月勤務した場合は、12日間の年次有給休暇。
同じ会社で継続して6年間勤務した場合において、少なくとも2か月以上の長期休暇。
(2) 労使関係
50名以上の労働者を雇用する会社は、二者協議会を結成する義務がある。この協議会は、会社における相談の場としての役割を果たす。
(3) ストライキ
ストライキ実施の7日前までに、事業者及び労働者に責任を持つ、関係当局にストライキ計画を通知することを労働者及び労働組合に義務付けている。

税法

 
8.税法
(1) 個人所得税
個人に対する所得税額は累進課税になっており、最高税率は30%になる。
(2) 法人税率
法人に対する税率は所得額にかかわらず、一律25%になる。

インドネシアのおける知的財産法

 
9.インドネシアにおける知的財産法
(1) 特許 インドネシアに対する出願件数は約5000件で、9割が外国からのものである。
(2) 意匠 商標出願は年間5万件でその7割が国内からの出願である。意匠については、審査の質が問題となっている。
(3) インドネシアにおける知的財産権の権利行使は通常刑事手続きを通じて行われる。刑事手続きを使って、権利を侵害している品を押収することはできるが、損害賠償まで得ることはなかなかできない。

法務リスクについて

 
10.法務リスクについて
2000年において、日本企業の味の素が発酵菌の栄養源を作る過程で触媒として豚の酵素を使用していたために、現地法人の社長が逮捕され、味の素製品は同国の食料品店から姿を消した。同社は2001年2月に商品の回収を終了、触媒を変更したことにより販売許可(Halal)が下り、社長も釈放され、製造販売を再開した。イスラム国家でビジネスをするためには、現地の文化および風習を深く理解していないと、本件のような事案が発生するリスクがある。

インドネシアの競争法

 
11. インドネシア競争法
インドネシアにおける競争法規定は以下のようになっている。
第1章(第1条)  総則
第2章(第2条〜第3条)  原則及び目的
第3章(第3条〜第16条)  禁止される協定
第4章(第17条〜第24条)  禁止される活動
第5章(第25条〜第29条)  市場支配的地位
第6章(第30条〜第37条)  事業競争監視委員会
第7章(第38条〜第46条)  事件処理手続
第8章(第47条〜第49条)  罰則
第9章(第50条)  その他の規定(適用除外規定)
第10章(第52条)及び第11章(第53章)  雑則
また、執行機関として事業競争監視委員(独立行政機関)が置かれている。

参考文献

 
参考文献

「インドネシア進出完全ガイド、」黒田法律事務所編著、カナリア書房、2009年
「アジア法ガイドブック、」鮎京正訓、名古屋大学出版会、2009年
「インドネシアの競争法の問題点、」鈴木康二、開発金融研究所報、第19号、2004年、6月

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