派遣社員の過労自殺! 業務請負の問題点が浮き彫りに!
2011/10/04 労務法務, 労働者派遣法, その他
概要
1.概要
2011年10月1日、最高裁判所第二小法廷(千葉勝美裁判長)は、光学機器大手の「ニコン、」と同社の派遣元「アテスト、」の上告を退ける決定を下した。
死亡した、上段勇士さんの母親が1億4500万円の支払いを求めて訴えを提起していた。
自殺した派遣社員であった上段勇士さんは、派遣元の「アテスト」から、埼玉県熊谷市の「ニコン」工場に派遣され、半導体検査業務に従事していた。
認容された損害賠償額は計7000万円だった。
内容
2.内容
原審及び第二審では、「アテスト、」から「ニコン、」の人員配置が派遣か請負にあたるかが争点となった。
また、労働内容が加重であったか、そしてうつ病の原因が「ニコン、」での労働にあったかなどが争われた。
業務が請負であると認められるためには、請負4要件を満たす必要がある。
請負4要件とは、請負業者は注文主から独立してその業務を行う技術や資力をもち、労働者を指揮命令する能力が必要で、単に肉体労働的な作業は認めない。作業に必要な機材は自前または賃貸契約が必要であること。注文主が指揮命令することは許されないという内容である。
判決では、本件人員配置が請負であるか、派遣であるかの実質的判断はなされなかったが、派遣元と派遣先2社の責任を認め、損害賠償請求を認容した点で画期的な判決であるといえる。また、加重労働であることや、病気の原因が「ニコン、」での労働にあったことも認められた。
雑感
3.雑感
本来厳しい要件の下、規制されてきた請負契約が派遣の脱法手段として利用されている。偽装請負契約を使って、派遣法の規制を免れる脱法行為は、企業の利益にはなるが、労働者の安全やコンプライアンスの点で問題点が非常に大きい。特に請負は、住宅工事など物の完成を目的とするのが本来的な契約の目的であるので、工場に人員配置をするときに、請負契約を利用することは本来予定されていた契約の守備範囲を逸脱するものである。
特に、労働者が怪我した場合や、病気にかかった場合など責任の所在が不明確であるし、労働者が著しい不利益をこうむることになる。国や労働基準監督所はこういった実態を踏まえて、規制を強めていくべきであると考える。
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