マタハラ提訴 伊アリタリア航空客室乗務員
2015/06/25 労務法務, 労働法全般, その他
事案の概要
イタリアのアリタリア航空に勤務していた客室乗務員の日本人女性は23日、乗務員であることの地位確認や未払い賃金約320万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に提訴した。原告女性は、2010年3月に1年ごとに契約を更新する契約社員として同社に入社。2012年12月に妊娠を伝えて休職した後、休職中に契約更新を希望したが認められなかったという。同期入社の女性も原告女性と同時期に産休に入ったが、会社からの雇い止め後、組合を通じた交渉の末に再び契約を結んでいる。同社は、過去に懲戒を受けたことがあるため契約更新はしないと通告し、雇い止めは契約期間が満了したことを理由とすると説明している。
産休・育休による解雇について
雇用者は、産休・育休を理由に労働者を解雇してはならないと法律によって定められており、具体的な条文をいくつかご紹介したい。
まず、産休に関するものとして、男女雇用機会均等法第9条3項は、事業主は「女性労働者」が妊娠したことで厚生労働省令が定めるものを理由とした「解雇その他の不利益な取扱い」をしてはならないと規定している。この条文では、「女性労働者」と定めていることから、正規雇用だけではなく非正規雇用の女性労働者にもこの条文は適用される。また、厚生労働者は、「解雇その他の不利益な取扱い」の典型例として、「期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと」を「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平成18年厚生労働省告示第614号)で明確に定めている。
他にも、労働基準法19条は、妊産婦が産前産後休業で休暇を取っている期間中、その後30日間は解雇できないとしている。
次に、育休に関するものとして、育児・介護休業法第10条は、「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない」と規定している。
コメント
マタハラに関する訴訟として、昨年10月に最高裁が、妊娠中に軽易業務への転換を契機として降格処分を行ったことは男女雇用機会均等法9条3項に違反するとの判断を示したことは記憶に新しい。厚生労働省はこの最高裁判決を受けて、今年の1月に法の解釈通達を出している。今回のケースのように女性労働者が声を上げて一石を投じることは、法や制度を実効あるものとしていくための大きな一歩である。女性労働者にとって仕事と生活の調和をとれる社会が早く実現がされることを期待していきたい。
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