オリンパス 不透明なM&A 
2011/11/04   戦略法務, M&A, 金融商品取引法, 会社法, メーカー

(1)不透明な企業買収
 光学機器メーカーのオリンパスが行った企業買収に不透明な点があるとして、証券取引監視委員会などから問題視されている。事案の概要は次のようなものだ。

 オリンパスは2006年、海外でのM&Aのためアメリカの投資助言会社AXESに仲介を依頼した。報酬は当初の契約では、基本報酬が500万ドル、成功報酬が買収額の1%だったが、その後、契約が見直され、成功報酬が5%に引き上げられたという。基本報酬の500万ドルは契約後すぐに支払われた。その後、買収の対象がイギリスの医療機器メーカーのジャイラスに決まると、成功報酬として現金1200万ドルのほかジャイラスの優先株が払われたという。その総額は約660億となり、M&Aでの仲介報酬としては異例の高額。しかしオリンパスは、ジャイラスを完全子会社化するため、AXESに与えた株を買い取ることにした。その代金の支払い先となったのがAXAMである。この会社はAXESの完全子会社であり、タックスヘイブン(租税回避地。法人税など一定種類の税率が著しく低い、またはゼロの場所をいう。)として有名なカリブ海のケイマン諸島に会社の登記を置いていた。しかしオリンパスからの最後の支払いの3ヶ月後にケイマン諸島における登録料未払いにより金融業の登録が取消されている。

(2)何が問題か
 まず問題となるのは金融商品取引法上の規制に対する違反の可能性だ。AXAMに対し払われた巨額の報酬は外部に公表されておらず、有価証券報告書における虚偽記載などの有無が今後の焦点になると考えられる。M&Aの会計処理に虚偽記載の事実が認められれば金融商品取引法上の違法行為にあたり課徴金処分などの対象となるほか、刑事告発の対象にもなる。
 次に株主代表訴訟による経営陣らへの責任追及が考えられる。AXAMの所有者が不明なことと、AXESからのジャイラス優先株買取りが取締役会決議等の審査なくして当時の社長ら一部幹部の稟議のみで決定されたことなど、多くの不審な点が見られるという。株主の中には、取締役らの職務遂行に問題があったとして損害賠償請求をするよう、会社に対し求めている人もいる。
 また、ケイマン諸島に設立されたAXAMに660億円という異例の高額報酬を払うという、不自然な取引をわざわざした動機は何なのか。オリンパスはジャイラスの事業価値を高めるためにジャイラスの株を買ったというが、納得いく説明と言えるか疑問である。

(3)他の経営上の問題
 またオリンパスには他の問題も存在する。
 まず、2006年から2008年にかけて、オリンパスの業務とは関連の薄い会社を高額で買収し、すぐに現存処理するという不自然な取り扱いをしていたことについても、株主代表訴訟などの問題を指摘できるだろう。他にも、内部告発社に対する報復人事問題で元従業員と訴訟係争中だ。
 法令違反が会社の存亡すら左右するようになった以上、今後一層のコンプライアンス体制拡充が求められるだろう。

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