日立が信託活用で導入、株式報酬について
2026/04/15 商事法務, 労務法務, 会社法, メーカー

はじめに
日立製作所は先月23日、信託スキームを用いた従業員向け株式報酬制度を導入すると発表しました。従来の株式報酬の煩雑な手続きが回避できるとのことです。今回は株式報酬について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、日立は三菱UFJ信託銀行を受託者とする信託に金銭を拠出し、それを原資として株式市場または日立から株式を取得してもらい、それを対象となる従業員に付与するとされます。
信託に拠出される金銭は総額650億円とされ、2026年度に世界40カ国余りの管理職約1800人が付与の対象となるとのことです。職位などに基づいてポイントを従業員に割り当て、勤続年数など一定の条件を満たした場合にポイントに応じて株式が付与されるとされています。
日立は従業員と株主の利益を一致させることで、長期的な企業価値の創出や従業員のエンゲージメント向上を目指すとしています。
株式報酬とは
「株式報酬」とは従業員や役員に対して、金銭の代わりに株式を報酬として付与するという制度を言います。会社の業績が上がれば自己が保有する株式の価値も上がり役員や従業員のモチベーションを高めるインセンティブ報酬です。
現金報酬と異なり長期的な視点で会社の成長に貢献した役員や従業員に報いることができ、優秀な人材の獲得や定着を期待できると言われています。また、日本では長らく終身雇用や年功序列型賃金性を採用していた背景があり、欧米と比べても株式報酬の採用が低いとされてきました。
しかし、現在では日本の企業もグローバル化が進み、株式報酬のような変動報酬の導入が活発化しているとされます。
以下、具体的な株式報酬を見ていきます。
株式報酬の種類
一口に株式報酬と言っても様々な種類があります。具体的には(1)譲渡制限付株式、(2)業績連動型株式、(3)ストックオプション、(4)業績連動型株式ユニット、(5)譲渡制限付株式ユニット、(6)ファントムストックなどが挙げられます。
まず、譲渡制限付株式の場合、あらかじめ従業員に株式を交付し、勤務期間経過後に譲渡制限を解除するというものです。業績連動型株式も譲渡制限が付いている点は同じですが、業績目標の達成度に応じて譲渡権限が解除されるという制度です。
ストックオプションは設定した権利行使価格で自社の株式を購入する権利が与えられます。業績連動型株式ユニットはあらかじめユニットを付与しておき、業績目標の達成度に応じて株式が交付されます。譲渡制限付株式ユニットの場合も同様にあらかじめユニットが付与されますが、勤務期間経過後に株式が交付されるという違いがあります。
そして、ファントムストックとは仮装株式を交付して株価や業績に連動した金銭報酬を支給するというものです。厳密には株式報酬とは異なると言えます。
取締役への株式報酬
従前、取締役に株式を報酬として付与するにはストックオプションか募集株式発行の方法による必要がありました。これらの場合は無償で株式を付与することができず、会社法の手続きを経る必要がありました。
しかし、令和元年の会社法改正で払込をせずに取締役に株式を付与する制度が導入されています(202条の2第1項1号)。
具体的には、(1)取締役の報酬等として株式の発行または自己株式の処分をする場合、または(2)取締役の報酬等として新株予約権を発行する場合は、金銭の払込等を要しないとされています。
これにより無償での役員報酬として自社株、または新株予約権を付与できるとされています。ただし、この制度は取締役のみを対象としており、従業員等には活用できません。また、上場会社のみに限定もされています。
コメント
上記のように現在、上場企業の取締役等には金銭の払込なく報酬として株式を付与する制度が用意されていますが、従業員についてはこれまでと同様に金銭の払込が必要です。そこで、一旦従業員に金銭債権を付与し、後にそれを現物出資させるという手続きが取られることがありました。しかし、この方法では手続きが煩雑となります。
そこで、日立では信託を介して従業員への株式付与の手続きを簡略化するスキームを導入するとされます。会社から原資を信託された受託者である信託銀行が、その原資により株式を取得して従業員に株式を付与するというものです。これにより会社の負担が大幅に軽減されるものと考えられます。
現在、国内企業も従業員やステークホルダーのグローバル化が進んでおり、それに伴って多様な報酬を用意できるようになっています。これらの制度を柔軟に活かして人材獲得と維持を推進していくことが重要と言えるでしょう。
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