スイデコに公取委が措置命令、景表法と価格表示について
2025/03/03 コンプライアンス, 行政対応, 広告法務, 景品表示法, IT

はじめに
公取委北海道事務所と消費者庁が28日、道内を中心に家具・生活雑貨「スイートデコレーション」を運営する長谷川産業(帯広市)に対し景表法違反で措置命令を出していたことがわかりました。有利誤認表示とのことです。今回は価格表示と景表法による規制について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、長谷川産業が運営する「スイデコ公式ネットショップ」などで、ベッドや敷物、クッション、収納家具など53品目について、2024年5月18日~8月1日に、実際の販売価格のほかに割高な「通常価格」を提示して販売していたとされます。具体的には「通常価格:¥25,190 10%税込(+送料 ¥2,310~) ¥18,590 10%税込(+送料 ¥2,310~)」などと記載していたとのことです。これによりあたかも通常販売している価格に比して安いかのように表示していたとし公取委北海道事務所と消費者庁は有利誤認表示に当たるとして同社に措置命令を出しました。景表法違反であることの周知と再発防止および社内での周知徹底が命令内容とのことです。
景表法の不当表示規制
景表法では5条で不当表示として(1)優良誤認表示、(2)有利誤認表示、(3)その他内閣総理大臣指定の表示を不当表示として禁止しております。優良誤認表示とは、一般消費者に対し、実際のものまたは同業他社の製品よりも著しく優良であると示す表示をし不当に顧客を誘引して自主的かつ合理的な選択を阻害することを言います。有利誤認表示とは、商品または役務の価格その他取引条件について、実際のものまたは同業他社のものよりも著しく有利であると示す表示をし不当に顧客を誘引して自主的かつ合理的な選択を阻害することを言います。そして内閣総理大臣による指定(指定告示)では、無果汁の清涼飲料水等、商品の原産国、消費者信用の融資費用、不動産のおとり公告、その他おとり広告、有料老人ホームに関する不当表示について定められております。これら不当表示に対しては、差止や再発防止などを内容とする措置命令が出されることとなります(7条)。
有利誤認表示の要件
有利誤認表示は上でも触れたように、事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引につき、価格その他の取引条件について一般消費者に対し、(1)実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの、(2)競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの、であって不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示をすることです。実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競争事業者のものよりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝する行為が典型例とされます。これは故意に表示した場合だけでなく、過失で表示してしまった場合であっても該当するとされております。
二重価格表示
有利誤認表示の事例として多いのが二重価格表示です。例えば実際にはその価格で販売されたことがない価格を表示して、その下により割安な価格を表示したり、架空のメーカー希望小売価格を表示するといった行為を言います。価格表示は消費者にとって商品・サービスを選択する上で最も重要な情報の一つと言われております。それを有利に偽ることは不当表示に該当する可能性が高い行為と言えます。公取委のガイドラインによりますと、同一でない商品の価格を比較対象価格に用いた表示や、比較対象価格に用いる価格について実際と異なる表示や曖昧な表示行う二重価格表示は違法となるおそれがあるとされます。そして「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を比較対象価格とする場合は問題がないとされます。ここで「最近相当期間にわたって販売されていた価格」についてはその価格で販売されていた時期、期間、対象商品の価格変動の状況、当該店舗での販売形態を考慮しつつ個々の事案ごとに検討されるとされており、セール開始時点からさかのぼって8週間を検討されるとのことです。この期間の過半を占める期間で販売されていた場合は「最近相当期間にわたって販売されていた価格」に当たると見られるとされます。
コメント
本件でスイデコ公式ネットショップでは令和6年5月18日~8月1日に割高な「通常価格」を表示していたとされます。しかしこの通常価格については最近相当期間にわたって販売されたことがないものであったとのことです。これにより実際のものよりも著しく有利であると誤認させたとして措置命令が出されました。以上のように有利誤認表示では価格表示が非常に重要な要素となっております。特に「通常価格より◯割引き」といった表示をする場合、最近相当期間にわたって実際にその価格で販売されていたことが必用となり、架空の価格であった場合は有利誤認表示となります。自社の製品でこのような表示を行っている場合は、実際にその価格で販売していた実績があるのかを確認しなおしておくことが重要と言えるでしょう。
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