名古屋銀行の元行員が伴走支援型特別保証制度を利用し不正手続き
2022/07/27 金融法務, コンプライアンス

はじめに
名古屋銀行は2022年7月15日、元行員が伴走支援型特別保証制度を利用した不正な手続きをしていたとして、ホームページ上で文書を公表しました。本件は新型コロナウイルスの影響で売り上げが減少するなどした中小企業を対象に信用保証料の負担を軽減するという国の制度を利用したものであり、同行員はすでに処分されたことが発表されています。そこで今回は、不正の概要や伴走支援型特別保証制度の仕組み、名古屋銀行の今後の対応などについて解説していきます。
伴走支援型特別保証制度とは
伴走支援型特別保証制度とは、コロナ禍を乗り越えるために、一定の要件を満たした中小企業者に対して、「金融機関との対話を通じて“経営行動計画書”を作成し、金融機関による継続的な伴走支援を受けること」を条件に、借入時の信用保証料(中小企業が融資を受ける際に信用保証協会に保証人となってもらうための費用)を大幅に引き下げる制度のことです。コロナの影響の長期化を踏まえ、2022年2月からは保証上限額(信用保証制度によって保証が受けられる上限金額)が6,000万円に引き上げられています。保証期間は10年以内、据え置き期間は5年以内、保証料率は原則0.2%で、15%以上の売上の減少があることが要件です。
元行員1人が不正な手続き
このように、本制度は中小企業が金融機関から融資を受ける際、信用保証料の負担を引き下げる制度ですが、今回の名古屋銀行の発表によると、この制度を不正利用した元行員1人の行為が発覚したとのことです。元行員は、企業の売り上げを実際よりも少なく記載するなど不正な手続きを行っていたことがわかっており、「新型コロナの影響で売り上げが15%以上減る」という要件を満たさない中小企業に同制度を利用させていた可能性があるとのことです。名古屋銀行はこの不正を受け、全店舗を調査していましたが、調査の結果、ほかに同様の不正はなかったとしており、元行員についてはすでに処分を行い退職していると発表されています。
相次ぐコロナ支援策を利用した不正
今回の不正に限らず、コロナ支援策として打ち出された国の補助金や助成金を不正利用した事案は後を絶ちません。2022年7月12日には、中日信用金庫が、「一部職員が本来、ゼロゼロ融資(コロナ禍で売上減少した中小企業を対象に、緊急的に実施した実質無利子・無担保の融資)の対象とはならない企業に対し、適用対象となるよう売り上げを改竄して申請していた」旨、発表しています。
その他にも、大規模な支援策である持続化給付金の不正受給者は数多く存在し、経済産業省・中小企業庁ではホームページ上で持続化給付金の不正受給者の認定と公表を行っています。持続可能給付金の不正受給金額は、7月21日時点で総額13億8,198万8,130円とされています。また、経済産業省では、家賃支援給付金、一時支援金及び月次支援金の不正受給案件等の調査も行っており、給付要件を満たさないにも関わらず、誤って申請を行い、受給してしまった場合などについて、自主的な返還を受け付けています。
コメント
名古屋銀行では、今回の不正行為について、監督官庁である東海財務局へ報告を行っており、さらに捜査機関へ通報も行っているとしています。また、他に同様の事案が無いことを全店調査により確認済みとしており、今後の不正発覚の可能性は低いと言えるでしょう。
今回の事件は一見、コロナ禍という限定的な状況下で起きた特殊な不正に見えます。名古屋銀行側は、事件の詳細な背景について公表していませんが、業界全体として、“過度な貸出金のノルマ”が職員のプレッシャーとなり、「将来的な貸出拡大に繋がれば」という気持ちで不正に手を染めるケースが少なくないと言われています。
現場担当者へのプレッシャーが厳しい企業の法務においては、自社の現場担当者がどれほどのノルマを課され、それがどれほどの負担に感じられているのかを把握し、アラートを働かせることが重要になりそうです。
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