日立に改善命令、外国人技能実習制度について
2019/09/10   労務法務, 労働法全般

はじめに

 厚生労働省と出入国在留管理庁は6日、日立製作所が行っていた外国人技能実習に対し技能実習法に基づき改善命令を出していたことがわかりました。実習計画と異なる業務に従事させていたとのことです。今回は外国人技能実習制度について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、日立製作所は笠戸事業者(山口県下松市)で外国人技能実習生約40人を受け入れていたとされます。そこでは配電盤や制御盤などの電気機器を組み立てる技術を習得する計画であったにも関わらず実際には窓枠運搬などの作業に従事させていたとのことです。厚労省と出入国在留管理庁はこれを受け、日立製作所に対し改善命令を出しました。また日立に実習生を紹介した「協同組合フレンドニッポン」も調査に当たっているとされます。

外国人技能実習制度とは

 外国人技能実習制度とは、開発途上国等の経済発展に協力することを目的として日本企業が外国人を実習生として受け入れ、業務に従事しながら技能の習得を目指すことができるという制度です。外国人実習生は雇用関係のもと賃金を得ながら高い技術を習得でき、また日本企業にとっても労働人口の不足を補い事業を活性化するといったメリットがあります。しかし反面、劣悪な労働環境のなかで予定とは違った単純業務に従事させられているといった違反事例も多発しているという弊害が指摘されてきました。それを受け平成29年11月1日から抜本的な制度改革が図られております。

技能実習生の受け入れ手続き

 技能実習生の受け入れは、受け入れ企業が直接外国から受け入れる場合と、管理団体を介して受け入れる場合に分けられますが基本的に手続きは同じです。まず①技能実習計画を作成し、認定申請することになります(8条1項)。ここでは実習生の本国では習得が困難が技術であることや技能検定への受験、実際の実施業務内容などが審査されます(9条)。そして②主務大臣による認定がおりたら、次に③在留資格認定の申請を行います。法務大臣により認定証明書の交付を受け、④技能実習生の受け入れとなります。

不正行為に対する手続き

 従来実習生からの相談や労基署などからの通報により法令違反等の疑いが生じた場合は実態調査を行った上で受け入れの停止や改善指導、注意喚起などを行ってきました。これに対し現行制度では定期的に実地検査を行い、認定基準違反や法令違反等が認められた場合には許可・認定の取消(16条1項、37条1項)、業務停止命令(37条3項)、改善命令(15条1項、36条1項)などが出され、またこれらの命令に違反した場合には罰則も規定されております。

罰則の整備

 また上記行政処分のほか、暴行、脅迫、監禁その他自由を不当に拘束する手段によって技能実習を強制した場合には1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金(46条、労基法5条)、違約金を定める行為、貯蓄を管理する契約、旅券等を管理する契約、私生活の自由を不当に制限する行為に対しては6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となっております(47条~49条 労基法16条、18条1項)。

コメント

 本件で日立製作所が認定を受けた技能実習計画では配電盤や制御盤などの組み立て技術を習得することとなっておりました。しかし実際には窓枠運搬などの作業をさせられていたとされており技能実習法に基づいて改善命令が出されております。以上のように現在の技能実習制度は従来の制度に比べ厳格な法規制がなされており罰則もかなり重いものとなっております。「実習生」と呼ばれてはいますが日本人の労働者と同様の待遇が必要とされております。習得させるべき技能も単純作業の反復で得られるようなものは不可とされております。外国人実習生の受け入れを検討している場合には、安価な労働力の補充とは考えずに技能実習法の制度趣旨に沿った運用を考えていくことが重要と言えるでしょう。

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