佐野SAで一部営業休止、ストライキの要件について
2019/08/27 労務法務, 労働法全般

はじめに
東北自動車道佐野サービスエリア(SA)で14日から続いている従業員によるストライキが現在も継続しています。店舗の一部は16日から営業が再開しています。今回は労働組合法に規定されるストライキの要件について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、東北自動車道上り線の佐野SAで委託先運営会社「ケイセイ・フーズ」の従業員が14日からストライキに突入し、売店とフードコートの営業が休止しました。従業員側の主張によりますと、一部管理職によるパワハラや経費使い込み、エアコンの未設置、従業員の不当解雇などがあり、経営陣の経営方針に賛同できないとしています。佐野SAでは売店とフードコートは一部営業を再開しているとのことです。
労働者とストライキ
憲法28条では労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権が保障されております。それを受け労働組合法では正当なストライキが行われた場合、それによる刑事的、民事的な責任は免除されるとしています(1条2項、8条)。つまりストライキによって業務が滞り、会社に損害が発生しても会社側は労働者にその損害の賠償を請求できないということです。ただしストライキ中は労働を行っていないことは事実であることから、正規の労働時間に対する賃金は支払う必要はないことになります。
ストライキの正当性基準
(1)主体
一般にストライキが正当であるかの判断基準は主体、目的、手続き、態様で判断すると言われております。ここでまずストライキの主体は労働組合またはそれに準ずる労働者の団体である必要があります。つまり労働組合などの全体としての意思で行わなくてはならず、一部の労働者だけの判断で行った場合は正当なものではなくなってしまうということです。
(2)目的
ストライキの目的はあくまで労働組合の目的に沿うものでなくてはなりません。賃金や労働条件、福利厚生など労働者としての待遇の改善が目的でなくてはならず、たとえば政治目的や政府の措置に対する主張を目的としたものは正当性がないこととなります。
(3)手続き
一般的にストライキは争議行為の中でも最終的な手段とされており、まずは会社側と団体交渉を行う必要があります。その上で予告を行いストライキに入る必要があると言われております。これらを経ずにストライキを行った場合は正当性が否定される可能性が高くなると言えます。なお医療機関や介護施設などでは職務の性質上、少なくとも10日前までに労働委員会や都道府県知事への通知が義務付けられます(労働関係調整法37条)。
(4)態様
ストライキはその態様も正当でなくてはならないとされております。労働組合法1条2項ただし書では「いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない」とされており不穏当な態様・手段は不当となります。また会社の許諾のない職場占拠やバス会社、タクシー会社などでのエンジンキーの占拠などは裁判所も正当性を否定する傾向にあると言えます。
コメント
本件では詳細は不明ですが従業員側の主張によりますとケイセイ・フーズの労働組合として経営陣に待遇改善などを求める要望書を提出し、要求が通らなければストライキに突入する旨も記載されていたとされます。労働組合の意思として待遇改善を目的に行われ、予告もあることから正当なストライキと判断される可能性はあると言えますが、正当性は個別の事案に沿って総合的に判断されることから現時点では判断は難しいと思われます。以上のようにストライキが労働者の正当な争議行為として認められためにはいくつかの基準があります。正当でないストライキの場合は法的責任も生じてきます。労働組合内部の規約や予告など手続きが守られているか、目的が政治目的になっていないかなどの点に注意しながら、誠実に交渉を行っていくことが重要と言えるでしょう。
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