フロンティア・マネジメントが決定、株式分割について
2019/08/20   戦略法務, 民法・商法

はじめに

 フロンティア・マネジメントは14日、株式分割とそれにともなう発行可能株式総数の変更を行う旨発表しました。既存の株式1株を2株に分割するとのことです。今回は会社法が定める株式分割の手続きとメリットについて見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、経営コンサルティングなどを手掛けるフロンティア・マネジメントは14日の取締役会で株式分割とそれにともなう定款変更を行う決定をしました。基準日は9月30日で効力発生日は翌10月1日、既存の株式1株が2株に分割されるとのことです。またこれにともない定款で定められている発行可能株式総数11,412,000株も同じ比率で増加し22,824,000株となります。

株式分割とは

 株式分割とは発行済株式を細分化して増加させることを言います。発行済の株式が一律に増加することから自社が保有する自己株式も同じように増加することとなります。株式は増加しますが資本金に変化が生じないのがポイントです。また種類株式発行会社の場合は特定の種類株式のみ分割することも、種類ごとに分割比率を変えて分割することも可能です。また本来であれば株主総会の特別決議を要する発行可能株式総数を変更する定款変更も株式分割の分割割合に応じて増加させる場合には株主総会決議を要しないという便宜が図られております(会社法184条2項)。

株式分割の手続き

 株式分割を行うにはまず取締役会(非設置会社の場合は株主総会)で以下の事項を決議する必要があります(183条2項)。
①発行済株式数に対する分割割合
②分割の基準日
③効力発生日
④種類株式発行会社である場合は分割する株式の種類
次に基準日の2週間前までに基準日と株式分割について公告することとなります(124条3項)。なお現に2種類以上の種類株式を発行している場合は上記決議は取締役会ではなく株主総会の特別決議が必要となってきます(184条2項)。また優先株を分割するなどある種類の株主に損害を及ぼすおそれがある場合にはその種類株主総会決議も必要となってきます(322条1項2号)。そして効力発生日後、株券発行会社は遅滞なく増加した分の株券を発行します(215条3項)。分割の割合によっては端数が生じることもあります。その場合には端数の合計を売却し代金を株主に交付します(234条、235条)。

株式無償割当て

 株式分割と似たような制度として株式の無償割当があります。既存の株主に新たに払込みをさせることなく株式を割当て株式数を増加させるというものです。株式分割と同様に取締役会で決定できますが(186条1項)、株式分割と違い株主の保有する株式とは異なる株式を割り当てることもできます。また必ずしも基準日を定める必要はなく、新たに株式を発行する代わりに自社の保有する自己株式を株主に交付することもできます。反面自社(自己株式)には新たに割り当てることはできず、自社保有分は増加しないという特徴があります。

コメント

 本件でフロンティア・マネジメントは株式分割の目的を投資単価を引き下げて株式の流動性を高め、投資家層の拡大を図ることとしています。自社の株価が高くなりすぎて零細な投資家が保有できず株式取引が停滞している場合に株式分割を行うことによって株式の価値を保ったまま株式数を細分化し1株あたりの価格を下げて流動性を高めることができます。既存の株主にとっても株式を売却しやすくなり、これまで参入してこなかった層の投資家が新たに加わる可能性が出てきます。また配当金額をそのままにした場合は株式が増加した分、株主への配当も上がり株主への還元にもなると言えます。反面株式分割により株主が増加すればそれだけ株主の管理コストも増加することとなります。どのような制度にもメリットがあればデメリットも存在します。それらを踏まえて自社の現状にあった制度を選択していくことが重要と言えるでしょう。
 

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