繰越欠損金制度の見直しへ
2014/04/01 税務法務, 租税法, 税法, その他
事案の概要
政府税制調査会は31日、企業の税務上の赤字(欠損金)を翌期以降の黒字(課税所得)から差し引くことができる繰越欠損金制度を見直し、欠損金を繰り越せる期間を延長し、その代わりとして控除額を縮小することを検討している。
現行では、各事業年度開始の日から過去9年にわたる赤字を繰り越すことができるようになっている。過去の赤字を繰り越すことで、当該事業年度の黒字と相殺し、税負担を軽くすることができる。
もっとも、繰り越した赤字と黒字を相殺できる金額は、その事業年度の控除前所得の金額の80%を限度額とする制限があり、繰越欠損金を控除した場合でも所得の20%に対しては法人税が課税される。
なお、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち100%子法人等を除く法人については、控除限度額の制限は適用されないこととなっている。
コメント
今回の繰越欠損金の制度の見直しの背景には、法人税の引き下げがあるといわれている。
現在の日本の実効税率は約35%となっており他国と比べて高いと言われている。近隣諸国をみても、中国25%、韓国24.20%、ベトナム25%、シンガポール17%と日本よりも低い。そこで法人税の引き下げを行うことで、企業の負担を軽くし、日本企業の国際競争力を強化、海外からの企業誘致を望む狙いがあると考えられる。
もっとも、実効税率を1%下げると約4700億円の税収減が生じるといわれており、国の財政面から考えると、減収分を穴埋めする財源が必要となる。そこで、繰越欠損金の制度を変更することで、穴埋財源を確保しようとするものと思われる。
現在、この繰越欠損金の制度は約7割の法人が利用しており、恣意的に欠損金を生じさせて法人税の負担を軽減ないし回避している法人もかなり存在していると考えられる。そのような法人に対して課税できるという点においては、税負担の公平、財政健全化という見地から妥当であると考えられる。
ただ、主要国の中でも厳しいとされている日本の繰越欠損金制度をさらに厳格にすることは、企業の競争力をそぐ結果にもなりうる。
企業の国際競争力の強化、海外企業の誘致と財政健全化とのバランスをいかにとっていくかが重要となりそうだ。
関連コンテンツ
新着情報
- ニュース
- 今年秋施行予定、フリーランス新法とは2024.4.24
- NEW
- 個人事業主などを保護する「フリーランス新法」が今年秋に施行される見通しです。下請法と異なり全...
- 解説動画
- 奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
- 登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
- 潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分
- 弁護士
- 淺田 祐実弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- まとめ
- 中国:AI生成画像の著作権侵害を認めた初の判決~その概要と文化庁「考え方」との比較~2024.4.3
- 「生成AIにより他人著作物の類似物が生成された場合に著作権侵害が認められるか」。この問題に関し...
- セミナー
- 白井 薫平(Prighter Group)
- 阿久津 透 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/東京弁護士会所属)
- 【オンライン】データ保護規制のポイント比較:EUのGDPRとこれからの日本の個人情報保護法
- 2024/05/15
- 17:00~18:00
- 業務効率化
- LAWGUE公式資料ダウンロード
- 業務効率化
- Lecheck公式資料ダウンロード
- 解説動画
- 岡 伸夫弁護士
- 【無料】監査等委員会設置会社への移行手続きの検討 (最近の法令・他社動向等を踏まえて)
- 終了
- 視聴時間57分
- 弁護士
- 並木 亜沙子弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階