神戸製鋼子会社が認証取消し、JIS認証について
2017/10/27 コンプライアンス

はじめに
神戸製鋼所は26日、一連のデータ改ざん問題で、子会社の工場が一部製品についてJIS認証を取り消された旨発表しました。鉱工業製品等の製造、品質管理体制についての標準規格であるJIS。今回は日本工業規格の認証について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、神戸製鋼所は一連のデータ改ざん問題で製品の納入先での安全性を確認し、その8割で問題が無いとしていましたが、鋳物や減速機などで新たに4件の不正事案が発覚しました。不正の疑いが見つかったのは本社の機械事業部門が手がける塗膜処理サービス、神鋼造機の鋳物と減速機、コベルコ科研の試作合金で製品の仕様を満たすよう検査データを改ざんしていたとされます。これにともない民間の認証機関が調査を行ない、神戸製鋼所の子会社であるコベルコマテリアル銅管の秦野工場(神奈川)のJIS認証が取り消されました。これにより同工場はJISマークの使用ができなくなります。経産省は認証機関に対し、神戸製鋼グループの全20工場と事業所の再審査を指示しているとのことです。
日本工業規格とは
日本工業規格とは、工業標準化法に基づいて鉱工業製品などの生産方法、形式、品質管理などについて主務大臣が制定し標準化された統一規格を言います。一般的にJIS(Japanese Industrial Standards)と呼ばれ登録を受けた民間認証機関により審査され、適合する場合には認証を受け、製品等にJISマークを付けることができます。規格として標準化される事項は、鉱工業製品等の種類、型式、形状、寸法、構造、品質、安全度、設計方法、製図方法、包装の種類、形状、寸法、試験、分析、鑑定、測定方法、技術に関する記号、略語などが挙げられます(2条)。そして標準化される分野としては土木建築、一般機械、電子機器、自動車、鉄道、船舶、鉄鋼、非鉄金属、化学、繊維、日用品等があります。
工業標準化法による規制
鉱工業品を製造し、または輸入、加工する業者は登録を受けた民間認証機関の審査、認証を受けることによって、その製品、包装、容器、送り状などにJISマークを添付することができます(19条1項、2項、3項)。それ以外の場合、つまり認証を受けていない場合にはJISマークやそれと紛らわしい表示をすることは禁止されます(同4項)。認証を受けていても、主務大臣が必要と認めるときは業者に報告させ、または立入検査、品質管理体制についての検査をさせることができます(20条1項、2項)。その結果、不適合と認めた場合にはJISマークの除去、抹消、製品の販売停止を命じることができます(22条)。これらの命令に違反した場合や、認証を受けずに表示していた場合には罰則として1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることになります(70条1号、2号)。また法人に対しても同様の罰金刑が科されます(73条)。
不服申立て
民間認証機関の審査結果や認証取消し処分に対し不服がある場合には当該認証機関に対し異議申立てを行うことができます。申立期間は認証機関によって異なり、15日~45日程度となっております。民間認証機関の決定・処分に関する不服については行政府服審査法に基づいて国や上級行政庁に対し不服申立てを行うことはできません。
コメント
本件でコベルコマテリアルは民間認証機関の調査により基準不適合として認証が取り消されました。それを受け経産省も他の工場について検査することを命じました。これにより今後さらに認証取消がなされる可能性が出てきたと言えます。JIS規格は日本における工業製品の性能や品質管理を統一化し、製品の信頼性を向上させて流通促進を図る効果があります。JIS認証を受けるかどうかはあくまで事業者の自由であり、認証を受けていなければ製造販売できないというわけではありません。しかし工業標準化法67条は国や自治体が鉱工業製品の買い入れに際して仕様を定めるときはJIS規格を尊重しなければならないとしており、納入する側にとってもJIS認証は重要な意味を持ってくるものと言えます。また民間での取引においてもJIS認証を受けた製品であるということは、製品としての性能や品質に関して一定の信頼が担保されるものであり、JIS登録認証機関協議会のアンケートでも8割の事業者が対外的な信用度が向上したと回答しているようです。逆に認証が取り消されば場合の信用度の喪失も同様に大きいものと言えます。神戸製鋼グループは一連の不正に加え、JIS認証取消しにより信用失墜は免れないものとなります。JIS認証を取得している場合には認証基準を維持するよう今一度見直すことが重要と言えるでしょう。
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