契約電子化のメリット・デメリットについて

1 はじめに

 電子契約サービスの「ホームズ」を運営するリグシーは米最大手のドキュサインと提携し、海外企業に契約の締結依頼を配信できる国際サービスを開始します。契約をweb上で行うサービスは様々登場していますが、「紙に印鑑」の文化が根付く日本企業にとっては、電子契約への移行は心理的なハードルが高く、普及には至っていないというのが現状です。そこで本稿は、契約に携わる法務部員の皆様において、電子契約を導入するか否かを考える際の指標となるべく、契約電子化のメリットとデメリットをお伝えしようと思います。

●THE BRIDGE―法務系クラウドAIサービス「Holmes(ホームズ)」提供のリグシー、500 Startups Japanから数千万円を調達

2 契約電子化のメリット

①費用節約
 多くの企業で、契約を締結した場合、契約は契約書という形にまとめられ、2通作成されて相互に保有することになるかと思います。契約書の送付には最低でも数百円の郵便代がかかり、簡易書留や内容証明などのサービスを用いる場合、さらに費用がかかります。1回の郵送には数百円程度の費用しかかからなくても、長期的に見ると、多大な費用となってしまいます。電子契約にした場合、郵便代がかかりません。
 契約を契約書としてまとめた場合、印紙税を納入し、印紙を貼付する必要があります。企業間での契約は経済的利益があるものと推定されています。税金を払うことで、法的な問題が起きた際には国が用意した裁判などの制度を利用し、国に対処してもらうという趣旨のものであるようです。印紙が必要な契約書は国税庁発行の「印紙税額の一覧表」に載っており、不動産売買契約書は1号文書、継続的取引に関する契約書は7号文書等と決まっています。契約の類型によって印紙代は変わってきますが、1号文書の場合200円から60万円まで、7号文書は一律4000円となっています。取引額によって印紙税は上がっていくため、企業にとっては一定程度の負担になるかと思います。印紙税法上、電子契約書の送付は課税対象の文書を交付したという扱いにならないため、印紙代を節約することができます。

●MAG BOXIL―契約書|印紙の必要性とは?印紙税一覧・コストカット方法を紹介

●国税庁HPー請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について

②保存・検索の簡易化、業務の効率化
 紙媒体で保存する場合、保存のためのバインダーファイルを用意し、ファイルの保管場所を決めておく必要があります。そこにはファイル代・場所等決定の時間等のコストがかかります。また、以前締結した契約を確認したい場合、どのファイルに入れているのかを思い出し、契約書を探し出すということが必要になります。電子契約にした場合、保存のためのスペースが空き、関連語句で検索することで、目当ての契約書をすぐに探し出すことができます。
 契約書を探す時間を短縮できれば、業務をより効率的に進めていくことができるかと思います。以前他社と締結した契約と同種の契約を他社と締結する必要が出てきた場合、以前の契約書を検索することで雛形として利用でき、業務の時短につながります。契約書審査の状況や先方とのやり取りについても保管できるため、当時の担当者にヒアリングをする必要もなくなり、よりスムーズに業務を遂行できると考えられます。

3 電子契約化のデメリット

①心理的な抵抗感・説明の手間
 日本には「契約は契約書に印鑑を押して成立する」という観念が強く残っているため、契約電子化への移行に心理的な抵抗感があるということもありえます。電子契約に移行するためにはまず経営陣に対する説得が必要です。会社としては、いざ訴訟になった際、契約書を証拠として用いることができるかどうかに最大の関心があることかと思います。この点につき、電子署名法3条には「…本人による電子署名…がおこなわれているときは、真正に成立したものと推定する」という規定があります。電子契約書にも証拠能力があることを説明すると、納得が得やすくなるかもしれません。
 契約は相手方があってのことなので、相手方の了承も得る必要があります。この点についても、契約時に相手方の法務担当者に確認しておくと良いでしょう。

●NS Solutions―電子署名の証拠力

②導入までの手間
 契約を電子化する場合、押印に代わるものとして電子証明書を取得する必要があります。電子証明書を取得するためには認証局に問い合わせ、所定のソフトを使って必要事項を記入するという手間が発生します。

●e-gov電子政府の総合窓口ー電子証明書の取得

4 今後の実務について

 契約の電子化にはメリットとデメリットがあります。どちらの影響が大きいかを法務部内で検討をし、導入するか否かを決定します。最初から最後まで自社で行うこともできますが、契約電子化を手伝う企業やサービスを利用するのも1つの手段です。企業・サービスにも様々なものがあるので、それぞれの内容・メリット・デメリットを比較し、自社の希望に合うものを選ぶと良いでしょう。

【その他参考サイト】
文書管理お役立ちブログー電子契約とは?4つのメリットを解説
            電子契約のデメリットはあるのか

電子契約のすすめ 徹底比較ガイドサイト―電子契約のメリット・デメリット

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[著者情報] arai

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このニュースに関連するセミナー

法務NAVIまとめ 契約法務 民法・商法
第104回MSサロン(名古屋会場)
2018年11月07日(水)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
今回のセミナー内容は、「国際取引契約の実務入門~英文契約を取り扱う際に最低限知っておくべきこと~」です。
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法務NAVIまとめ 契約法務 民法・商法
《東京開催》少人数法務の為の企業法務研究会
2018年10月19日(金)
19:30 ~ 20:30
無料
東京都渋谷区
講師情報
舩山 達
株式会社フルスピード(東証二部上場)
法務・総務部 部長
慶応義塾大学法学部法律学科卒
大阪市立大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了
従業員5人のベンチャー企業に就職。2回の転職を経て現職。
少人数やノウハウの蓄積のないために業務の進め方に不安を持っている法務担当者のための意見交換会です。
今回のテーマは「契約書管理」です。
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法務NAVIまとめ 契約法務 民法・商法
【名古屋開催】自動運転技術に関する法律問題《ITビジネス法務勉強会:第6回》
2018年11月22日(木)
15:00 ~ 17:00
3,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介 杉谷 聡
■和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー

■杉谷 聡
略歴:
愛知県一宮市出身
愛知県立一宮高等学校卒業
2016年 一橋大学法学部卒業
2017年 弁護士登録(70期 愛知県弁護士会)
オリンピア法律事務所入所
ITに関する法律を学び、ビジネスに活かしていただくためのITビジネス法務セミナーです。第6回目のテーマは自動運転技術に関する法律問題です。
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法務NAVIまとめ 契約法務 民法・商法
《東京開催》GDPR対応の実務 日本企業にとってのFAQと優先順位
2018年11月16日(金)
09:45 ~ 11:45
17,000円(税別)
東京都港区
講師情報
石川 智也
西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
2017年米国ニューヨーク州弁護士登録

日本における知的財産法、営業秘密保護、個人情報保護法のほか、
EUにおける知的財産制度・競争法、EUデータ保護規則をはじめとする
グローバルベースでのデータ規制についても詳しい。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
本講演では、多くの日本企業のGDPR対応をサポートしてきた講師が、その過程でよく質問を受ける事項を解説するとともに、
作業の優先順位を明確にして、日本企業がどのようにGDPR対応を行い、今後どのようにGDPRコンプライアンスを維持していくべきかについて解説いたします。

解説に際しては、欧州データ保護評議会(EDPB)が公表・承認しているガイドラインの内容を踏まえることはもちろんのこと、各国の監督当局が公表している情報・オピニオンや、
GDPR施行後の当局の執行状況を含め、現地の最新動向について、お話ししいたします。

また近時、M&Aのデューディリジェンスの過程で買収する会社のGDPRコンプライアンスが問題になることがしばしばありますので、その際のチェックポイントについても触れたいと思います。
申込・詳細はコチラ
法務NAVIまとめ 契約法務 民法・商法
《東京開催》企業におけるAI活用と個人情報保護・プライバシーの留意点
2018年11月07日(水)
14:00 ~ 16:30
18,000円(税別)
東京都港区
講師情報
野呂悠登
TMI総合法律事務所 弁護士

東北大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了

平成27年改正個人情報保護法の全面施行前後に、
個人情報保護委員会事務局において、
法令関係とデータの利活用関係を担当

近時の著書等には『個人情報管理ハンドブック[第4版]』(商事法務、2018)、
「AIによる個人情報の取扱いの留意点」(Business Law Journal、2018年6月号)、
「ビッグデータ・個人情報の利活用と先端ビジネス」(Business Law Journal、2018年8月号付録〔LAWYERS GUIDE〕)等がある。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
最近、AI関連技術の発展等により、AIの活用に対する期待が高まっており、ビジネスにおいて実際にAIの活用を始める企業が増えてきています。

AIを活用する場合、従来人間の脳が行っていた知的な作業をコンピュータに行ってもらうことになるため、従来想定されなかった様々な法的問題点が生じることが想定されます。
特に、機械学習を用いたAIを用いる際には、従来とは異なる方法で大量の情報を集積し又は処理を行うため、個人情報保護法やプライバシー権との関係が問題となりやすいと考えられています。

本セミナーでは、平成27年の個人情報保護法の全面施行前後において、同法を所管する個人情報保護委員会にて法令の担当者を務めた講師により、
AIを活用することを検討している企業の担当者向けに、企業におけるAI活用と個人情報保護・プライバシーの留意点を具体的な事例を基に解説します。
申込・詳細はコチラ
法務NAVIまとめ 契約法務 民法・商法
《東京開催》海外企業との販売店契約/ディストリビューション契約 -豊富な実例に基づく、各条項の検証-
2018年11月06日(火)
09:30 ~ 11:45
17,000円(税別)
東京都港区
講師情報
豊島 真
小島国際法律事務所
パートナー 日本及びカリフォルニア州弁護士

東京大学法学部卒
1999年弁護士登録(第二東京弁護士会)
カリフォルニア大学デービス校ロースクール修士課程卒(LL.M.)
国内外の販売店契約に関する取扱い案件多数
著作に「販売店契約の実務」(中央経済社・共著・編集担当)

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
販売店契約(ディストリビューション契約)は、サプライヤーの商品を、販売店(ディストリビューター)の販売チャネルを通じて販売するための契約です。
本セミナーではかかる販売店契約を取り扱いますが、その意義・目的は以下のとおりです。

①実際の事例の紹介を多く行います。よく見かける契約書の条項の一言一句の大切さは、実際に問題が起こってから初めて思い知らされることが多いものです。
実際に起こった問題に触れながら、これまで見過ごしていたかもしれない各条項の重要性について見ていきます。

②販売店契約は、企業間取引で最も頻繁に使われる契約の1つであり、英文契約の入門科目として最適と言えます。

これから英文契約について本格的に学びたいという方にも役立ちます。
(参考資料として、英文販売店契約のひな型をお配りします。)
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