【特集】第3回 取締役の説明義務

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第1 はじめに

 こんにちは。企業法務ナビの企画編集部です。今回も前回に引続き、特集記事「株主総会における企業の対応」をお送りします。折り返し地点となる今回は「取締役の説明義務」について、見ていきたいと思います。会社法314条本文では、取締役は、株主総会において、株主から特定事項について説明を求められた場合、当該事項について必要な説明をなすべき義務を負うと規定されています。株主は、株主総会という会議体の構成員として質問し意見を述べる権利を有しておりますので、取締役は株主の質問に対して説明をする義務があります。また、株主総会において質疑応答や意見交換が活発に行われるようにするためにも、株主の質問に対して取締役が説明する義務があり、会社法314条はそれを明文化した規定ということができます。

第2 説明義務の対象

 取締役の説明義務の対象は、株主に説明を求められた特定事項であるので、特定性に欠ける一般的事項は、説明義務の対象外となります。
では、どういう場合に特定性に欠けるとされるのか。この点について、株主の発言が単なる意見表明であったり、発言趣旨が不明確で質問の内容を理解できなかったり、一般的抽象的な質問であった場合、特定性に欠けるとされ、説明義務は生じません。 もっとも、このような不明確な質問がなされた場合でも、ただちに説明を拒否するのではなく、議長が株主の不明瞭な発言の真意を確認して、株主の質問を特定する努力をした上で回答者を指名して、質問に回答することが望ましいと考えられます。
株主総会での取締役や監査役などの説明義務の範囲は 

第3 拒絶事由(会社法314条但書)

1 概要
 取締役が株主総会で特定事項について説明を求められても、拒否することができる事由が会社法と会社法施行規則に規定されております。
➀株主総会の目的事項に関係しないもの
➁説明により、株主の共同の利益を著しく害する場合
➂「その他正当な理由」がある場合として法務省令(会社法施行規則71条)で定める場合

2 「正当な理由(➂)について」
 会社法施行規則71条では、取締役の説明義務の拒絶事由である「正当な理由」を、次の通りに具体化しています。
ア 株主が説明を求めた事項について説明するために調査が必要な場合 (ただし、株主総会において説明を求めた株主が株主総会日より相当期間前に当該事項を株式会社に対して通知した場合、又は、当該事項について説明をするために必要な調査が著しく容易である場合は除かれる)。
イ 説明により会社、その他の者の権利を侵害する場合
ウ 実質的に同一事項について繰り返し説明を求めている場合
エ 説明することができないことにつき正当な理由がある場合

第4 説明の程度

1 概要
 取締役の株主に対する説明の程度は、説明を求められた特定事項について「必要な範囲の説明」で足りる、とされております。
では、どこまでが必要な範囲の説明といえるのか。判例では、「株主の質問により取締役に説明義務が発生した場合、質問を行った当該株主を基準とするのではなく、 株主総会に出席した平均的な株主が議題を合理的に判断するのに、客観的に必要な範囲での説明をなすべき(東京スタイル事件、東京地判平成16年5月13日)」としております。

2 具体的な事例
 具体的な事例を以下に上げます。
 ➀「退任取締役に支給する退職慰労金について、具体的な金額、時期、方法を明示せずとも、取締役会、監査役に一任する決議をする際に一定の基準が存在すること、その基準が株主に容易に知りうること、及び、内容が支給額を一意的に算出できるものであることを説明する必要がある(東京地判昭和63月1月28日、奈良地判平成12年3月29日)」として、説明義務違反を認めたものがあります。
 ➁株主総会開催前に通知があった質問事項について、議案の審議に入る前に、すべて回答をするという方法がとられております。これについて判例は、「あらかじめ提出された質問状について改めて質問を待つことなく一括して回答することは、総会の運営方法の問題として会社に委ねられている所であり、直ちに違法とはならない(東京建物事件 東京高判昭和61年2月19日)」とされております。
Law Practise 商法 No25:取締役の説明義務

第5 まとめ

 株主総会における取締役の説明義務で注意しなければいけない点は、取締役等が説明義務を十分に尽くさなければ、その後、株主総会決議の日から3ヶ月以内に株主総会取消訴訟の対象になることです(831条1項1号)。大きな労力を費やして成立させた株主総会決議が将来取り消されてしまうリスクを生じさせてしまいます。
 説明義務が尽くされたか否かは、株主が株主総会の議題を合理的に判断するに十分であったかが重要となります。法務部担当者は、株主総会に先立ち、質問事項を担当する役員の方々と協働しながら、専門用語を使わないで説明する等、経営の専門家ではない者でもわかりやすい想定回答集を用意する必要があり、株主総会に向けた十分な対策をとらなければならないと思われます。
 次回は、「株主の議決権行使について」を特集記事としてお送りしたいと思います。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約2年5ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
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[著者情報] moriyama

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2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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