ストレスチェックの義務化に伴い、企業に求められる対応
2015/04/23 労務法務, 労働法全般, その他

2014年に成立した、改正労働安全衛生法に基づいて、本年12月から従業員50人以上の事業者に対して、従業員へのストレスチェックが義務化される。
ストレスチェック制度の概要
①ストレスチェックの実施
従業員数50人以上の事業者に義務付けられる。(従業員数50人未満の事業者に対しては、当面の間は努力義務)
検査の実施者は、医師または保健師のほか、厚生労働大臣が定める一定の研修を修了した看護師または精神保健福祉士。
検査を受ける労働者について、解雇などの直接的な人事権を持つ監督者は、検査の実施の事務に従事してはならないものとされている。
検査結果は実施者から直接本人に通知され、本人の同意がない限り、事業者に提供してはならない。事業者は、労働者の同意を得て、検査の結果を把握した場合、検査結果の記録を作成し、5年間保存しなければならない。
それ以外の場合は、事業者は、検査を行った実施者による検査結果の記録の作成、検査の実施の事務に従事した者による記録の保存が適切に行われるよう、必要な措置を講じなければならない。
また、ストレスチェックに用いる調査票は、事業者の判断により選択することができるが、標準的な「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)を用いることが望ましいとされている。
②面接指導の実施
検査結果の通知を受けた労働者のうち、「検査の結果、ストレスの程度が高い者」で、「検査を行った実施者が面接指導の実施が必要と認めた場合」には、実施者は対象者に面接指導の申し出を勧奨する。対象者から面接指導の申し出があった場合は、事業者から医師へ面接指導実施の依頼を行わなければならない。
また、事業者は、面接指導の結果の記録を作成し、これを5年間保存しなければならない。
③就業上の措置の実施
事業者は、面接指導の結果に基づき、医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは、就業上の措置を講じる義務がある。例えば、就業場所の変更、業務の転換、労働時間の短縮、深夜業務の回数低減措置など。
④労働者に対する不利益取扱いの禁止
ストレスチェックを受けないこと、結果の提供に同意しないこと、または面接指導の申し出を行わないことや、面接指導の結果を理由として、労働者の不利益取扱い(解雇、雇止め、退職勧奨、不当な配転・職位変更など)を行ってはならない。
義務化に伴い企業に求められる対応
厚生労働省の発表している、ストレスチェック制度の手順によれば、事業者は、衛生委員会等(事業の実施を統括管理する者、労働者、産業医及び衛生管理者等で構成される)において、ストレスチェック制度の実施方法等について調査審議を行い、その結果を踏まえ、実施方法等を規程として定め、これをあらかじめ労働者に対して周知するものとしている。
具体的には以下のような項目を反映させることになる。
①ストレスチェック制度目的の周知方法、②ストレスチェック制度の実施体制、③ストレスチェック制度の実施方法、⑤ストレスチェック受検の有無の情報の取扱い、⑥ストレスチェック結果の記録の保存方法、⑦ストレスチェックの結果等の利用目的、利用方法、⑧情報の取り扱いに関する苦情処理、⑨不利益取り扱いの防止
また、事業者によるストレスチェックが、法律上の義務とされたことにより、ストレスチェックの実施を怠った企業において、従業員によるストレスを基因とする事故が発生したり、自殺者がでた場合などには、従来よりも企業の安全配慮義務(労働契約法5条)違反が認められやすくなることも考えられる。
改正法には罰則規定はないものの、将来の訴訟リスクを考慮に入れれば、ストレスチェック制度を適切に構築し、運用していくことが企業には求められる。
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