国際自動車が最高裁で敗訴、残業代規制について

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はじめに

 タクシー大手「国際自動車(kmタクシー)」で採用されていた歩合給から残業代相当額を差し引く制度を巡る訴訟で3月30日、最高裁は労働基準法に違反するとの判断を示しました。未払い分の残業代を算定するため東京高裁に差し戻されるとのことです。今回は労働基準法の残業代規制について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、国際自動車では基本給や残業代のほかに売上高に応じた歩合給が支払われておりました。しかしこの歩合給を算定する際に残業代と同額を差し引かれる仕組みとなっていおり、残業が長くなればなるほど歩合給が減り、場合によっては歩合給がゼロになることもあったとされます。同社の従業員62名は未払い分の残業代を求め提訴しておりました。二審東京高裁は同社の給与体系を合法としておりました。

労基法による規制

 労基法37条によりますと、従業員に時間外労働や休日労働をさせた場合には割増賃金を支払わなくてはならないとされております。法定労働時間を超える分、深夜手当、休日手当など割増率が細かく規定されております。また基本給と割増賃金分に相当する部分は明確に区別できるようにしておく必要があるとされております(平成29年7月31日厚労省通達)。違反した場合には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される場合があります(119条1号)。以下割増賃金を具体的に見ていきます。

割増賃金

 ①まず1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える場合の残業代には基本給に1.25倍の割増率を掛けることとなります。②時間外労働が月60時間を超える場合、その超えている部分については1.5倍となります。③休日労働の場合は1.35倍となります。④22:00から5:00までの深夜労働の場合は0.25倍が加算されます。つまり時間外労働でありかつ深夜労働の場合は1.5倍となります。⑤休日労働かつ深夜労働の場合は1.6倍となります。

残業代に関する裁判例

 医療法人から年俸として給与を受け取っていた医師が割増賃金分の支払いを求めて提訴した事例で、法人側は割増賃金も年俸に含まれるとの合意があったとしましたが、最高裁は基本給と割増分が判別できず、このような合意は無効とし割増分の支払いを命じました(最判平成29年7月7日)。また本件と同様に歩合給の計算時に割増賃金分を控除するとしていたタクシー会社の事例で、このような給与体系は公序良俗に反するとして提訴されましたが、最高裁は歩合給から割増賃金を控除する運用が直ちに公序良俗に違反するとは言えないとした判例も存在します(最判平成29年2月28日)。

コメント

 本件で残業代分を歩合給算定で差し引く給与体系について最高裁は、「残業代を売上を得るための経費とみて、全額を乗務員に負担させているに等しいとし、残業代が多いと歩合給がゼロになることもあり労基法の本質から逸脱しているとしました。また通常の賃金と残業代分も明確に判別できないと指摘しました。歩合給を残業代で差し引いてしまう給与体系を明確に違法と判断したものと言えます。以上のように労基法や裁判例では残業や休日労働、深夜労働では割増賃金の支払いを求めており、また割増分と基本給とは明確に判別できる給与体系であることが求められております。それらの原則が守られている限りは基本的に給与体系の決定は会社側の自由とも言えます。割増賃金分を控除または差し引く給与体系を採用している場合は、これらの原則に抵触していないか今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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