最高裁が初判断、「正規非正規の格差問題」について

はじめに

物流大手「ハマキョウレックス」の契約社員の運転手が正社員との手当の格差が違法であるとして賠償等を求めていた訴訟で最高裁は1日、高裁判決に加え、新たに皆勤手当不支給についても違法と判断しました。正規非正規の格差問題に関する初の最高裁判決です。今回は以前にも取り上げた格差問題を最高裁判決を踏まえて見ていきます。

事案の概要

本件は物流大手「ハマキョウレックス」(浜松市)の有期契約社員である運転手が各種手当てについて正社員との間に大きな格差が生じていることは違法であるとして賠償等を求めたものです。同社では正社員に対し①無事故手当、②作業手当、③給食手当、④通勤手当、⑤住宅手当、⑤皆勤手当などが支給されておりますが契約社員には通勤手当以外は支給されていないとされます。その通勤手当も正社員は距離に応じて上限が5万円で最低額が5000円であるのに対し契約社員は上限が3000円と正社員の下限よりも低いものとなっております。

問題の所在

このような正規非正規の格差は労働契約法20条に関する問題です。同条では有期契約社員と期間の定めのない正社員との間に労働条件で差がある場合は、業務内容、業務に伴う責任の程度、職務内容、配置変更の範囲その他の事情を考慮して不合理なものであってはならないとしています。正規非正規で条件に格差を設けてはいけないというものではなく、いろいろな事情を考慮して不合理となってはいけないといういことです。具体的にどのような場合に違法な格差となるかは条文からは不明瞭で、これまでもこの問題に関する下級審裁判例は数多く出されてきましたが、判断枠組みや結論がかなり不統一で指針となりにくいものであり最高裁判断が待たれていました。

一審判決

本件一審判決では不合理な格差とは「労働者間の職務内容や職務内容・配置変更の範囲の異同にその他の事情を加えて考察し、当該企業の経営・人事制度上の施策として不合理なものと評価せざるを得ないものを意味する」との判断枠組みを示しました。その上で無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当等についての格差は違法ではないとし、通勤手当についてだけ不合理な格差としました。

二審判決

二審高裁判決は基本的に一審と同様の判断枠組みに立った上で、通勤手当だけでなく、無事故手当、作業手当、給食手当についても格差は不合理であると判断しました。また労働契約法20条違反が認められたとしてもその効果として労働条件が当然に正社員のものと同一になるといった効力は認められないとしました。

コメント

最高裁は高裁で認められた無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当に加えてさらに皆勤手当についても不支給は20条違反となるとしました。最高裁は一つ一つの手当の性質や趣旨を吟味し正社員のみに当てはまるか、両者にも当てはまるかで格差の合理性を判断しており、転勤転居が予定されている正社員のほうが住居確保の費用が高く、正社員のみに住宅手当を支給することは合理性があるとしました。しかし実際に出勤する運転手を一定数確保するという趣旨である皆勤手当については正社員だけに当てはまるものとは言えず合理性は無い判断しました。以上のように正規非正規の労働条件については法と最高裁は一定の格差の存在を是認するものの、それぞれの手当等の目的や趣旨などから正規労働者にのみ当てはまるといった正当化事情を求めていると言えます。非正規であるからと当然に手当や昇給賞与は不要であると考えずに、一つ一つの条件の違いについてなぜ正規職員にだけそれが必要であるか合理的な理由を用意しておくことが重要と言えるでしょう。

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2002年 第一東京弁護士会 登録替 長島大野常松法律事務所
2004年 外立総合法律事務所
2012年 株式会社カービュー コーポレートリーガルアドバイザー    
2016年 法務室長
2018年 AYM法律事務所開設

弁護士会活動(2018年2月現在)
日本弁護士連合会 ひまわりキャリアサポート 委員
第一東京弁護士会 業務改革委員会 委員 

企業法務を中心とした法律事務所に長年勤務した後、2012年からインターネット系企業の法務責任者としてプラットフォームを利用したメディア・コマースビジネスについてのさまざまな法律問題をサポート。
2018年にAYM法律事務所開設 代表弁護士

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中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
セジデム株式会社(仏系)コーポレートサービス部統括部長・法務部長兼任等、を歴任し、現職。
*企業名は当時のまま。
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