任天堂が「マリカー」を提訴、著作権侵害の要件について

はじめに

 ゲームキャラクター「マリオ」に扮して公道でカートを走らせていた行為が著作権侵害等に当たるとして任天堂が「マリカー」(東京都)に差止と損害賠償を求めていた訴訟で18日、第一回口頭弁論が東京地裁で開かれました。任天堂側は「マリオ」の姿で公道を走る画像を宣伝に使用しており著作権侵害に当たるとしています。今回は著作権侵害に該当するための要件について見ていきます。

事件の概要

 株式会社マリカーは公道で走ることができるゴーカート「マリカー」のレンタル業を展開しております。レンタルの際には任天堂のゲームキャラクターである「マリオ」等に扮する衣装を借りることができ、ゲーム「マリオカート」さながらの雰囲気で東京の公道を走ることができます。海外からの旅行客に人気で利用者の7割は外国人とのことです。同社は「マリカー」を商標登録するとともに社名にも使用しております。これに対し任天堂は「マリカー」はマリオカートの略称であり、社名に使用することは不正競争防止法違反に該当する。またマリオの姿で公道を走る画像を宣伝に使用することは著作権侵害に該当するとして差止及び1000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。

著作権侵害とは

 著作者が著作物を創作したときに、それについての著作権が自動的に発生します(著作権法17条2項)。著作者はその著作物を公表するか否か、どのように公表するかを決める公表権、公表する際に著作者名を表示するかどうかを決める氏名表示権、著作物の内容を変更させない権利である同一性保持権といった著作人格権を有します(18条~20条)。そして著作権の内容として複製権、上演権、上映権、公衆送信権、頒布権、二次的著作物利用券等の権利を持つことになります(21条~28条)。これらを侵害された場合、差止請求(112条1項)、損害賠償請求(114条、民法709条)を請求することができ、また罰則として10年以下の懲役、1000万円以下の罰金または併科が規定されております(119条)。著作権侵害が生じるためには著作物性、著作権者、依拠性、類似性の4要件を満たす必要があります。

著作権侵害の要件

(1)著作物性
 まず大前提として著作権法上の著作物に該当する必要があります。2条1項1号では「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術又は音楽の範囲に属するもの」とされており思想、感情の表現物である必要があります。それらを満たさない場合は意匠や特許の分野に入る場合があります。

(2)著作権者
 上記著作物に該当しても、著作権侵害を主張するためには当該著作物の著作権者である必要があります。また日本の著作権法で保護されるためには①日本国民を著作者とるすもの、②最初に日本国内で発行された著作物(外国で既に発行されている場合は30日以内に日本で発行されたものに限る)、③条約により定められたもののいずれかである必要があります(6条)。

(3)依拠性
 依拠性とは既存の他人の著作物を利用していることを言います。たまたま偶然に自己の創作物が他人の著作物と一致してしまってもそれは著作権侵害には該当しないということです。この点につき判例も「既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは・・・著作権侵害の問題を生ずる余地はない」とし「既存の著作物に接する機会がなく、知らなかった者は」偶然同一のものを創作しても侵害には当たらないとしています(最判昭和53年9月7日)。

(4)類似性
 既存の著作物と新たに創作したものが類似している必要があります。他人の著作物に依拠していたとしても類似性が無い場合は著作権侵害には当たりません。この点につき判例は「他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴をそれ自体として直接感得させ」る場合に類似性が認められるとしています(最判昭和55年3月28日)。つまり通常人が本質的な特徴を感じ取ることができないほどの独自性がある場合には類似性は否定されるということです。

コメント

 本件で任天堂のゲームキャラクターである「マリオ」の「本質的な特徴」は青いオーバーオールに赤いシャツ、Mの文字が入った赤い帽子を被り、口ひげをたくわえた青い目の人物です。そして同様にMの文字が入った赤いカートに乗っております。「マリカー」が宣伝に使用している画像と比べますと、たしかに同様の衣装を着てカートに乗っている姿は通常人から見たら任天堂のマリオ及びマリオカートを想起することができると言えるでしょう。しかし類似性が問題となった他の事例の裁判例からすると、「本質的な特徴」が思想、感情の創作的表現として一致している必要があり、同社の宣伝用画像は創作というよりは、マリオの格好をしてカートを楽しむ人の図を表しているにすぎないと見る向きもあります。したがって著作権侵害には当たらないと判断される可能性もあると言えます。しかし別途不正競争防止法違反に関しては、マリオの著名性を利用しているとされる余地があることから、認められる可能性は相応にあると思われます。以上のように著作権侵害では依拠性と類似性がもっとも重要な要件となります。著作権侵害を受けた場合には本質的な特徴がどのように一致しているかにも注意が必要と言えるでしょう。

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講師情報
登島 和弘
インヴェンティヴ・ヘルス・ジャパン合同会社 アジア太平洋地域法務責任者
1961年神戸市生まれ
中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、
日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
セジデム株式会社(仏系)コーポレートサービス部統括部長・法務部長兼任等、
を歴任し、現職。
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2017年08月23日(水)
19:00 ~ 22:00
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講師情報
登島 和弘
インヴェンティヴ・ヘルス・ジャパン合同会社 アジア太平洋地域法務責任者
1961年神戸市生まれ
中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、
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企業 法務ニュース 知的財産権 訴訟・行政 知財ライセンス 著作権法
【入門】国際取引における契約締結権限・契約審査基準
2017年03月15日(水)
19:00 ~ 22:00
25,000円(税込) ※平成29年2月15日開催のLBS体験講座に参加された方は10,000円減算した金額とさせていただきます。 なお、単回申込みを複数回される場合は、上記減算は初回分のみ適用となりますのでご了承ください。
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登島 和弘
インヴェンティヴ・ヘルス・ジャパン合同会社 アジア太平洋地域法務責任者
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中央大学法学部法律学科卒
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※ こちらで事前課題を用意し、受講前にケース理解を深めていただきます。
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和田圭介
愛知県春日井市出身
京都大学法学部・Duke大学LLM卒業。
2005年弁護士登録。
2013年ニューヨーク州弁護士登録。
世界最大規模の国際法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所を経て、
2015年、IBS法律事務所を開設。
国内外の企業法務案件を主に扱っており、国際取引・英文契約を得意としている。
大手総合商社・外資系企業の法務部への出向経験があるため、企業法務の現場の問題意識にも通じている。
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
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企業 法務ニュース 知的財産権 訴訟・行政 知財ライセンス 著作権法
第86回MSサロン(大阪会場)
2017年09月06日(水)
19:00 ~ 21:00
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大阪府大阪市北区
講師情報
溝上絢子
2004(平成16)年10月
大阪弁護士会に弁護士登録、なにわ共同事務所入所

2008(平成20)年4月~2011(平成23)年9月
大阪大学高等司法研究科(ロー スクール) 非常勤講師
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企業 法務ニュース 知的財産権 訴訟・行政 知財ライセンス 著作権法
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田中 誠
キリンホールディングス株式会社グループ法務担当主幹
兼キリン株式会社法務部主幹

1985年3月 中央大学法学部法律学科 卒業
1985年4月 麒麟麦酒株式会社(現キリンホールディングス㈱)入社
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《緊急セミナー》改正債権法に基づく契約書作成実務
2017年10月13日(金)
14:30 ~ 17:30
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東京都品川区北品川
講師情報
滝川 宜信
(行政書士滝川ビジネス契約コンサルティング代表〔特定行政書士〕・明治学院大学非常勤講師)
◆中央大学大学院法学研究科博士後期課程中退
◆㈱デンソー法務部課長~部長および名古屋大学大学院法学研究科客員教授、明治学院大学法科大学院教授(会社法・商法担当)、株式会社トーカン顧問を歴任。
・この間、中部経済連合会法規委員会専門委員長、経団連経済法規委員会企画部会委員・消費者部会委員、名古屋工業大学・名城大学法学部・中京大学法学部・南山大学法学部・法科大学院の非常勤講師を歴任。
◆日本私法学会会員、金融法学会会員
◆主な著書
『取引基本契約書の作成と審査の実務(第5版)』(単著・㈱民事法研究会)、『実践企業法務入門(第5版)』(単著・㈱民事法研究会)、『業務委託(アウトソーシング)契約書の作成と審査の実務』(単著・㈱民事法研究会)、『M&A・アライアンス契約書の作成と審査の実務』(単著・㈱民事法研究会)
『内部統制対応版企業コンプライアンス態勢のすべて〔新訂版〕』(共著・きんざい)、『リーディング会社法〔第2版〕』(単著・㈱民事法研究会)、『企業法務戦略』(共著・㈱中央経済社)、『社外取締役のすべて』(共著・東洋経済新聞社)など
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本セミナーでは、『取引基本契約書の作成と審査の実務』など契約書の審査と実務シリーズ(民事法研究会・刊)の著者が、企業法務の担当者を対象に、直接、わかり易く丁寧に解説します。
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サムスンとのトップ交渉決裂、現状はアップルやや有利か... 事案の概要 2011年4月、アップルがサムスンに対して、アップルが持つデザイン特許などを侵害しているとして提訴したことに始まる問題。 その後今度は逆にサムスンがアメリカ、日本、韓国などで自社の技術的な特許を侵害しているとしてアップルを提訴したことによって激しい争いが続いていた。 今回は泥沼化する事...
(続)公法上の違法行為の私法上の効力について...  前回、緊急事態に対処する法律を制定する意義を書いたが、地震被害において、公道に津波に流された他人の自動車が留置されている場合には、行政庁は勝手にその自動車を動かしたり、壊してどかしたりは出来ないのである。私道についても同様である。自動車は「財物」であり、他人の財産であるからそれを壊せば器物損壊、盗...
「ブラック企業」の8割が法令違反 厚労省調査で判明... 事案の概要 厚生労働省が、過酷な労働を強いて若者を使い捨てる、いわゆる「ブラック企業」対策として行った調査によると、調査対象となった全国5111の企業、事業所のうち約82%が法令違反をしていたことが判明した。 法令違反としては、違法な時間外労働43.8%、賃金不払い残業23.9%などが挙げら...