導入は1%、高度プロフェッショナル制度について

はじめに

 産経新聞は5日、主要企業を対象としたアンケートで「高プロ」制度を導入する予定と回答した企業はわずか1%である旨報じました。新たな労働形態への慎重姿勢の現れと言えます。今回は今年4月から導入が可能となった高度プロフェッショナル制度について見直していきます。

高プロ制度とは

 近年政府によって展開されている「働き方改革」の一環として今年4月から「高度プロフェッショナル」制度が導入されました。高度の専門的知識を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定が適用除外となる制度です。生産年齢人口の減少や多様な働き方のニーズに応え、就業機会の拡大や生産性向上を目的としています。

高プロ制度導入の流れ

(1)労使委員会の設置
 高プロ制度を導入するにはまず労使委員会を設置する必要があります(労基法41条の2)。労使委員会はその構成員の半数が労働者を代表する者となります。労組がある場合はその労組が、ない場合は労働者の過半数を代表する者が指名します。そして決議は5分の4の賛成を必要とします。

(2)労使委員会での決議
 労使委員会では導入する高プロ制度の内容を決議していきます。具体的には①対象業務、②対象労働者の範囲、③健康管理時間の把握とその方法、④年間104日以上、4週間を通じて4日以上の休暇を与えること、⑤対象労働者の選択的措置、⑥健康・福祉確保措置、⑦同意の撤回に関する手続き、⑧苦情処理の具体的内容、⑨同意しなかった場合に不利益取扱をしないことなどが挙げられます。

(3)届け出と同意
 上記決議を行い、その内容を労働基準監督署長に届け出ることになります。そして対象となる労働者から書面で同意を得る必要があります。その際には労基法の労働時間や休暇、祝日等の割増賃金などの規定が適用除外となる旨と同意の対象となる期間および支払われる予定の賃金について明示することとなります。

(4)運用
 実際の運用過程では対象労働者の健康管理の把握や決議どおりに休日を与えること、健康・福祉措置の実施などを行う必要があります。そして労使委員会での決議から6ヶ月以内ごとにその運用状況を労基署長に報告することとなります。また同意した対象労働者も対象期間内は同意を撤回することができます。

類似の制度

 高プロ制度に類似する制度として裁量労働制があります。高プロ制度と同様に労働時間ではなく成果に基づいて報酬を支払う制度という点で共通しますが、高プロ制度とは違い原則として労基法の規定が適用されます。賃金等が予め定められた時間働いたこととなるみなし労働時間を基礎に算定されるということです。また対象となる職種も限定されております。

コメント

 産経新聞の報道によりますと、高プロ制度の趣旨は理解できるがサービス残業のリスクが高まる可能性があるといったものや、適切な勤務管理や健康配慮の側面で検討すべき課題も多いといった声もあり、ほとんどの主要企業では導入に慎重な姿勢を取っていると言えます。以前からある裁量労働制でも勤怠管理がおろそかになりがちとの批判があり、また対象業種でないにもかかわらず導入していたとして労基署から是正勧告を受けていた例も多数存在します。そういった事情も踏まえ、高プロ制度は上記のとおり要件が厳格で労働者側の意向が強く反映される制度となっております。導入にあたっては会社側の負担も小さくないと言えますが、これまでの制度よりも、より透明性が高く柔軟な働き方を実現できる制度とも言えます。類似制度と比較しながら自社にとって適切な制度を柔軟に検討していくことが重要と言えるでしょう。

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元ITエンジニア・ライター。

東証一部上場企業からシードステージのベンチャーまで、約60社の顧問弁護士等、イースター株式会社の代表取締役、株式会社KPIソリューションズの監査役、株式会社BearTailの最高法務責任者などを務める。JAPAN MENSA会員
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編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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■上田潤一
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/パートナー弁護士

01年東京大学法学部卒業
04年弁護士登録
12年米国Vanderbilt University卒業(LL.M.)
13年ニューヨーク州弁護士登録、英国University College London卒業(LL.M.)
労働法、社会保険・労働保険・年金に関連する法律、会社法、個人情報保護法等の法分野に関する業務を中心に、労働案件、一般企業法務の案件、紛争案件等を取り扱っている。
著作に『仕事でよく使う・すぐに応用できるビジネス契約書作成ガイド』(共著)(清文社、2017)、『実務Q&Aシリーズ 懲戒処分・解雇』(共著)(労務行政、2017)等がある。

■荻野聡之
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/アソシエイト弁護士

03年東京大学法学部卒業
06年東京大学法科大学院卒業(法務博士(専門職))
08年弁護士登録
労働法、危機管理、事業再生等の法分野に関する業務を中心に取り扱っている。
著作に『企業のための労働実務ガイド1 Q&Aと書式 解雇・退職』(共著)(商事法務、2013)、『労使双方の視点で考える 27のケースから学ぶ労働事件解決の実務』(共著)(日本法令、2015)、『M&Aにおける労働法務DDのポイント』(共著)(商事法務、2017年)等がある。

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1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。

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