株主総会決議と定足数について

はじめに

 多くの会社の定款では株主総会決議についての定足数要件を緩和、排除していることが多いと思われます。決議要件と定足数は株主総会の有効性の大前提となります。今回は株主総会決議の種類と定足数について見ていきます。

株主総会決議の有効性

 株主総会は通常、取締役会の決議に基づき取締役が招集します(会社法298条4項、296条3項)。公開会社では開催日の2週間前までに、非公開会社では1週間前までに招集通知がなされ(299条1項)、場合によっては株主から議題が提案されることもあります(303条)。開催日には議題について決議がなされますが、議題の内容によっては定足数、表決数が異なる場合があり、それに基づいて決議がなされます。取締役などの役員は株主から説明を求められる場合もあります(314条)。これら株主総会の招集や決議の方法について、法令や定款に違反していたり、著しく不公正である場合には決議取消の訴えの対象となっております(831条1項1号)。取消原因は多岐にわたりますが、今回は定足数などの決議要件について見ていきます。

株主総会決議の種類

(1)普通決議
 株主総会の決議は基本的には普通決議によることになります。普通決議は株主の議決権の過半数が出席し、出席した株主の議決権の過半数でもって可決されます(309条1項)。定足数については定款で加重、軽減、排除することができ、また表決数についても加重することができます。表決数を軽減することはできません。なお役員の選任・解任に関しては定足数は3分の1よりも減らすことはできません(341条)。

(2)特別決議
 定款変更や株式の有利発行、事業譲渡、組織再編の承認、資本金の減少、監査役の解任、会社の解散といった議題については株主総会の特別決議を要します。特別決議は定足数は普通決議と同様に議決権の過半数で、表決数は出席株主の議決権の3分の2となります。定足数は3分の1まで減少させることはできますが排除はできません(同2項かっこ書き)。表決数は加重はできますが軽減できません。

(3)特殊決議
 株式に譲渡制限を設ける定款変更や組織再編に際して株主に交付される対価が譲渡制限株式である場合などには特殊決議を要します。特殊決議は定足数は存在せず、議決権を行使できる株主の頭数で半数以上、かつ全議決権の3ぶんの2の賛成を要します(同3項)。これらの頭数要件と表決数は定款で加重することができます。なおさらに要件の厳しい特殊決議として総株主の半数以上かつ議決権の4分の3の賛成を要する場合があります(同4項)。これは非公開会社における株主ごとに議決権、剰余金などの扱いを異ならせる定款規定を置く場合に必要となります。

定款記載例

 普通決議の定足数を排除したい場合の定款記載例としては「株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって行う。」と記載するのが一般的と言えます。出席者が何人であっても、その議決権の過半数で決議できるというものです。次に特別決議の定足数を下限である3分の1とする記載例としては「会社法第309条2項の定めによる決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上をもって行う。」と記載します。なお普通決議の定足数を排除しても役員の選任・解任については下限の3分の1となります。

コメント

 通常会社を設立する際に作成する定款は、多くの場合公証人役場等の定款記載例を参考に作られるものと思われます。そういった記載例では大抵の場合上記のように普通決議と特別決議の定足数要件を下限まで下げられております。株主がそれなりの数にのぼる会社では、定足数は少ないほうが決議要件を満たしやすく、出席株主が足りないからと決議できなくなる事態は避けられます。しかし一方で株主が数人しかいない小規模な会社の場合、定足数が排除されていたりすると1人だけで株主総会を開催して決議をしてしまうということも可能になってしまいます。株主総会決議の定足数は会社の規模や株主の数などに合わせて適切に決定する必要があると言えます。自社の定款が一般的なひな形をそのまま参考にして作成されている場合は、今一度定足数について見直しておくことが重要と言えるでしょう。

関連業務タグ:
関連法律タグ:
 
[著者情報] mhayashi

詳細情報はありません。

※記事コンテンツを掲載したい方は、コチラ

このニュースに関連するセミナー

法務コラム 法務ニュース 総会対応 会社法
《名古屋会場》国際取引・海外展開の即戦力になるセミナー第4回 国際М&Aの基礎
2019年08月29日(木)
14:00 ~ 17:00
12,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史
弁護士・NY州弁護士

グローバルに展開する大規模法律事務所であるクリフォードチャンス法律事務所において、国際的な企業法務を取り扱い、国内外の企業に法的助言を行う。その間に、国内大手商社法務部への出向やワシントンD.C.での勤務も経験。現在は、オリンピア法律事務所のパートナーとして、主に中部圏の企業の国際取引・海外進出をサポートしている。

略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー
英文契約をこれから担当・現在担当している法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第4回目のセミナー内容は国際М&Aの基礎(国際М&Aの手法及び海外関連会社の管理に関する注意点)です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 総会対応 会社法
《名古屋会場》国際取引・海外展開の即戦力になるセミナー第3回 国際紛争対応の基礎
2019年07月25日(木)
14:00 ~ 17:00
12,000円(税込)
名古屋市中区丸の内
講師情報
和田 圭介
略歴:
愛知県春日井市出身
愛知県立旭丘高校卒業
2004年 京都大学法学部卒業
2005年 弁護士登録(58期 第二東京弁護士会)
クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業入所
2008年 フランス系ラグジュアリーブランド日本支社(出向)
2010年 アメリカ、Duke University School of Law(法学部)LLM卒業
2010年 クリフォードチャンス香港オフィス(出向)
2011年 日系の大手財閥系総合商社のイギリス子会社の法務部(出向)
2013年 ニューヨーク州弁護士登録
2015年 IBS法律事務所開設(愛知県弁護士会に登録換え)
2017年 オリンピア法律事務所 パートナー
英文契約をこれから担当・現在担当している法務担当者の方などを対象としたセミナーです。第3回目のセミナー内容は国際紛争対応の基礎(国際裁判及び国際仲裁)です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 総会対応 会社法
《名古屋会場》第116回MSサロン 企業法務研究会「法務部門の創り方」
2019年08月08日(木)
19:00 ~ 21:00
2,000円
名古屋市中区丸の内
講師情報
大久保 裕史 田代 洋介
■大久保 裕史
略歴:
早稲田大学法学部・法科大学院卒業、
コロンビア大学ロースクール(LLM)卒業
2009年12月 弁護士登録
2010年1月~2018年4月
クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業
2012年6月~2014年2月 三井物産株式会社 法務部(出向)
2015年9月~2016年7月
クリフォードチャンス・ワシントンD.C.オフィス(出向)
2016年5月 ニューヨーク州弁護士登録
2018年5月~ オリンピア法律事務所 パートナー

■田代 洋介
略歴:
愛知県名古屋市出身
2010年 静岡大学人文学部法学科卒業
2013年 南山大学法科大学院法務研究科修了
2014年 弁護士登録(67期 愛知県弁護士会)
川上・原法律事務所入所
2017年 オリンピア法律事務所 アソシエイト
セミナー(60分)の後、交流会(60分)を行います。
セミナー部分では法務担当者のための意見交換会を行いたく考えています。
今回のテーマは「法務部門の創り方」です。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 総会対応 会社法
《東京開催》少人数法務の為の企業法務研究会
2019年08月09日(金)
19:30 ~ 21:00
無料
東京都渋谷区
講師情報
舩山 達 野村 亮輔 登島 和弘
■舩山 達
株式会社フルスピード(東証二部上場)
法務・総務部 部長

慶応義塾大学法学部法律学科卒
大阪市立大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了
従業員5人のベンチャー企業に就職。2回の転職を経て現職。

■野村 亮輔
弁護士(東京弁護士会)/株式会社レトリバ非常勤監査役

東京大学法学部卒
労働法/景品表示法を中心とした企業法務を広く取り扱う他、人事労務担当者との勉強会を8年以上主宰。
著書に「景品表示法の理論と実務」(中央経済社)、執筆記事に「基本用語と講習例でわかる!LGBT基礎知識」(月刊ビジネス法務・2017年3月号)等がある。
気さくな人柄とわかりやすさで社内講習/セミナー講師としても好評を博する。

■登島 和弘
サイネオス・ヘルス合同会社
アジア太平洋地域法務責任者

中央大学法学部法律学科卒
立命館大学法務研究科修了
スタンレー電気㈱総務部庶務課法務担当を皮切りに、日本AT&T㈱(米系)契約課長、松下冷機株式会社法務室主事、
セジデム株式会社(仏系)コーポレートサービス部統括部長・法務部長兼任等、を歴任し、現職。
少人数やノウハウの蓄積のないために業務の進め方に不安を持っている法務担当者のための意見交換会です。
今回のテーマは「人事と法務」です。
詳細はコチラ (申込は、終了しています。)
法務コラム 法務ニュース 総会対応 会社法
《東京会場》2020年1月に施行が迫るカリフォルニア州消費者プライバシー法の影響範囲の確定と施行までの実務対応
2019年08月01日(木)
13:30 ~ 16:30
20,000円(税別)
東京都港区
講師情報
石川 智也
西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

2005年東京大学法学部第一類卒業
2006年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2015年バージニア大学ロースクール卒業(LL.M.)
2016年Max Planck Institute for Innovation and Competitionにある
ミュンヘン知的財産法センター修了(LL.M.)、同年Noerr法律事務所ミュンヘンオフィス勤務
2017年米国ニューヨーク州弁護士登録

日本における知的財産法、営業秘密保護、個人情報保護法のほか、
EUにおける知的財産制度・競争法、EUデータ保護規則をはじめとする
グローバルベースでのデータ規制についても詳しい。

主催
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
カリフォルニア州消費者プライバシー法(CaCPA)は、個人情報の定義と域外適用のスコープが広く、かつ、クラスアクションによる多額の損害賠償リスクを伴うため、多くの日本企業にとってグループレベルでの対応が必須といえます。

本セミナーでは、単に条文の内容を日本語にして伝えるだけではなく、日本企業が経験したGDPR対応・日本の個人情報保護法の下での態勢整備との差も意識しながら、ポイントを押さえる形でCaCPAの内容を説明した上で、今行うべきことと、今後の改正・規則策定を踏まえて行うべきこととを具体的に示し、CaCPAが施行される2020年1月までの具体的な作業手順を示します。
申込・詳細はコチラ
法務コラム 法務ニュース 総会対応 会社法
《大阪会場》今さら聞けない英文契約書(講師著書付き)
2019年08月29日(木)
10:00 ~ 16:00
(午前)か(午後)のいずれか1つに参加の方:各回13,000円+税(書籍代を含む)※書籍ご持参の方:各回11,000円+税 (午前)と(午後)の両方に参加される方:22,000円+税(書籍代を含む)※書籍ご持参の方:20,000円+税
大阪府大阪市北区
講師情報
吉川 達夫
ニューヨーク州弁護士/外資系企業 VP, General Counsel

外資系法務本部長、駒澤大学法科大学院、国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師
元Apple Japan法務本部長、元伊藤忠商事法務部、元Temple Law School日本校客員教授。上智大学法学部、Georgetown Univ. Law Center卒

編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

主催・協力
レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
ニューヨーク州弁護士、外資系会社VP, General Counselの吉川達夫氏を講師にお招きし、過去数年間にわたり毎年多くの方からご参加を頂いております「今さら聞けない英文契約書セミナー」を、初心者向けの午前の部(基礎編)と、中級者向け午後の部(英文契約書交渉とドラフティング編)として開催いたします。

(基礎編)は、英文契約書を読んでみたい方、国際法務にこれから携わる方や弁護士の方、携わっているが改めて基礎を確認されたい方など、この機会に是非ご参加ください(英文契約書の読み方を中心に解説)。

(交渉編)は、国際法務の実務を担当されている方、多少の基礎知識はあるが自己流で勉強された方や弁護士の方、発展的な学習をされたい方は奮ってご参加ください。

※当日は国際ビジネス法務(第2版)(第一法規株式会社/2018年3月発売 /2,800円+税)を教科書として使用します。
申込・詳細はコチラ
※セミナー広告を掲載したい方は、コチラ

あわせて抑えておきたい関連記事

軸受製造販売業者による価格カルテル事件について... はじめに  平成29年12月22日、NTN株式会社は独占禁止法(以下「法」という。)第52条第4項の規定に基づき排除措置命令に係る審判請求を取り下げました。これにより、公正取引委員会が行った排除措置命令は確定しました(同条第5項)。  今回は、軸受製造販売業者による価格カルテル事件を題材に、独...
パシフィックコンサルタンツにおける残業シェアの取組み... 1、無駄の削減について  現在企業では、就業規則等の整備と並行し残業申請ルールや長時間労働へのアラームなど社内ルール作りを行い無駄な残業を削減していくなど労務管理の観点から広く業務効率化を目指していくことが求められている。  残業シェアを試みることで業務効率化を図る企業の姿を11月24日付け日本経...
西武HD再上場めぐり対立泥沼化 米サーベラス、西武HDにTOB実施へ... 概要 西武ホールディングス(HD)の筆頭株主である米投資ファンドのサーベラスは11日、西武HDの株式を買い増すため、株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。出資比率を現在の32.4%から、株主総会で特別決議を拒否できる3分の1超へ引き上げ、経営への影響力を強める。6月の株主総会で、五味広文...