中小企業にとって大打撃?の改正労基法の「割増賃金率の適用猶予廃止」

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【審議の状況】
大幅延長している今国会は、最大の焦点の安全保障関連法案が16日に衆院を通過し、参院審議の行方が注目される。一方、安倍内閣が労働改革の柱に掲げる労働基準法改正案などの重要法案は審議入りのめども立っていない状況となっている。
労働基準法の改正案は、平成27年4月に国会に提出されている。今回の改正は、「長時間労働を抑制」し、「創造的な能力を発揮しながら効率的に働くことができる環境を整備」することを目的としている。

【改正のポイント】
中小企業における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予廃止(施行期日平成31年4月1日)

【中小企業も時間外労働への割増賃金率が2割5分から5割へ】
平成22年の労働基準法改正により1ヶ月あたり60時間を超える時間外労働に対しては、5割の割増率で計算した割増賃金の支払いが必要とされている。この60時間を超える時間外労働に対する割増率については、労働基準法138条により中小企業は猶予されている。

もっとも、今回の改正によりこの猶予規定は削除され、中小企業も60時間以上の時間外労働に対しては割増率が5割になる。
たとえば、70時間の時間外労働を行った社員がいる場合、今までは70時間の時間外労働に対して2割5分の割増しとなっていたが、改正後は、60時間分の時間外労働には2割5分の割増しが、60時間を超える10時間分の時間外労働には5割の割増しが必要となる。

なお、中小事業主とは、以下の①、②の者をいう。
①資本金の額又は出資の総額が3億円以下である事業主。
※小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については5000万円以下である事業主。
※卸売業を主たる事業とする事業主については1億円以下である事業主。
②その常時使用する労働者の数が300人以下である事業主。
※小売業を主たる事業とする事業主については労働者の数が50人以下である事業主
※卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については労働者の数が100人以下である事業主

【コメント】
今回の改正は、中小企業やその従業員にとっては大打撃となる。中小企業は昨今の円安により経営が苦しい企業が多い。そして、企業がコストを削減しようとする場合には、まず人件費の削減を検討することになる。そのため、中小企業としては人件費を増やさずに今までどおりのパフォーマンスを行うには、①機械化による効率化の促進、②従業員にサービス残業を強いる、③人件費が安い外国人労働者を雇う、などの対応を検討しなければならなくなることが考えられる。
もっとも、上記のような方法には以下のような問題点がある。
たとえば、機械化を進めようとすると、企業目線では一時的に生産コストが上がり企業の財政を圧迫する。また従業員目線では機械化により人員を削減されるおそれがでてくる(①)。また、中小企業では半数近くがそもそも36協定を守っていないなど、コンプライアンス意識が高いとはいえない状況であるのに対して、年々企業に求められるコンプライアンス意識は高くなっている。そのため、法改正に伴って、残業代未払いに対する労働基準監督署の監視も強化される可能性も考えられる(②)。さらに、外国人労働者を雇おうとしても教育コストがかかるため、必ずしもコストの削減にはならない。
企業に求められるコンプライアンス意識は年々高まっており、経営者には従業員を守りながら経営を行うことがより一層求められていくことになる。今回の改正は、現段階では31年4月施行であり、中小企業の経営者にはまだ猶予が与えられているものの、今後頭を悩ませる課題になるにちがいない。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約4年28日前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
 
[著者情報] muehara

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2010年 静岡大学人文学部法学科卒業
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2014年 弁護士登録(67期 愛知県弁護士会)
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略歴:
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元ITエンジニア・ライター。

東証一部上場企業からシードステージのベンチャーまで、約60社の顧問弁護士等、イースター株式会社の代表取締役、株式会社KPIソリューションズの監査役、株式会社BearTailの最高法務責任者などを務める。JAPAN MENSA会員
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編著:『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(編著、第一法規、2018年)、『ライセンス契約のすべて 基礎編』(編著、第一法規、2018年)、『ダウンロードできる 英文契約書の作成実務』(編著、中央経済社、2018年)など、著作・論文多数

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20,000円(税別)
東京都港区
講師情報
上田 潤一 荻野 聡之
■上田潤一
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/パートナー弁護士

01年東京大学法学部卒業
04年弁護士登録
12年米国Vanderbilt University卒業(LL.M.)
13年ニューヨーク州弁護士登録、英国University College London卒業(LL.M.)
労働法、社会保険・労働保険・年金に関連する法律、会社法、個人情報保護法等の法分野に関する業務を中心に、労働案件、一般企業法務の案件、紛争案件等を取り扱っている。
著作に『仕事でよく使う・すぐに応用できるビジネス契約書作成ガイド』(共著)(清文社、2017)、『実務Q&Aシリーズ 懲戒処分・解雇』(共著)(労務行政、2017)等がある。

■荻野聡之
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/アソシエイト弁護士

03年東京大学法学部卒業
06年東京大学法科大学院卒業(法務博士(専門職))
08年弁護士登録
労働法、危機管理、事業再生等の法分野に関する業務を中心に取り扱っている。
著作に『企業のための労働実務ガイド1 Q&Aと書式 解雇・退職』(共著)(商事法務、2013)、『労使双方の視点で考える 27のケースから学ぶ労働事件解決の実務』(共著)(日本法令、2015)、『M&Aにおける労働法務DDのポイント』(共著)(商事法務、2017年)等がある。

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東京都港区
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淵邊 善彦
ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士

1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。

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レクシスネクシス・ジャパン株式会社/ビジネスロー・ジャーナル
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