トーカイがイビデンの福祉事業を承継、吸収分割について

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はじめに

 トーカイが3月1日付でイビデン産業から会社分割により福祉用具の貸与事業を承継することがわかりました。取得額は1100円とのことです。今回は組織再編行為の一種である吸収分割について見ていきます。

事案の概要

 発表などによりますと、寝具などの供給事業を展開するトーカイ(岐阜市)は19日の取締役会でイビデン産業から3月1日を効力発生日として福祉用具貸与・販売事業を会社分割の方法で承継することを決定したとされます。中部地方での地域に根ざした事業を展開してきたイビデン産業の事業を承継することで同地域での顧客基盤を拡大することを目的としています。対価は1100万円でトーカイの前期純資産額の10%未満とのことです。

吸収分割とは

 会社分割とは、1つの会社を2つ以上に分けることを言います。事業譲渡と異なり関連する権利・義務を包括的に移転させます。会社の1つの部門を分割し他の会社に吸収させる吸収分割と、分割した事業を新たに設立した会社に承継させる新設分割があります。今回は吸収分割について見ていきます。

吸収分割の手続の流れ

 吸収分割も合併など他の組織再編行為と同様に手続が流れていきます。まず当事会社間で吸収分割契約を締結します(会社法758条)。そして契約内容や当時会社の貸借対照表などの事前開示を行い(782条1項、794条1項)、株主への通知、債権者保護手続(785条、789条、799条等)、株主総会での承認決議(783条1項、795条1項、309条2項12号)を経て効力発生日に分割されます。その後手続の進捗などを開示し(791条1項、2項)、登記をして終了となります(921条、923条)。基本的に合併を変わりませんが債権者異議手続などで異なる点も存在します。

債権者異議手続

 会社分割と合併手続で大きく異なる点としては債権者異議手続が挙げられます。合併では原則として常に債権者異議手続が必要でしたが、会社分割では分割後、債権者が分割会社に請求できない場合に必要となります(789条1項)。しかしこの場合でも両会社で連帯債務となる場合や重畳的債務引受けなど、実質的に債権者に不利益が無い場合は不要となります。なおさらにこの例外として承継会社の株式を現物配当、あるいや全部取得条項付種類株式の取得対価という形で分割会社の株主に提供される場合は異議手続はやはり必要になります。これはいわゆる人的分割と言われるもので、この場合には財源規制が及ばないからです(792条)。

略式・簡易手続

 分割契約の株主総会決議による承認は省略できる場合があります。以前にも取り上げた株式交換と同様、略式組織再編、簡易組織再編です。分割相手会社が議決権の90%以上を保有する特別支配会社である場合は承認決議は不要です(784条1項、796条1項)。また分割の対象となる事業、あるいはその対価が総資産額または純資産額の20%以下である場合も承認決議は不要となります(784条2項、796条2項)。この場合には会社および株主への影響が小さいからです。

コメント

 本件でイビデンから福祉用具事業を承継するトーカイ側が支払う対価は1100万円で純資産額の10%未満とされており簡易組織再編の要件を満たすと言え、株主総会の承認決議を経ないで行われる予定です。簡易組織再編の場合は株主による差止請求や株式買取請求もできないこととなります。以上のように会社分割手続は基本的には合併と同じですが、違う部分も存在します。また略式・簡易手続ができる場合とそうでない場合でも手続が異なってきます。また後日取り上げますが、同じ会社分割でも新設分割の場合はまた特有の手続や特徴が存在します。グループ再編にはどのような形があるのか、またどのような手続を利用するのが適切かを予め把握しておくことが重要と言えるでしょう。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約1年4ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
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[著者情報] mhayashi

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2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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