シャープ雇い止め問題で救済申立、不当労働事件審判について

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はじめに

 シャープ亀山工場で働いていた外国人労働者約2900人が今年に入って雇い止めされた問題で労働組合「ユニオンみえ」は6日、派遣会社から脅迫行為があったとして労働委員会に救済申し立てを行なっていたことがわかりました。今回は不当労働事件の審判について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、シャープ亀山工場(三重県)では多くの日系外国人が働いていましたが、そのうち約2900人が今年に入って相次いで雇い止めされたとのことです。米アップルの「iPhone」用部品の減産などが影響していると見られます。労働組合「ユニオンみえ」の発表によりますと、同日系外国人はシャープの5次下請け約10社で雇用され、1~2ヶ月の短期で雇い、期限が来ると退職させグループ内の別企業で雇用を繰り返していたとされます。同ユニオンでは約5年前から派遣会社側から、背後に反社会的勢力がいることを示唆するなどして度重なる脅迫を受けたとし県労働委員会に不当労働行為救済申立を行いました。脅迫電話は1日数十回に及ぶ日もあったとのことです。

不当労働行為とは

 労働組合法では労働者の労働基本権を保障するため以下の行為を不当労働行為として禁止しております。
①労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入しようとしたこと、労働組合を結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたことを理由として解雇したり、その他不利益な取扱いをすること(1号)。
②使用者が、雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒絶すること(2号)。
③労働組合の結成または運営について支配し、または介入すること、労働組合の運営のための経費の支払いについて経理上の援助を与えること(3号)。
④労働委員会への救済申立てや、労働委員会の調査・審問において証拠を提示、発言したことを理由として解雇、その他の不利益な取扱いをすること(4)。

不当労働行為事件審査の手続き

 上記不当労働行為が行われた場合には労働組合または組合員は都道府県労働委員会に救済申立てをすることができます。これは事件発生から1年以内にする必要があります。申立がなされると当事者の主張の聴き取りや争点・証拠整理が行われます。それをもとに公開の審問廷で証人尋問が行われ公益委員会による合議で救済命令か棄却命令を下します。これに不服がある場合には15日以内に中央労働委員会における再審査申立てを行うことができます。ここでも同様に調査、審問、合議による決定がなされ、申立てに理由があるとされる場合には初審命令変更がなされます。これら労働委員会の命令は使用者側は30日、労働者側は6ヶ月以内に取消訴訟を提起することもできます。

不当労働行為の効果

 不当労働行為は上記のとおり労働組合法によって禁止されております。ではこれに罰則はあるのでしょうか。労働組合法によりますと、不当労働行為自体に罰則は定められておりません。しかし労働委員会の救済命令が出され、それが確定した場合にその命令に反すると50万円以下の過料となります。また取消訴訟が提起され、確定判決によって救済命令が支持された場合、それに反すると1年以下の禁錮、100万円以下の罰金またはこれらの併科となります(28条)。

コメント

 本件で組合側は5年前から派遣会社側によって脅迫電話等の妨害を受けてきたと主張しております。これが事実であった場合、不当労働行為の一つである、いわゆる支配介入に該当する可能性があります。支配介入とは組合への参加の有無をアンケート調査したり、組合活動を威圧したり過度な批判をするなどが該当します。労働委員会の審判で救済命令が出る可能性もあると考えられます。以上のように団結権や団体交渉権は憲法上の権利として保障されております。人事異動等を行なった際に組合活動を理由としていると判断された場合は不当労働行為として問題化します。普段から労働組合に対し嫌悪の態度を見せず、真摯な対応を心がけることが重要と言えるでしょう。

企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、約1年2ヶ月前に投稿された記事です。法律を内容とする記事の特性上、その改正や他の特別法の施行、経過措置期間の経過、関連判例の出現などによって内容が古くなり、現在は誤りとなる可能性がありますので、ご注意下さい。
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[著者情報] mhayashi

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2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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