NTT西日本子会社が敗訴、契約社員の雇い止めについて
2017/12/26 労務法務, 労働法全般

はじめに
NTT西日本の子会社「NTTマーケティングアクト」(大阪市)で契約社員として働いていた男性6人が不当に雇い止めされたとして地位確認と未払い賃金の支払いを求めていた訴訟で25日、岐阜地裁は雇い止めを無効とする判決を出しました。今回は契約社員の雇い止めの有効性について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、NTTマーケティングアクト岐阜営業所で契約社員だった原告側男性6人はそれぞれ5年~12年に渡って有期雇用を更新する形で働いていたとされます。2015年5月に会社側から業務形態の変更を理由に契約を更新しないと通知され、それに同意しなかった6人との契約を同年9月に打ち切ったとのことです。原告側は「ずっと継続雇用されると会社から説明を受けており、契約更新は形式的なものだった。一方的な変更は許されず違法だ」と主張しておりました。会社側は「契約は無期雇用を前提としたものではなく、打ち切りに問題はない」としています。
契約社員と雇い止め
正社員は一般に期限の定めなく雇用されておりますが、契約社員は一定の期限を定め雇用されます。それゆえに「有期雇用」や「有期契約社員」などとも呼ばれます。雇用期間満了後に会社側が更新せずに雇用契約が終了することを雇い止めと言います。もともと期間の定めがない正社員と違い、最初から一定期間の雇用を前提とした契約社員を期間満了で雇用を終了することから一般に「解雇」とは呼ばれておりません。では契約社員は会社側の都合で自由に雇い止めをすることができるのでしょうか。契約社員の雇い止めについても一定の規制が設けられております。以下具体的に見ていきます。
雇い止め法理
労働契約は期間が満了した後も労働者が働き続け、それに対して使用者が異議を述べなかった場合は、同一の条件で期間の定めが無い労働契約が締結されたものと推定されます(民法629条1項 黙示の更新)。しかしこれだけでは有期雇用社員の保護には十分ではありません。そこで一定の場合には正社員の解雇と同様の法規制を有期雇用にも適用すべきとの考え方が最高裁で示されました(最判昭和49年7月22日)。これは一般に雇い止めの法理と呼ばれ、その後労働契約法の平成24年改正で明文化されました。労働契約法19条によりますと、①過去に反復して更新され社会通念上期間の定めのない労働契約と同視できる場合、または②契約期間満了時に更新されるものと期待するにつき合理的な理由がある場合には、使用者の更新拒絶が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」ときは同一条件で更新したものとみなされます。
厚労省告示
上記雇い止め法理に加えて、厚労省から「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」という告示が出されております。それによりますと有期労働契約に対する4つの基準が規定されております。①契約の際に更新の有無および更新するか否かの判断基準の明示とそれらを締結後に変更する場合は速やかな明示、②1年を超えて継続雇用されている場合か3回以上更新されている場合には雇い止めの30日前までの予告、③雇い止めの際に労働者による請求があった場合の雇い止め理由の明示、④1回以上更新し、かつ1年を超えて継続雇用している場合、更新の際にはできるだけ契約期間を長くする努力義務が定められております。これらの基準に反する場合は、労基署や裁判所で違法な雇い止めと判断される可能性が高くなります。
コメント
本件で岐阜地裁の真鍋裁判長は「契約更新は長期間にわたって反復しており、契約更新への合理的な期待があった」とし原告6人の雇い止めを無効とした上で未払賃金分として合計約2900万円の支払いを会社側に命じました。これはこれまでの雇用期間と更新回数から社会通念上正社員と同等であり、また雇用時の説明や形骸化した更新手続きなどが認められ、更新への合理的な期待が認定されたのではないかと考えられます。近年正社員に代わって有期契約社員を雇用する企業が増加していると言われております。一般に正社員よりも打ち切りという形で解雇がしやすいと考えられていることが一因と言えます。しかし上記のとおり昨今契約社員は場合によっては正社員と同等の保護が与えられており、本件のように「業務形態の変更」や「契約期間満了」といった理由だけでは雇い止めは認められないことが多くなりました。契約社員ならいつでも解雇できると安易に考えず、契約、更新、終了の各場面ごとに必要な手続きを把握して労務管理を行うことが重要と言えるでしょう。
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