仮想通貨規制法案が閣議決定
2016/03/08   金融法務, 金融商品取引法, 金融・証券・保険

はじめに

 ビットコイン等の仮想通貨に対し、4日政府は法規制に向けた関連法令の改正法案を閣議決定いたしました。今回は仮想通貨の問題点と、それに対する規制案について見ていきたいと思います。

仮想通貨とは

 現在問題となっている仮想通貨とは、特定の国家権力や国家機関によって価値を保証され管理がなされている法定通貨とは違い、そのような保証や管理がなされていない通貨を言います。ビットコインに代表されるように、主にインターネット上で発展し取引されてまいりました。極めて簡便で低コストな決済を可能としていますが、特定の国家機関によって管理がなされていないことから、価値の不安定さや、盗難といったトラブルに対する利用者保護に欠けること、また犯罪に利用されうると言った問題も指摘されております。

仮想通貨の問題点

 仮想通貨はにはまず通貨価値の不安定という問題があります。国家機関による統制が無いことから、仮想通貨の価値は利用者の信用に委ねられており通貨価値の異常な値動きを制御できないという問題があります。反面国家機関による意図的な価値のコントロールをすることもできず、ある意味公平な通貨であるとも言えます。また仮想通貨の窃取・詐取といったトラブルが生じた場合、国家機関による取り締まりや被害者の救済手段がないという問題も指摘されてきました。法定通貨ではないことから、その価値自体を把握すること自体が難しく、被害を認定することが困難あり、利用者の保護が課題となっていました。それは同時に所得隠しにより脱税やマネーロンダリングにも悪用することが可能であるということです。

規制案のポイント

 以上のように仮想通貨には様々な問題点が存在していますが、最大の仮想通貨取引所だったマウントゴックスの2014年の破綻と、その経営者による不正行為を受けて金融審議会では仮想通貨に対する法規制に乗り出しました。その主なポイントは以下のとおりです。
(1)通貨認定
 従来仮想通貨は、公的には通貨・貨幣とはみなされず、たんなる価値記録とされてきました。それ故に既存の法令が適用できず、被害者救済が困難であったり悪用を取り締まることができないという側面がありました。そこで今回の規制案では仮想通貨を「貨幣」として認定し、既存の法秩序を及ぼそうと考えられております。これにより被害者救済が可能となりますし、出資法や外為法も適用されることになれば、マネーロンダリング等の悪用も防ぐことができるようになります。

(2)仮想通貨取引所の監督
 これまで仮想通貨は貨幣とは考えられず、その取引も業者や利用者の自主的な運営に委ねられていました。それに対して監督官庁を金融庁とし、仮想通貨取引所を登録制として規制することが考えられております。これにより業者の破綻や、不正行為を監視監督し健全な仮想通貨流通秩序を形成することが期待できます。

(3)フィンテックの促進
 仮想通貨はIT技術とともに発展してきました。金融(Finance)と技術(Technology)の融合した新たな金融サービスであるフィンテックの普及を促進するための規制緩和も盛り込まれております。これにより従来は困難であった銀行とIT企業の合併等が可能となり、新たなIT金融サービスが可能となっていくと言えます。

コメント

 仮想通貨はその利便性からネット上で急激に普及してまいりました。その反面法的な規制がその速度に追いついておらず、様々な問題は野放し状態であったと言えます。現実世界での通貨や品物と同等の財産的価値を有していながら、それがネット上の仮想の存在であるがゆえに現実世界の法が適用できず利用者を保護することも、犯罪やテロに悪用されることを防止するこもできませんでした。今般の世界的な規制の動きや、5月のサミット、東京五輪を控え日本でも本格的な対策に乗り出したものと言えます。今回の規制案の実現によりこれまでの問題点はある程度改善することが期待できますがIT産業の発展速度は常に法規制を上回るものです。仮想通貨が貨幣の一種とみなされることになると、その取引には所得税がかかるのか、それとも消費税なのかといった課税の問題も生じることになるでしょう。また厳格な法と政府による管理のもとに発行される通貨と、そうではない仮想通貨の取り扱いをどのように区別するのかも問題と言えます。仮想通貨を扱うIT企業にとってまだまだ混乱は続くでしょう。

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