4月から施行、改正入管難民法について
2019/02/01   労務法務

はじめに

 昨年12月に成立した改正入管難民法が4月1日から施行されます。少子高齢化で人手不足が懸念されるなか一定の分野で外国人労働者の受け入れを拡大することが狙いです。今回は改正入管難民法の概要を見ていきます。

これまでの在留資格

 外国人が日本に滞在するためには在留資格が必要です。現在在留資格は28種類存在し、そのうち就労が可能なものは18種類です。その主なものとしては大学などの高等教育機関での研究・教育、芸術活動、宗教活動、報道、法律関係、医療、企業内転勤、芸能活動、専門技能、資格を有する介護士などがあります。技能実習生も含まれます。観光や留学、研修などの場合は就労できません。就労が可能な資格はいずれも専門的な技能を有するものであり、単純労働のための在留資格は現行法上存在しません。しかし現在日本で人手不足に陥っているのは単純労働分野と言われております。

改正の概要

 今回の改正ではまず新たな在留資格として「特定技能1号」と「特定技能2号」が創設されます。人材が不足する分野への拡張と言えます。そして外国人の受け入れを行う機関に対し分野横断的に規制を行えるよう基本方針を策定し、外国人の日常正確や社会生活に関する支援等を行えるよう支援計画や基準を策定していきます。また受入機関や登録支援機関に関する届出制、指導、助言や改善命令等の行政処分の整備、罰則の創設などが行われます。そして法務省内に新たに出入国在留管理庁を設置するとのことです。

新たな在留資格

(1)特定技能1号
 特定技能1号は建設、宿泊、農業、介護、漁業、食料品製造業、外食業、ビルクリーニング、機械製造業、自動車整備、航空業など全部で14業種とされております。これまで認められなかった単純作業も含まれます。一定の知識・経験と日本語能力が試験され、期間は5年とされます。配偶者や子供などの家族の帯同は認められません。

(2)特定技能2号
 上記特定技能1号対象分野のうち、建設、宿泊、造船、自動車整備、航空業の5分野で特に熟練した技能を保持していることが認められた場合に特定技能2号の資格が与えられます。特定技能1号資格で在留中に試験を受験し、合格することによって取得することが想定されております。特定技能2号は在留期間が無制限となり、家族の帯同も許可されることとなります。

必要な待遇について

 これらの在留資格で滞在する外国人の雇用には日本人と同等の報酬および待遇が求められます。これらの外国人にも当然に労働基準法、労働契約法などの労働法や雇用保険、労災保険などの各種保険法も適用されます。協定のない時間外労働や残業代不払い、給与からの罰金天引き、強制貯蓄、最低賃金額未満などは全て日本人と同様違法となります。

コメント

 日本は少子高齢化が進む中、特に中小企業で慢性的な人手不足に陥っております。このような状況の打開策として政府が力をいれているのが外国人労働者の受け入れです。人手不足の日本と、雇用不足の外国とで利害が一致していると言えます。しかし一方で日本で就労する外国人の劣悪な待遇も指摘されております。先日の岡山労働局の発表では立ち入り調査した県内の事業所の約60%で外国人労働者への賃金不払いなどの法令違反が認められたとのことです。極端な例では月の時間外労働が過労死ラインの80時間を大きく超えて228時間というものもあったとされます。こういった外国人労働者が全国的に失踪し不法滞在者となってしまう例が後を絶たないと言われております。今後こういった違反に対し当局による規制、監督が強化されていくことが予想されます。4月からの外国人受け入れを検討している場合はどのような対応が必要となってくるかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。

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