社員が過労死した企業名の開示を拒否した大阪労働局にみる、我が国のお役所の体質
2011/11/11 労務法務, 労働法全般, その他

概要
大阪地裁は10日、社員が過労死等により労災認定を受けた企業名の情報公開請求に対する大阪労働局の不開示決定につき、これを取り消す判決をした。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)は、開示請求がなされた場合には原則として行政側に開示義務を課している(同法5条)。
開示しなくてよいのは、同条各号所定の例外事由がある場合に限られる。
本件における情報開示請求の対象は「法人に関する情報」であるため、同条2号イに定める除外事由にあたるか否かが争われた。
<参照条文> 情報公開法
第五条 行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
2号 法人(中略)に関する情報(中略)であって、次に掲げるもの。
イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
判決はまず、個人の利益の侵害のおそれについては、企業名が開示されても、労災補償給付を申請した社員名などの具体的な情報を得られることはなく、個人を特定することはできないとした。
また、法人の権利利益の侵害のおそれについては、開示により企業が取引先の信用を失うなど社会的信用を著しく低下させるおそれは、抽象的なものにすぎないとした。
結論として、除外事由を否定し、不開示決定を取り消した。
考察
本件で特徴的だったのは、本来労働者の利益を守るべき労働局が、不当に企業寄りの態度をとったという点である。
特に「企業名を開示すればその企業の社会的信用を損なう」というロジックは不可解としか言いようがなく、「風が吹けば桶屋が儲かる」というが如きである。
覆い隠した末、後で明るみに出る方がよほどその会社の社会的信用にとってマイナスだとは思わなかったのであろうか。
社員が過労死するなどということは、よほど労働環境・労働条件が劣悪だったということにほかならない。
知っていて何ら改善せず放置するような企業は問題外である。しかし、仮にそうでなかったとしても、積極的に自らの過ちを認めて再発の防止に努めることこそが、長期的には社会的信用を得ることにつながる。
そのようなことは、小学校の道徳の授業レベルの簡単なロジックである。
近時、大王製紙やオリンパスのように、呆れるほどモラル・自浄作用が低い企業の存在が問題となっているが、過労死の問題も根は全く同じなのではないか。
そして、巷間言われるようになってきた「ブラック企業」の存在が許されてしまっているのは、労働者に冷たく企業側に甘い役所側の体質にも大いに原因があるのでは、と思わせる事件である。
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登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
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- 視聴時間1時間27分

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