テレビやインターネットに無縁だと違法薬物を認識できない? -ユダヤ教超正統派信徒に覚せい剤取締法違反はないとして無罪判決-
2011/08/31 訴訟対応, 刑事法, その他

事案概要
イスラエル国籍の学生がオランダから覚せい剤と合成麻薬MDMAなど違法薬物計9万錠を密輸しようとしたとして、覚せい剤取締法違反などの罪で起訴された事件で、千葉地裁は8月29日、無罪(求刑懲役15年、罰金500万円)を言い渡した。
違法薬物の認識
覚せい剤取締法違反は故意犯なので犯罪事実の認識が必要であるが、その程度としては「覚せい剤を含む『身体に有害で違法な薬物類』であるとの認識があれば足りるとされている(最判平成2年2月9日)。本件では無罪とされているのでこの認識を欠いていたということであるが、その判決理由の中で、「被告の所属するコミュニティーが、世俗社会とは異なる特殊で閉鎖性が強い環境にある」などと述べ、被告が違法薬物の知識が乏しかったことを指摘しているのは珍しいのではないかと思われる。
雑感
本件に関して注意しなければならないのは、一般的に「持っていたものが何か知らなかった」「骨董品を運んでいると思っていた(本件での弁明)」という弁明が通るわけではないということである。大概は法外な運搬料等が間接事実となって認識があると判断されることになると思われる。本件のように被告がユダヤ教の超正統派「サトマール派」信徒で、テレビやインターネットがほとんどない生活をしており、同じ宗派の人物から「日本に骨董品を運搬してくれ」と依頼され、信じたという特殊事情でもない限り無理であろう。
ただ、被告はずっとイスラエルにいたわけではないこと(本件ではオランダから入国している。もっとも、ただ経由しただけということはありえるかもしれない。)、違法薬物の認識にテレビやインターネットの存在が不可欠とも思えず判決そのものに疑問がないでもない。(検察の立証不備や弁護活動の成果という要因もありうるが…)
【関連リンク】
- イスラエル学生に無罪 千葉地裁「違法薬の知識乏しい」 -Asahi.com-(リンク切れ)→アーカイブ
- どこまで知っていれば故意があるのか(覚せい剤取締法違反)-弁護士 小川 敦也 from minor to major-
関連コンテンツ
新着情報

- 業務効率化
- LAWGUE公式資料ダウンロード
- セミナー
松永 倫明 セールスマネージャー(株式会社Cyberzeal、Viettel Cyber Security所属)
阿久津 透 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/東京弁護士会所属)
- 【オンライン】経営と法務が備えるべきサイバーリスク~サイバー攻撃被害の現実と予防策〜
- 終了
- 2025/05/29
- 17:30~18:30
- 弁護士
- 松田 康隆弁護士
- ロジットパートナーズ法律会計事務所
- 〒141-0031
東京都品川区西五反田1-30-2ウィン五反田ビル2階

- 業務効率化
- 法務の業務効率化
- 弁護士
- 横田 真穂弁護士
- 弁護士法人咲くやこの花法律事務所
- 〒550-0011
大阪府大阪市西区阿波座1丁目6−1 JMFビル西本町01 9階

- 解説動画
岡 伸夫弁護士
- 【無料】監査等委員会設置会社への移行手続きの検討 (最近の法令・他社動向等を踏まえて)
- 終了
- 視聴時間57分

- ニュース
- 虚偽報告で佐賀市の建設会社が書類送検、労災かくしについて2025.8.12
- 労働災害で虚偽の報告をしたとして佐賀労働基準監督署が25日、佐賀市内の建設会社とその代表取締役...

- 解説動画
斎藤 誠(三井住友信託銀行株式会社 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌))
斉藤 航(株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー)
- 【オンライン】電子提供制度下の株主総会振返りとバーチャル株主総会の挑戦 ~インタラクティブなバーチャル株主総会とは~
- 終了
- 視聴時間1時間8分

- まとめ
- 今年秋施行予定、改正景品表示法の概要2024.4.25
- 昨年5月に成立した改正景表法が今年秋に施行される見通しです。確約手続きの導入や罰則規定の拡大...