スマホ戦争進行中
2011/08/31 知財・ライセンス, 特許法, メーカー
Galaxy 販売差し止め
オランダのハーグ地方裁判所が下した命令に衝撃が走った。
韓国Samsung Electronics(以下「SAMSUNG」と表記)が販売するAndroidスマートフォン「Galaxy S」「Galaxy SⅡ」「Ace」の3モデルにつき、米Appleの特許を侵害をしているとして、8月24日、これらのオランダでの販売を差し止める仮命令が発せられた。
「Galaxy Tab 10.1」も、独デュッセンドルフ地裁により、Appleの特許を侵害しているとして、オランダを除く地域での販売を差し止める命令が発せられている。
Apple vs SAMSUNG 特許訴訟合戦
ことの発端は、2011年4月15日に、AppleがSAMSUNGに対し提起した、米カリフォルニア地裁への特許権侵害訴訟である。
これに対しSAMSUNGは、4月22日、ソウル中央地方裁判所、独マンハイム地方裁判所、東京地方裁判所に、特許権侵害を理由としてAppleを提訴している。さらに4月27日、SAMSUNGは、米カリフォルニア地裁にも訴訟提起している。ただし、これは、6月30日に取り下げ、Apple提起の上記訴訟の反訴とすることで審理のスリム化を図っている。
また、5月25日、米連邦裁判所は、SAMSUNGに対し、調査のため「Galaxy SⅡ」などの試作品をAppleに提出するよう命令した。
これに対しSAMSUNGは、米サンノゼ地裁に対し、「次期iPhone」などをAppleに提出させるよう要求したが、これは却下されている。
さらにSAMSUNGは、6月29日、米デラウェア州連邦地裁に、特許侵害を理由としてAppleを提訴している。
対するAppleは、7月1日、米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に、特許侵害を理由として、SAMSUNGの「Galaxy S 4G」などの米国での製造、販売、輸入を禁止する仮差し止めを申請している。
オーストラリアでは、シドニーの連邦裁判所にて、SAMSUNGは、裁判が決着するまで、「Galaxy Tab 10.1」の米国向けバージョンをオーストラリアで販売しないことをAppleと合意している。
参考URL (http://androidken.blog119.fc2.com/blog-entry-634.html)
特許訴訟のメリット
特許権は、技術を扱う会社にとって、なくてはならない財産である。会社は、特許技術を基礎として経営戦略を立てている。革新的な技術は、大きな利益を生み出す。
特許権の侵害は、経営戦略上は得られるはずである利益を低下させることになる。独占できるはずのパイを、侵害者と分け合うことになってしまう。
このため、特許権侵害を見逃さず、訴訟でもって販売を差し止めることは、得られるはずの利益を確保するという意味で、非常に重要である。
特許訴訟のリスク
対して、今回のAppleとSAMSUNGの訴訟のように、すでに大きな市場を分け合っている状態で訴訟合戦をすると、互いに経営戦略上、重要な製品での特許訴訟合戦となるため、一歩も引けない状況になる。
この場合、訴訟が長期化するリスクがあるし、多額の弁護士費用などの訴訟コストがかかることになる。 さらに、今回のGalaxy のように、販売差し止め命令が出されると、多額の損害を被ることとなる。
総評
スマートフォンに代表される現在の精密機器のほとんどは、他社製部品を調達して組み立てられている。
iPhoneの内部部品も、そのほとんどがSAMSUNG製をはじめとした他社製の電子部品である。
このような電子部品は、特許技術のかたまりである。多数の電子部品によりなっているスマートフォンには、ものすごい数の特許が関わっている。
多くの特許技術が複雑に絡み合っている精密機器が、多種多様のかたちで市場に出回っている現在、特許権侵害を見つけ出すこと自体、困難である。
おそらく、今回のような特許訴訟では、販売戦略上の対抗製品を狙い撃ちにして、あら捜しをすることによって特許侵害を探しているのではないだろうか。
会社にとって経営戦略上重要な技術を守るために特許訴訟をする場合はともかく、競合する他社を市場から排除するために特許訴訟を用いることは、特許権保護の本来の趣旨に反する。
このような特許訴訟合戦に失敗して大きな損害を被ることは、会社にとって害でしかない。
企業の法務としては、特許訴訟のリスクを、経営者にしっかりと伝える責務があるのではなかろうか。
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